レシピの読み方 1

はじめに:「レシピ通り」の呪い

クックパッド、バズレシピ、レシピ1P漫画、限界メシ、高速レシピ動画
現代の人類は「レシピ」と名のつく無尽蔵な情報を目にする機会が増えたと思います。
しかしながら、勝手に目に入ってくる無尽蔵なレシピ情報の中から「意味や理屈のわかるレシピ」を探すことはけっこう難しい。特に初心者や料理に苦手意識のある人間には解読することができないレシピばっかり。

日本語能力とか調理過程の基礎知識とかの問題ではなくて、そもそも「レシピってなに?」という根底が書いてる人間にすら見えてないせいだと私は考えています。
分かりづらいレシピ(=文章)をドンと乗せて「初心者向けなのに! レシピ通りに作ればいいのに! 簡単なのに!」と言われてもそれは受手のせいにはできないんじゃないだろうか。
理解できないものをわからないまま「ハイやって! 簡単でしょ! お前らはレシピの奴隷なんだからなんも考えずに言われた通り手を動かせばいいんだよ!」って言われてもやだよね。

私自身も昨今の分かりづらくて学びのないレシピは嫌いなので、そろそろレシピの認識改めをしていきませんか、という思いでこのnoteシリーズ作成に至りました。具体的なレシピを載せることは多分ないけれど、料理が苦手な人が少しでもレシピ読みを楽しいと思えるようになるといいなと思います。よかったらおつきあいくださいね。


1.レシピは「手順書」だと勘違いしていないか?

まずめんどくさい話をします。
前提条件として、レシピは手順書ではないと考えた方がいいです。
確かに調理手順が書いてあるものなんですが、「材料と手順を書くことによって起こすべき現象を表現したもの」と思ったほうがいい。

多少調理に造形の深い人間であればレシピを見て「この手順はこの食材とこの食材をこういう状態にもっていけばいい」というのが見えてくるのですが、わからない人にはそれが見えないので、例えば「肉を叩いて柔らかくします」という手順でメタメタのバラバラにした肉を良しとします。だって言われた通りやったし。
っていうのを何個か積み重ねたらもはやどこが間違ってるのかわからないものが完成します(それはそれでおいしければいいよ)。

途中途中での目指すもの、中間ゴールの姿をただしく認識して、ただしく通過して最終ゴールまで到達するのが調理の基本的な考えです。逆に言えば中間ゴールさえ間違ってなければ別の手順でも全然いいんです。

・調理過程は「望ましい現象を起こすためのもの」
・材料は「反応を起こすものor起こされるもの」
・料理は「成果物」
・レシピは「この条件でやったらうまくいったよ、のサンプル」

くらいの認識がいいんじゃないかなと。
なんならレシピなんて人の数だけあるもんだから、一例のサンプルだけを示して「レシピ通りに作れ」っていうのは傲慢だと思いますね。料理できない人に一辺倒にこう言っても、数学嫌いな人に「公式をあてはめればいいだけ」って言い続けるのと同じ感じで不毛でしょう。


2.「中間ゴール」を見つけられるようになろう

さっき言った「中間ゴールさえ通過すればOK」というお話なんですが、おそらくこう思った人がいると思います。

「その中間ゴールがわかってれば苦労しないんだが? お前がいってることバズレシピよりずっと難しいが?」

間違いない。だから慌てないでほしい。
さっき言ったのは「考え方として理解してね」って話で、いきなり「中間ゴール見つければいいんだから簡単でしょ」とは言いません。
私がシリーズを通してやっていきたいのは以下の2点です。

・色々な調理の中間地点の定点説明
色々な料理の中間ゴールについて、「どのような現象が起きていればいいのか、なぜその現象が必要か」という説明をちょっと詳しくしていきたいです。
例えば肉じゃがとカレーは中間ゴールが途中まで同じであとから分岐が発生するように、「中間ゴール」ってのは色々な料理で共通して使えるものが多い。
肉を柔らかくしたり下処理したり、野菜の水抜きをしたり、一手間一手間は他の料理と一緒だったりする。これが少しでも理解できれば中間地点とそこに至るまでの調理の正解がわかってくると思います。

・食材及び調味料、調理が引き起こす「現象」の解説
どのような食材、調味料をどう調理したらどのような作用でどういう現象が起きるか、というのがわかれば格段に調理の理屈がわかりやすくなります。
「いやこれ家庭科でやったし」みたいな話から「この料理でしか使わんだろ」みたいな話まで。
ただし、自分自身科学系の知識がさほどあるわけではないので「科学的にこまかく説明してください!」と言われるとちょっとわからないです。ごめんね。

その他、必要と思ったらいろいろな話を織り交ぜて少しでも楽しくちょっとずつ書いていけたらなぁと思います。簡単なことだとは思っていないので、おつきあいください。


3.中間地点を知るオススメの方法

私は私で発信するとして、中間ゴールがメチャクチャわかりやすいのは「料理系YouTuberの1品10分以上の動画」で間違い無いと思います。特に「ヤベェ手間の料理動画が1つ以上ある人」が望ましい。こういう人は調理過程の1つ1つの重要性から理解が深く、そこを説明してくれることが多くて助かります。言葉を選ばず言うと、凝り性オタクは喋りたがるので説明が細かい。

私から2つ例を挙げておきます(敬称略)

・COCOCOROチャンネル
「料理は温度、料理は科学。俺はそう信じている」と謳う大西さんがお手軽料理からアホかと思うほどの現地料理まで作ってくれるチャンネル。
ヤベェ料理筆頭は家庭崩壊ガパオ料理動画で石臼とパイマックル(コブミカンの葉)を要求してくる。
1つ1つの調理行程説明がわかりやすく、なおかつ加熱温度帯やその理由までちゃんと説明してくれるので勉強になります。相方カメラマンのムロサキさんが料理得意系の人じゃないので、料理好きじゃない人の認識もちゃんと考慮してくれて大変良いです。たまに大西さんじゃなくてプチラッキーの隼人さんも出てくるよ。

/谷やん谷崎鷹人
フードファイターでもある谷やんのチャンネル。
調理過程の説明が詳細かつ丁寧で、本格的な調理法の説明までしてくれるので作る量以外はかなり参考になります。
ヤベェ料理筆頭はオムライス(ハンバーグもあるけど)。なにがヤベェかというと、デミグラスソースを5日かけてイチから作り始める。
手順が丁寧かつ手元が見やすいので、視覚的に中間ゴールがわかりやすいです。長い動画が多いのですが、そのぶん見応えがある。

他にも好きな投稿主はいるんだけど、中間地点のわかりやすさとか説明の細かさでいうとこのお二方がいいと思います。

ちなみに動画を見る際は「これを作ろう!」という気持ちではなく「この人はこう作ってるんだなぁ」くらいの軽い気持ちで見ておくだけでも良いと思います。暇つぶしコンテンツ程度で良い。
力を入れて見るより断片的な知識がちょっとでもくっつけばいいかな、くらいのほうが楽なので。

他の方法としては「レシピ本を買う」がかなり強いんですが、レシピ本はもう最近ピンキリなので博打だと思って買った方がいいです。
レシピ本が良い理由は写真があることと、手順が細かく記載されていること。あとたまに調理する上でのコラムが掲載されていること。
手順だけではなく、手順の理由を書いてあるレシピがベストです。ただこれ最近だと絶滅危惧種なので一概には言えない。特に初心者はどれがいいレシピなのか本当にわからないと思うので、パラ見してもなぁと……。

基準としては、1つの料理に見開き1P以上の解説があることかなと思います。(写真だけのページがある時はそこ抜いてね。)
スペースを多く使っているということはそれだけ写真か解説が多いはずなので、見た目でわかりやすいなと思えるものがあれば良いんじゃないかなと。
ただこれはお金がかかるのと博打感が強いので強くオススメはできません。


4.まとめ

今回説明したのは特になんの知識にもならない話で、
「料理はレシピ一辺倒じゃなくて、調理過程の理解が第一歩だよ」というお話です。
とにかくレシピ通りに、という考え方って裏を返すと「調理した人間が調理行程や出来栄えの責任を持たない」という行為に等しいんですよね。
レシピへの理解を深めて「何が悪かったのか」とか「どうしたら良くなるか」とかを考えられるようにならないと一生レシピの奴隷として生きることになります。それは作る側にとっても苦しいんじゃないかな。

本当に料理が嫌だから出来合いで生きて行く!っていうのもそれはそれで実現できるならいいと思います。でも少しでも料理できたら素敵だなと思っているんだったら、無理のない範囲で調理行程についてちょっとだけ考えてみるようにしませんか。というご提案でした。


3.次回予告

次回(というか解説としては初回)考えているのは
・塩味の調味料の作用
・塩味調味料で発生させるべき現象や中間ゴール例
・使い分け例

このへんです。初回なので一番明瞭な調味料について説明したいなと。
気になった人は次回のnoteも見てくださいね。

余談:一応、スペック

偉そうに色々言ってるので、自分のスペックを紹介しておきます。
特にたいしたことのない人間なので、こんなやつの記事参考になんねーよと思うなら全然それはそれで正しい考えだと思います。

名前:ふな
料理と食事が好きなだけの実家住まいアラサー会社員。
母がそこそこ料理上手で当たり前のようにレシピ本が存在する家庭で育ち、日本語が読めるようになる頃にはレシピ本を読みものとして愛読。そのため実践はないがある程度の調理上の知識は身につけていた。
得意料理は豚の角煮。母親はこれを食って角煮を作るのをやめた。

料理をするようになったのは結構最近で、理由は「母が作らない料理も食べたい」の1点に尽きる。
食べたい料理のレシピを複数通り調べ、共通項や自分の趣味にあった調理法を分析して再構築してから作成する。故に料理教室との親和性が最悪。

マジの余談なんですけど、昔のレシピ本って料理のコラムとか調理過程の説明が丁寧で本当に読みものとして面白かった。自分が今そこそこ料理を楽しめているのは幼少期からの知識が根底にあると思ってます。
経験ではなくレシピ分析からはじめる方法でおいしいものを生成できているので、今まで経験がなかった人も料理作るのがしんどい人もちゃんと作れるようになるんじゃないかなと私は考えてます。

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