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理想と現実。

山のものの良さを伝えていきたい人間として、食べもののおいしさを伝えることのほかに、山で採れたもので何かを作るという運動も同時に進めている。これまでものづくりとは無縁の人生を送ってきたので、参考書を片手に手探りで、自分がこれいいねと思うものを作っているのだけど、「これいいね」になかなかならない。
まさに今、熊の革でブローチ的なものを制作している。正方形に切って、断面をやすりで削って、裏表を合わせる。するとこんな感じでチョコレートのようになる。

チョコレート。

熊の革の質感はなめらかでずっと触っていたくなるような気持ちよさがある。正直ここにブローチピンをつけて完成でもいいのでは?と思ったりもする。でも、ちょっと芸がなさすぎる。もうちょっとかわいくしたい。ということで、自分で作った糸(ミヤマイラクサという植物の繊維で紡いだ)で、周りをかがり縫いにしてみたり、平縫いにしてみたりした。雑にやってみたり丁寧にやってみたりしたけれど、出来がいまいちだ。そして自分で作った糸なので、やっぱり太さがバラバラだったり、ほつれが目立ったりもする。個人的に使うのであれば問題ないけれど、誰かがお金を出して買いたいと思うのか?と考えると、少し完成度が低すぎるように思う。頭で思い描いていたかわいい熊の革の小物にはならず、なんだか革の良さも糸の良さも打ち消しあっているようなものを生み出してしまった。もうちょい考えてマルシェまでにはいい感じにしたい。

イメージと違うんだよなあ。

熊の革を正方形に切る、というのも僕にとっては成長だった。最初は革を月の形に切って、アイコの糸でツキノワグマの胸の白い部分を刺繍しよう、みたいなことを考えていた。でもすぐに挫折した。まずカーブを切るのってめっちゃ難しい。自分が美しいと思う形に革が切れない。そして刺繍についても、かわいくて美しい刺繍なんてものが僕にできるわけもなかった。ギザギザした不恰好な刺繍が生まれただけ。結果、断念。自分の実力と自分のアイデアがまったく噛み合っていない。
今の自分にできる技術で、かわいい且つ熊の革のよさを伝えられる形、そしてそれなりにたくさん作っていきたかったので、あまり手間のかからない形。などといろいろ試してみた結果、今の正方形に落ち着いた。

自分の理想通り作れるまで諦めないことが大事だ、なんてことを思ったりもする。でも、できないことはできないと諦めることも大事だ。そして最近よく思うのは理想というのは、買う側にとってかなり押し付けに近いものでもあるということ。熊の革の質感がめちゃくちゃいいのに、僕が「刺繍は必ず入れたい」と思って入れてしまうことで、糸が邪魔して革の質感を感じれなくなってしまうことや、山菜は生で食べて欲しいと思っているけれど、処理がめんどうだと思う人がすごく多いので、実は加工品にしたほうが断然買いやすいとか。他にも書き出せばキリがないくらい、自分のエゴを剥き出しにしたような商品作りをしていたし、今もしていると思う。理想なしに何かを決めることは危ういけれど、誰の意見も聞かず唯我独尊で突っ走ることもまた危うい。人のものはある程度冷静に見ることができるのに、自分のものを客観的に見ることはほんとうに難しい。いつも自分の頭はまったく冷静じゃないことを意識しながら、ちょうどいいポイントを見つけられるようにしたいな。

・・・

と、書いていたら、こうしたらいいかも!というアイデアが思い浮かんだので早速試してみます。思考即試行。
ということで、今日も読んでいただいた方、ありがとうございました。書くことによって、やっと自分のことを少し客観視できる。

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