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想像も出来ない様な異形の姿の敵が、私にもギリギリ理解できる主張を述べ、主人公達は余りに実生活に立脚した立ち居振る舞いで相対する。それらが「時を止める」という、SFの王道的物語の本作において、在り来たりにならずに陳腐にならずに、私を強く魅了した要因だった。
 登場人物達は、大きくは敵側味方側に分けられるのだが、それぞれが微妙に主張の個人差があり、敵側でも味方側でも纏まりを欠く。それが物語をややこしくし面白く展開させている。主人公達は家族であるが故の根深く切れることの無い関係性が事態を膠着させてしまう。敵側も宗教という理想性の前に、解釈が各個人で異なり、関わりが断絶してしまう。この辺りが非常にうまい対比の様に感じた。
 そして、読み終わった時にはそんな群像模様が印象が残るが、読んでいる時は単純にその見易い絵柄と迫力あるバトルシーンでページをめくる指が止まらず、一気に読んでしまった。
 圧巻は、ラスボスである佐河が姿を変化し最弱の形になるという展開。そして最弱であるがゆえに手出しが出来なくなってしまう主人公達。物語のクライマックスにこの様な展開は初めてで、初読時の衝撃は凄かった。そして、そこからエピローグの様な終盤を向かえ、この漫画世界から浮上するかの様に読了へ。