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皮膚とマウスの話。

毎年春のはじまりと秋の終わりに調子が悪くなる。精神的には何の問題もないのだけど、肌の調子がすこぶる悪い。目の周りと首がかゆくなる。かいたら余計悪くなるのでかかないほうがいいとわかっているのだけど、やっぱりかいてしまう。いまは少し赤く腫れてしまい、そして痛い。微妙な痛さが首の周りを付きまとう。それだけで少し気分が落ち込む。そうすると、なんだか身体もだるいなあなんて思ってくる。皮膚になにかしらのトラブルがおきるとわかりやすく悪循環がはじまる。

と、言いながらも秋田県に来てから皮膚の具合はめちゃくちゃよくなった。何かしら痒くなったりはするものの、秋田に来てから一度も皮膚科に行っていない。行くほどではないレベルで勝手に治るようになった。すごく嬉しい。
大阪にいたころは月1回は必ず皮膚科に行って大量の塗り薬をもらう。炎症が起きている場所にべたべたと薬を塗りつけて、治ったと思いきやまた再発してを繰り返す。あまりに治らないので、アレルギー検査もした。いくつかのアレルギーが見つかったのだけど、ハウスダストにアレルギー反応を起こすことがわかったときは絶望した記憶がある。ハウスダストなんてどうやったら避けられるんだろうか。お医者さんにはハウスダストを避けるためにずっと部屋をきれいに保ってください、みたいなことを言われたけど、当時の僕にはそんな技術はなかった。今もない。ということで大阪にいたころはいつもどこかが赤く腫れていた。それはそれは辛い毎日だった。

大学の研究室にいたころにマウスを使った脳みその研究をさせていただいていた。マウスを妊娠させて、妊娠したマウスに「ある物質」を注入する。そのマウスがこどもを産んだ瞬間、雄のこどもだけをとっ捕まえて(メスは安楽死させる)、そのこどもの脳を取り出す。妊娠したマウスに注射した「ある物質」によって、こどもの脳がどのように形作られていくのかを研究する。ざっくりざっくり言うとそういう研究だった。まあこのときのこともいずれ書きたいけれど一旦置いておく。僕が書きたいのは皮膚の話。
マウスはずっと飼育カゴに入れられている。生まれてからずっとそのカゴの中にいるマウスが何を思って何で生きているのか、僕にはわからない。でも餌や水をおいしそうに食べて飲み、それなりに元気そうに動き回っているやつらをみていると、そこまでストレスはなさそうに見えた。しかし、そんなマウスたちにもストレスのかかる状況がある。掃除されておらず不清潔な空間や籠の中に大量のマウスが入れられている状態である。動物愛護の観点からそういった状況にならないように先生方から必ず指導を受けるのだが、僕は一度だけミスをしてしまったことがある。マウスを不清潔な状態のまま放置してしまっていたのだ。ある時に「あ!」と思い出して、そのマウスの様子を見に行った。すると、マウスはまだ生きていたのだけど、毛がところどころ禿げていて、見るからにストレスを感じていた。もうその姿があまりにも見ていられなくて、ほんとうに申し訳なく思ったし、自分のことがほんとうに嫌になった。すぐにカゴを取り替えて清潔な空間にしてあげたけれど、禿げた毛は元には戻らなかった。

ストレスってほんとうにあるんだ、ってその時にはじめて実感した。ほんとうにきつい環境にいる生きものには、必ず何かしらの異変が起きるんだ、と。マウスにはほんとうに申し訳ないことをした。そして、嫌な環境には絶対にいてはならないんだと、同じ生きものとして強く思った。辛くてきつい環境に閉じ込めようとするやつらや、そういう状況を生み出そうとする圧力には強くNoと言える力を持ちたい。

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