見出し画像

【猟師さん与太話?➁】

クマとの遭遇頻度


クマにまつわるお話をもう一つしよう。

“北海道にはヒグマという国内最大級の哺乳類がいて、山菜取りや釣りの為に山や川に入る際は凄く警戒せねばならない。熊鈴や熊スプレーを持って行かないと危険である。”
これは一般的な考え方だと思うし、僕も全くもって賛成だ。
だが、山や川で遊んでいる時に実際クマに会ったことがあるかというと、一度もない。
明らかに一般人が踏み込まない奥地まで駆頻度で行くが、それでも会えない。
釣り人やハンターや山登りを楽しむ方々の中でも、森でヒグマと遭遇したという話はなかなかに珍しい。

これはどういうことかというと、そもそも熊は個体数が少ないというのもあるが、実際は“熊は意外と近くにいるが、向こうの方が先に気付いて逃げているか、隠れている。”が正解なんじゃないかと思っている。
事実、熟練のハンターは「熊はよくいる。お前が気付かないだけで、木や草の影からきっと見ているよ。」と言う。
僕にそう教えてハンターBさんは実際に山でヒグマに遭遇したことがあるそうだ。その時の状況が面白かった。

熟練猟師Bさん

ある日、Bさんは谷で鹿を撃った。
鹿は数十メートル走ったのち藪の中で倒れたが、回収に使うロープを家に忘れてきたことに気付いたので「もう鹿も動くまい」と、急ぎ家に取りに戻り、ロープを担いですぐにまた鹿回収のため藪に向かった。


瞳孔が開いているのを確認しない限り、倒れている鹿も十分危険。


実はこのような場合でも鹿は生きており、再度走り出す事が稀にある。そこでBさんはまず大丈夫だろうとは思いつつ、ライフルと弾一発のみを持って藪に入ったそうだ。

鹿は案の定藪の中で死に倒れており、Bさんはいつも通り鹿にロープをかけ、車まで引っ張ろうとした。

、、、とその時、すぐ近くで不思議な音がする。

音の正体は?

Bさんは長年のライフルの発砲音で耳が少し遠くなっており、なかなか気付かなかったのだが、その音が刈り取り機やチェーンソーのガソリンエンジンの始動音だとすぐに気付いた。紐を引いてブロロロロ~ン!!!と始動させるタイプのエンジンだ。
何度も何度も紐を引いているようだが、なかなかエンジンがかからない。
「かかりの悪いエンジンだな。さてはエンジンオイルをしっかりいれてないな?」と思ったそうだ。

だがBさんはすぐに気付く。
その藪は刈り取り機やチェーンソーを使うような場所ではない。なにせ人の手が入っていない藪の中だ。

そこでよくよく耳を澄ませると、どうやら熊が近くで怒り唸っている音ではないか!!!
なんと、Bさんがロープを取りに家に向かっている間に、近くのクマが鹿の死体に気付き、それを我が物にせんと近くにいたらしいのだ。
そこに再び人間が現れたものだから、クマにしてみれば「おい!俺のご飯だぞ!」ということで、エンジン音のような唸り声をを轟轟とあげていたのだ。

Bさんは震えあがった。何しろ弾は一発しかない。クマは藪の中で唸り声だけあげている。
近距離でのライフル発砲は難しい上に、クマの姿が見えない限り、弾を込める事すら出来ないのだ。

想像するだに恐ろしい出来事だが、「いやー、あの時の回収は恐ろしかった。車まで鹿を運ぶ道のりが、実際の距離以上にえらい長く感じたよ。」と笑いながらおっしゃるBさんもなかなかに恐ろしい肝の持ち主だと思った。

恐怖と闘いながらでも、しっかり最後まで鹿は持ち帰ったんですね、、、

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?