見出し画像

みそきんとついに遭遇しなかった

 仕事終わりにセブンイレブンで蒙古タンメン中本を買う人、います?他のカップ麺よりちょっとお高いけど、辛ウマい味噌と具のリッチさが週末のご褒美にはちょうどいいんですよね。

 そんなわけで先週もセブンに寄ったのですが、カップ麺コーナーを眺めてふと、「そう言えば『みそきん』についぞお目にかからなかったな」と。

 みそきんと言えば説明するまでも無いですが、あの日本を代表するユーチューバーのヒカキンが作ったカップ麺です。たしか蒙古タンメンと同じくセブン限定で300円というまあ勇気のいる額が印象的でした。

 それを思い出した途端、自分でも不思議なことに妙な不安さが感じられたのです。いえ、不安と言うより何かもう少し漠然として分化しきっていない感情で、懐かしい感じがする。

 発売開始後セブンへ毎週のように通ったにもかかわらず、みそきんが見当たらなかったことを思い出します。さぞ多くの人の興味をそそったことではあるでしょうし、もちろん私も人の子、流行りに乗っかり食べてみたかった。

 ですが、なにせ商品が無い。かと言ってメルカリで倍以上の価格で売られているものを買うのもばからしい。

 そうなれば食べなれた蒙古タンメンを楽しむだけです。ひと月も経つとすっかり忘れてしまうのでした。それが今になって思い出されるとは。

 この浮足立つような感じ、いつか体験したことがある。すると頭に浮かぶのは、初めての首都高から見えた住宅街でした。

 高速道路の防音壁、その合間を縫って現れるほとんど無限に建つような家々。その全てには生活があり、人がおり、その人の持ち物が全て備わっている。しかしそれらが本当にそこにあるのか、家々を一件一件巡って確認するようなことはできない。まるで自分の背後の世界が、振り向いてそこにあるべきものがちゃんとあることを確認するまでは存在するか分からないように。
 そんな考えに、まだ子供だった私はどこか切なくて落ち着かない気持ちにさせられたのでした。

 子どもの頃何度も感じたあの感覚を、まさかみそきんが思い出させるとは。買い物を終えた後もまだ子供の自分がどこかにいるようで、その子と共に私は家路につくのでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?