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【ネタバレ注意】叶さん主演3D舞台「カタシロReflect」感想【カナシロ】

 公演からずいぶん経ってしまったのですが、レオシロとミトシロを見て再度カナシロを見たということもあり、まとまった感想を書いてみることにします。

※注意※
 この記事は新クトゥルフ神話TRPG「カタシロ」を元にした3D舞台「カタシロReflect」のネタバレを含みます。
 カタシロはネタバレ厳禁ということですので、未視聴の方は読まないことをお勧めします。
 また、今回はカナシロの感想ですが、少しレオシロとミトシロにも触れておりますので、できれば3本見た方のみお読みください。

 あと私はゴリッゴリの叶くんのオタクなので、推しを褒めたたえる感想です。そちらのみご留意ください。

 まだ見てない人は見てから読もう!  

 以下スクロールでどうぞ。










 さて、感想ですが。
 まず私はTRPGというものをやったことはなく、見たこともほとんどありませんでした。
 ほとんど、というのは前に叶くんがやっていたTRPGをちょこっと見たことはあったからです。ただそれも最後までは予定があり見られなかったんですよね。アーカイブで続きを視聴することもありませんでした。(だって毎日新しいアーカイブが生まれるから……)
 そんなTRPGにまったく触れたことがない人間ですが、舞台というかお芝居は大好きなので、よし今回は3Dアドリブ舞台として見ればスムーズにいけるやろ!と思い見たのですが。

 めっっっっっっっちゃ良かった…………

 マジ泣きしました。ガチで泣いた。
 アドリブ舞台というのを途中から忘れるくらいの素晴らしい完成度でした。お芝居としての出来が良すぎる。見終わった後も余韻が抜けずしばらく感想を漁ってはアーカイブを回して印象的な場面を繰り返し見て過ごす日々が続きました。
 もちろんすこやさんのメンシに入り余韻冷めやらぬままアフタートークも聞きました。
 本当に最高の舞台をありがとーッ三人とも!!!最高だったよーッ!!!チケット代スパチャ!!!!

 特に何書くとか決めてないんで、以下雑多に感想を述べていきます。

 まず何が良かったかというと、アユム役のンゴちゃんです。
 ンゴちゃん、演技うますぎる!!マジでうまい!!
 姿が見えないので完全に声だけの演技だったのにも関わらず、一発で幼女だとわかるあどけない喋り方とお声……
 この脚本、アユムちゃんがかわいければかわいいほど主演に情が生まれ、「体を渡すか渡さないか」という選択を左右するのだと思うのですが(委員長もそう言ってましたね)、情が生まれるのは何も主演だけではないんですよね。
 視聴者も、アユムちゃんには何かあるぞと思いつつ、純粋にその純真無垢さに打たれ、こんな良い子がこんな姿でいていいのか!?否!!となるわけです。
 アユムちゃんがかわいければかわいいほど、良い子であればあるほど、主人公に感情移入して一緒に苦しめる。

 この舞台のキャッチコピー(でいいのかな?)は「お話を、しようじゃないか」ですが、お話をするのは主人公と医者で、主人公の記憶を取り戻すためのものです。
 けれどもう一つ大事なお話があり、それは主人公とアユムちゃんの対話でもあるのだな、と思いました。
 元がTRPGということもあり、探索と対話により謎を解き明かしていくという流れなんでしょうか、アユムちゃんとの対話では医者との会話では得られない情報をとっていくことになります。
 そして前述したとおり、アユムちゃんへの情を抱かせて後の選択を苦しいものにするという意図もあるのだと思います。

 ミトシロで委員長も指摘していましたが、アユムちゃんと主人公が対話をすることはおそらく仕組まれており、情を抱かせ断りにくくすることを医者は目論んでいたのでしょう。
(だからなのか、医者はアユムと話したと告白する主人公に対し、「ありがとう話してくれて」と言います。純粋に退屈している娘と話してくれてありがとう、という意図もあるのかもしれませんが)
 医者は無理矢理人を襲って、勝手に適性率を図り、そして勝手に機械の身体に移し替えるということまでやっておきながら、最後は主人公に選択を委ねます。
 医者、ずりぃ~……と思うんですが、オリバー医師は「それでも医者だ」と捨てきれない医者としての誇りを覗かせていました。これは健屋医師も同じでしょう。

 健屋医師について、色々感想を見ていたところ、どうやらカタシロの原作者であるディズムさんの医者に演技を寄せていたとのこと。
 個人的にはオリバー医師よりも健屋医師のほうがミステリアスで掴みどころがなく、淡々としていて不気味ですごく好きな役作りでした。
 叶くんが爆速で真相に辿り着いていたせいもあるのか、彼女からの情報開示が少なかったなとオリバー医師を見て思うなどしました。だから余計にミステリアスに見えたんだろうか。個人的に叶くんとの温度感が合っていたので、すこやさんで見れて良かったかも。
 あと、「母親」であることと「父親」であることは、だいぶ印象が違ってくるなあと思いました。うーんジェンダーバイアス。
 オリバー医師の場合は妻に言及がありましたが、健屋医師は夫に言及がなかった(アユムも父親の話はしない)のが面白いところ。なんとなくシングルマザーの印象を受ける。どういう役作りなのかちょっと聞いてみたい気もします。
 オリバー教授の場合は最愛の妻を失い、もう一人の最愛である娘だけは文字通りどんな手段を使ってでも助けたい、という追い詰められた必死感がありましたが、健屋医師の場合彼女には最初から娘しかいなかった感があるんですよね。それが個人的に好き。

 彼女の演技で特に印象的なのは、叶くんがアユムちゃんの部屋に入る直前、二人の会話中に顔を思いっきり背けていたこと。あれすっごい舞台的だと思うんですわ……
 3D体だとどうしても生身よりも表情から得られる情報量は少なくなるんですが、もし生身の舞台であったら「表情を見せない」という演技がめちゃくちゃ効いてくる場面だと思いました。
 その「表情を見せない」こと自体に意味、意図があるというか。すごい好きだな~。アユムと話す時のトーンと、医者として患者に接しているトーンの違いも良い。

 演技で言えば、叶くんは本人役ということもあり芝居っけはほかの二人より求められないところではあったと思うのですが、もしかして叶くんって演技上手い……!?!?と思うところが結構ありました。贔屓目かも。いいだろ贔屓なんだから!
 3日目朝のパソコンを見た問答のところなんか顕著で、コメント欄でもリアルタイムで指摘がありましたが、二人とも一切目を合わせないで喋るんですよね。あのものすごいひりつき、さ、最高~~~!!!!となりました。お互い腹の探り合い。
 3日目は叶くんも完全に「自分はアユムちゃんのために犠牲になる」とわかっているため、バチバチがすごくてすごく見ごたえがありました。
 臓器くじのくだり、「僕だったら大当たりは殺さないですけどね。花丸ですから」なんか、完全に気付いている人の物言いですよ。この言葉、2日目のアユムちゃんとの会話がもとになっているんですよね。自分はアユムちゃんにとって大当たり、だから殺すな、という意味。言ってること命乞いではあるんですがこんなかっこいい命乞いある?
 叶くんも健屋さんもンゴちゃんも、セリフを回収するのが上手すぎるんですよね。だから舞台としてものすごい見応えがあるしカタルシスもすごい。

 演技の話に戻りますが、何より、叶くんはアユムちゃんへの接し方がほんっとうに、「それ」なんですよね。
 ほんっとうに、幼い子と話すお兄さんなんですよ。言葉も平易にするし、柔らかく応対するし、だからこそアユムちゃんが幼子であることが強調されて、観客としてもアユムちゃんが「守るべきいたいけな子供」としてインプットされていく。平たく言うと、めちゃくちゃかわいく思えてくる。
 2日目の会話ではテセウスの船の話を出して、自分が他人から体を受け取ることのシミュレーションを行わせはするものの、言葉は優しいままです。(鉄棒のくだりで「鉄棒できないのはやだなぁ~」って同調してあげるの良すぎるだろ)
 2日目の時点で叶くんはすっかり気付いているので移植の話を振りますが、この先アユムちゃんと話すタイミングがあるかどうかわからなかったと思うので、少しでも多く話しておきたかったのかなあと思うんですよね。この時すでに本人へ意思の確認をしようとしている。カタシロRTAをしようとするな。好き。

 アユムちゃんを9歳の女の子として見て接することを徹底していたからこそ(それこそがお芝居というものですが)、叶くんが最後にアユムちゃんとの対話を望んだ時、コメント欄には「本人に直接その話をするのか」「残酷ではないか」というリアクションに溢れたのだと思います。
 あの瞬間、そこには周央サンゴという人間はおらず、中臣アユムという人間しかいなかった。
 芝居による掛け合いが、舞台上にいる人間の実在性を高めていくのです。それもアドリブのやり取りで。

 カタシロという物語には二つの側面があると、舞台を鑑賞していて思いました。
 一つは、主人公の思考をつまびらかにして、主人公の選択によるシナリオの変化を楽しむ側面。
 もう一つは、主人公が選択したあとの、親子の行く末。

 面白かったのは、叶くんは早々に「体を受け渡す」という選択を終え、最後にそのボールをアユムちゃん自身に渡したことでした。
 通常のカタシロではアユムちゃんを起こすパターンは非常に少ないと有識者フォロワーに聞いたのですが、初見の私も「起こして直接聞くんか!?」と度肝を抜かれた選択でした。でもあれによって、「親子の行く末」という物語が一気に濃くなり、舞台の物語にぐんと奥行きが出たように感じました。

 少し脇道に逸れますが、叶くんの「体が二つになっちゃった」という説明が始まった瞬間に「いや説明上手すぎんか???????」と思ったんですけどいやほんと説明上手すぎんか???????
 突飛だけど、アユムちゃんが気に病まないように嘘を一つ織り交ぜたんですよ彼は。なんでとっさにそんなことできる?
 すごいのはほとんど事実ってことなんですよ。体が二つになったのは本当。もう一つの体に心が入っていないことも本当。もらってほしいのも本心。「困んないらしい」のも、本当。
 「困んないらしい」で泣きました。あの間、すごい。芝居の才能があるよ叶くん。天は二物も三物も四物も与えまくる……あれ素でやってんならすごい。誤魔化したとわかるけどギリギリ体裁を守った間……本当にすごい……思い出して泣いています今私は……
 困んないんだよね。メンテナンスはしてくれるって言うし、生身だって何か不慮の事故でダメになるかもしれないし。
 「誰も困ったりしないよ」の声色を思い出してまた泣いています。優しいんだ……本当に優しい……

 そう、途中からアユムちゃんが「ママは?」と母親に意思を尋ねたことで、一気に「親子の物語」になりました。
 その瞬間から叶くんはフレームアウトし、二人だけの時間になります。
 個人的に、私は主演はずっと主人公でいる必要はないと思っていて、その瞬間があればあるほど物語には奥行きが出ると信じている人なのですが、叶くんが二人に背中を向けて意識して「二人きり」にしてあげた時、嬉しいのと切ないので更に涙が出ました。

 叶くんが優しい嘘をつきつつも真実を話して、アユムちゃんがどう感じるか、そして選ぶかにゆだねるというシチュエーションを作り出したことで、図らずも母親である医者も自分の純粋な願いを口に出来たという神シーンなんですよねあそこ。
 医者は色んな人を襲って勝手に脳みそ取り出して機械に移してダメだったら放流してを繰り返していたもうとんでもない大犯罪者なわけで、本人も正しくないことはきっとわかっていたし良心の呵責もあっただろうし、それでもやめられなかったのは「アユムに自分の足で立って生きてほしい」と思うから。
 お母さん、今までアユムちゃんに「きっと治るよ」とか「絶対治してあげるよ」とは言っていただろうけど、「治ってほしい」「自分の足で立って生きてほしい」っていう、自分のエゴを見せるような言葉は言ってこなかったんじゃないかな。
 あの場できっと初めて、自分のエゴ、願いとして、「治ってほしい」を口にできたのは、彼女にとっても良いことだったんじゃないかなって思います。
 で、その場を作り出したのは他ならぬ叶くんで、だからこそ「話してくれてありがとう」と言ったんじゃないかなと。最初はアユムちゃんを起こすことを渋っていたのに、最終的には「話してくれてありがとう」という言葉が自然に出てきたのは、叶くんが優しい嘘をついてアユムちゃんを極力傷つけないよう、「お母さん」に失望したり絶望したりしないようにしてくれたからで、だからこその「ありがとう」だったんじゃないかなと。救われてたよなあ……

 「お話を、しようじゃないか」というキャッチコピーで、ある種高圧的に一方的に話を持ち掛けていた医者から「話してくれてありがとう」という言葉が出てきたの、マジで物語として美しすぎるよ。本当に素晴らしい。

 叶くんもアユムちゃんに治ってほしい。
 お母さんもアユムちゃんに治ってほしい。
 アユムちゃんは、誰も困らないなら体を受け取りたい。たとえそれが本来の自分の体じゃなくても。
 三人の想いが一致したら、ようやく止まった時間は動き出す。

 アユムちゃんが決断する直前まで、私はめちゃくちゃ心の中で応援していました。
 アユムちゃんがんばれ、決めてくれ、大丈夫絶対幸せになれるよ!ハッピーエンドはそこまで来てるよ!お兄さんもお母さんもいるよ!大丈夫だよ!!と前のめりで見ていました。もう全力でアユムちゃんの幸せを願っていました。

 なんか今思うとすごいことだなーって。没入にもほどがありますよ。余韻がすさまじかったのは没入がすさまじかったからで、そこには間違いなく生きたアユムちゃんと、お母さんと、二人に出会った叶くんがいたわけです。

 主演である叶くんの決断よりも、アユムちゃんの決断のほうを見守る気持ちがどう考えてもでかかったです。

 そして最後。
「僕は本当に雷に打たれたんですか?」と思い出したように聞く叶くん。
「嘘だよ。私が襲った」と答える医者。
 ここだけでもうわあこれで全部の謎が明らかになった……と震えていたのに、「なんで僕を襲ったんですか?無差別?」という叶くんに、医者はこう答える。

「くじを引いているんだ。君は、大当たりだった」……

 いや……
 すご……

 す、すごすぎる本当にすごい、すごい~~~~あ~~~~
 ちょっと今思い出しても本当にすごい。アユムちゃんと叶くんの会話で偶然出た「当たり」という単語、そして臓器くじの「当たり」、それを昇華させた最後の「当たり」……アドリブでよくぞ、とも思うし、アドリブであるからこそ、とも思う。

 「当たり」というワードが序盤から出て最後までずっとポジティブもネガティブな意味も孕みつつ物語の芯として作用し続けているの、構造として美しすぎる。
 そして主題歌である「for 0.5」の歌詞ですよ。

あなたが見たはずれの赤は きっと誰かの青緑

カタシロReflect主題歌「for 0.5」より

 ブラボーーーーーーーーーーーーッ!!!!
 スタンディングオベーション!!!!ブラボーーーーーーー!!!!

 これ脚本ないってマジなのですか?マジですごい。冗談抜きで奇跡。
 あとはずれの赤って、花丸の赤でもあり……ね……

 そんで「死んでないしな」と答える叶くん、強……と思うんですが、でも医者の「譲ってくれないだろうか」の言葉に、じっと自分の体を見つめてから、ぱっと視線を医者に向けて「はい」と返事をするの、自分の体に別れを告げたみたいに見えてマジで!演技が!上手い!!
 間がめちゃくちゃ上手くないか?叶くん、ちょっと真剣にお芝居学んでみないか?お芝居大好きな私はカナシロを見て更に更に叶くんのことがだいしゅきになってしまったのでした。感涙大ハッピーエンド。

 最後の方かなり正気を失った感想になり誠に申し訳ございません。
 正直語りたいところはこまごまといっぱいあるんですが(3つのテーマに対する回答とか)、めちゃくちゃ長くなりそうなので割愛しておきます。

 最後に私が好きな叶くんのセリフを書き出しておきますかね。いっぱいあるんですが……

「親の幸せと子の幸せは違いますからね」
「お兄さんは……困んないらしい!」
「誰も困ったりしないよ」
「メンテナンスは、ちゃんとしてくださいよ?」

 好きすぎる(噛み締め)

 そういえば最後の「優しさは人を変えない」、ブランドコラボの「大きいって最高でしょ?」と同じノリを感じたんですけど、叶くんってキャッチコピー考えるのも上手いよね。とっさに出てくんのすごいよ。天才もしれない。褒めが止まらん、だって推しだから。

 優しさは人を変えない、いろんな受け取り方ができると思いますが、私は叶くんの優しさが「アユムちゃんにとっての大好きなママ」の像を変えなかったことが当てはまるかなあと思いました。
 あそこでママに体を移し替えられて~って説明することもできたのにそうしなかったのは、たぶんアユムちゃんがママを大好きだから、その気持ちを傷つけたり勝手に失望させるようなことを言ったりしたくなかったのかなと。
 叶くんは医者を裁ける立場にいたとは思うんですが、医者を裁くにはアユムちゃんを傷つけることになりかねないからな。それは違うと思ったんでしょうか。

 話したいことが次から次へと出てくる……まずい……終わらない……
 総じて優しさと思いやりに溢れた舞台だった……という言葉で〆たいと思います。まごうことなきハッピーエンド。

 こんな素晴らしい舞台を見せてくれた健屋さん、ンゴちゃん、叶くん、本当にありがとうございました!!


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