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猟記(四)

今期初、師匠と山に登ってきた。すごくたのしくて、学びも多かった。ひとりで山に行く時間を何倍も増やして修行のような一年を過ごしたからこそ、師匠のすごさがわかる一日だった。

ほぼ日の記事に、濱口秀司さんと糸井さんが対談している記事(アイデアのカケラたち。という記事)があって、その記事を読んでから、僕は「ひとりの時間」というものがどれくらい重要なのかをものすごく意識するようになった。この記事の中で、チームとして最も効果の高い成果を出すのは、どのようにコラボレーションしたときなのか?について濱口さんが実験したことを喋っている回があって、それがものすっごくおもしろいのだ。
結果だけかなりかいつまんで書いちゃうとチームとして最も効果の高い成果を出すコラボレーションの仕方というのは、「ひとりで考え切る時間をもった人たち」が「短い時間」でアイデアをシェアし、もう一度「ひとりで考え切る時間」をつくり、最後に共同作業を行ったチームである、というようなことが分かったのだ言う。
まずその課題をひとりで考え切る、答えを出すということをする。そうすることによって、その人それぞれに一応筋の通った論理ができる。しかし、ひとりで考えた意見には必ずバイアスができる。知らず知らずのうちに「こうでなきゃいけない」や「特に何も考えずにやってしまっていること」なんかが増えていく。「短い時間」でのアイデアのシェアはそういったバイアスを壊す機会になる。これでもいいんだ、とか、他のアイデアからの刺激によって別の仮説が生まれたりする。バイアスを壊した上でもう一度「ひとりで考える時間」に移ることが新たなアイデアを生む。最後、チームとして一つの回答を出すときにも、その人それぞれにその課題に対する考えが深まっているので、結果として無駄な議論があまり生まれなくなる。このような理由でこういうコラボレーションをしたチームの成果がよくなるのではないか、と濱口さんはおっしゃっていた。
逆に、最も効果が薄かったコラボレーションの仕方が「ひとりで考える時間は短い」が、「アイデアについて話し合う時間を長く設けた」チーム。一番盛り上がっているので、傍目には一番議論が進んでいるように見えるけれど、全員がその課題に対して「ひとりで考えきれていない」のでみんなが答えのわからぬまま発言をしあう。なにかを喋らないといけないと思っているのだ。なので、たとえいいアイデアが話し合いのなかで出たとしても、その他の意見で埋もれてしまう。結果としてあまりいい評価をもらえないものが生まれる。

学生の頃に読んだこの記事がものすごくおもしろくって、なんだかずっと頭の片隅にある。山に入るのだって全く同じだと思うのだ。じぶんひとりで山に入る時間が、山と関わる時間のなかで最も多くないといけない。その時間のときに考えたことや経験したこと、その上で考えた仮説やその検証が何かアイデアを出す時の根本になってくる。その上で、相対的に「短い時間」の他人からの刺激が、自分のバイアスを壊して、いい結果につながることってめちゃくちゃある。そういう意味で、昨日師匠と山に入った時、獲物も探していたけれど、この人が何を見てどう動くのかをずっと見ていた。そしてやっぱり僕の中にもあった固定概念や、特に考えもせず行っていた見直さないといけない行動なんかが浮き彫りになった。やっぱり自分ひとりで考える時間が大事なのだ。それがあるからこそ、考えることができるし、新たな発見もある。師匠からの脱却を今期のテーマにしていたけれど、それを叶えるためにも、ひとりの時間の合間にちょこちょこと他人の刺激を入れ込んでいくことによって、自分のやり方をずっと更新し続けることができたらなあ、と思っている。

ということで昨日の様子。

猟場へ行く前にワサビを収穫。
これです。春にも採れるけど、秋にも採れるのね。めっちゃおいしいっす。
わさびの根っこ。これくらいのサイズでもここまでなるのにかなりの時間がかかる。
根っこはあんまり採るべきではないのだけど、いつも数本いただいている。他は草の部分だけもらう。
なにをしにきたのか。猟なんだけど、きのこ見つけたら採るしかない。傘は開いているけれどいい感じのなめこたち。
師匠。
宝石。

正直鉄砲は持たず、一度師匠のカメラマンとして山に入りたいなあと言う願望もある。自分も猟に真剣だったので、あんまり写真が撮れないのが悲しい。目にカメラが欲しいぜ。ということで、今日もありがとでした。

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