レシピの読み方 2 塩

はじめに:調味料の効果は味付けだけではない

そもそも私がこのnoteを書こうと考えたきっかけになったのが
「ハンバーグのタネには塩を入れないと上手に作れないぞ」という旨のツイートがバズバズのバズになっていたことである。

私は「そらそうやろ常識やろ」としか思わなかったんだけど、バズりあそばしてる感じを見るとなんかそうじゃないらしく……。
これが自分の中で「これをわかってない人が多いなら料理できない人がそこそこいるのも当然だな」と納得ができた1番の出来事でした。調味料には味つけ以外の効果がそんなにあると思っていない人が多いのだと。
そして、「調理行程の狙いに対して丁寧な説明をしてあるコンテンツが欲しい」と思った次第です。このため稚拙ながら自分が筆をとりました。

今回は塩味の調味料について説明していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

1:塩とは

塩というのはそもそも調味料の中で一番身近でありつつも一番異質な調味料だと考えています。
理由は「無機物だから」です。
端的にこれが調理行程としてどう影響するかというと、「単体で焦げない」というのが大きい。逆の話なんですが、他の調味料は大抵の場合焦げます。むしろ焦げやすいことが多い。
これを利用した調理方法として「化粧塩」というのがあります。
化粧塩というのは焼き魚のヒレ部分などに塩を思いっきりくっつけて焦げやすい部分が焦げないようにする手段です。詳しくは下記URLに写真付きであるので興味があったら見てね。
https://japan-word.com/archives/post-3243.html
このように、塩には塩味をつける以外の効果が結構あります。次項目ではそれらをまとめていきます。

2:塩の作用

塩の主だった作用は以下の通りです。
・味を引き出す
・締め
・脱水
・保存性向上
・肉類の粘り出し
・野菜の色出し
・ぬめりの凝固


1つずつ説明します。

・味を引き出す

塩は他の味を引き出す効果を持っています。
通常の味付けはもちろんのこと、例えばクッキーなどのお菓子にも塩が少しだけ入っていたりすると思います。これは塩の味出し作用を狙ったものです。

そもそも人間は塩味がないと旨味とか酸味をおいしく感じにくくなることが多い。おいしいはずのお肉を塩なしで焼いてもおいしくないと思うのですが、これは肉の持つ旨味を塩によって引き出せていないから。だと思う。
また、甘味を引き出す作用も持っています。味のあまりしない小麦生地なんかの味も引き出してくれます。
あんまり塩味がしないものであっても少々の塩を入れていることが多いのはこのためです。ちょっとでも塩が入っているだけで結構違うのです。

そもそも日本人の食事は塩分量が多いので減塩は大事なのですが、それでもレシピに少々とか入ってたら多少はいれたほうが無難ですね。言うなれば「汎用バフ」「人権カード」。
いれすぎはよくないので、人差し指ひとすくい程度で調整するのが良いと思います

・締め

主に肉や魚に使われる技法。

こちらは「動物性タンパク質に含まれる臭みを水分とともに表面に出す」という効果。方法は生の肉魚の表面に塩を振って放置するだけ。
肉魚の調理でこの行程があったらこの作用を狙っていると思ってください。

肉や魚の下ごしらえとしてはそこそこメジャーな部類だと思います。

インターネッツ=リョウリ=チシキで言うと、最近「スーパーの刺身は塩を振ってしばらく放置して表面の水を拭き取るとウマくなる」っていうのがあるんですがそれもこの作用ですね。
ちなみにこれは「やらなくても別にいいけどマズくなる要因のひとつ」くらいの認識でよいです。やる理由としては臭みとりもありますが、「仕上がりが水っぽくなりづらい」=「味がぼやけにくい」というのがかなりデカい。

これだけでなく食材の臭みを取る方法はけっこう幅広いので、それはそれで別の回に説明します。

・脱水

上の「締め」に似た作用です。読んで字のごとく水分を抜くことができます。塩をモミモミしたあとに絞ってたらだいたいこれ。
代表的な調理手段は「塩もみ」。ピラピラに切ったキュウリとかをポテサラにインするときによく使うやつ。
これは「食材の水分量を減らし、味をぼけにくくする」「食材を混ぜるときに型崩れせず馴染ませる」「腐りづらくする」などの効果が期待できます。ポテサラは後者が強いですね。
そもそもの話、野菜って水分が多すぎてジャマなことが多いんですよ。水分が多いというのはそれだけ味が薄まるってことなので、そのぶん余計な味付けをしないといけなくなっちゃう。それを防ぐための行程です。
例えば酢の物は「塩もみによる水分減少=味の引き締め+防腐」「酸味や旨味をおいしいと感じさせる塩味バフ」の2つがあわさった料理です。
浅漬けも脱水効果の代表。
私はお大根をぴらぴらに切って炒めたいときとかにお大根を塩もみすることによってビシャビシャになるのを防いでます。

・保存性向上

こちらは脱水作用のほか、「高濃度の塩分下で生きていける細菌が少ない」という特徴に基づきます。
ただし、好塩菌という塩分に強い細菌も居るので過信しないように!
塩漬け、漬物、あとは味噌漬け醤油漬けもこれにあたります。
保存性向上の調理ですが、素人が下手に扱うと痛い目を見るので基本的に保存食は作らないのがベターです。なので記述はここまでとします。
まちがってもパンチェッタとか作るなよ。逆にいうとパンチェッタ作れる人間はこんなnote読まなくても大丈夫です。

・肉類の粘り出し

いちばん最初に書いたハンバーグのやつ。
俺バカだからよくわかんねーけどよぉ、タンパク質が変質してネバるらしいぜ。
まぁそんな理屈はわからなくてもいいので、「粘りが出て結着力が増す」ということだけ覚えてくれれば良いです。ミンチ状の動物タンパク質を練る際に塩を入れてたらこの作用を狙っています。
ハンバーグや肉団子、つみれの弾力が出てうまくまとまるのはこのため。
この作用が欠かせないのは「ソーセージ」「かまぼこ等のすり身食品」。これによってプリプリ感が出てちゃんと固まってます。
ちなみに、この作用は「肉魚類はそもそも凝固するという作用を持っている」という前提が大きく関係しています。
ただネバネバするだけではうまくまとまらないので、このネバったやつが上手に結びついた状態に火を通して凝固させることが大事。
たまーに生の状態でこの粘り作用が大事になってくる料理もあります。なめろうはこの部類。ネトネトしておいしい。ちなみになめろうを焼いたやつはさんが焼きっていうんだ。これもおいしいんだ。
先に書いた「ハンバーグは塩がないとまとまらないよ」という話なのですが、アメリカ人Youtuberがハンバーガ作るときにパティに塩を練り混ぜていなかったりとか、昨今はパッカンステーキとかこれを利用しない調理方法もあるので一概に「塩入ってないからダメー! はいバカー!」みたいな話にはなりません。それでよければよい。という考え方が大事。ただ粘りが欲しい場合は入れようねってだけの話。

・野菜の色出し

ほうれん草などの緑のお野菜を茹でるときにお塩を入れるとくすんだ色になりにくい以上。
逆に言うと見た目どうでもよければどうでもいいよ。おひたしとか作るときにやろう。
ただ、塩を入れることでちょっとお味がつくので普通にやっていいと思います。前にも書いた通りちょっとだけでも塩味がついてるっていうのは大切な要素です。
色出し行程で大事なのは、「茹で上がったらすぐ冷水で冷やす」ということです。なんか緑色のクロロフィルって色素が熱に弱いからできるだけ早く冷やせってことみたいですよ。よく知らんけど。

・ぬめりの凝固

サトイモを調理する際に塩もみしておくとネバ感が固まって少なくなるよ。以上。
使い所が多分サトイモくらいしかないのであんまりたくさん説明が必要とは思わないんですが、サトイモを使った煮物やなんかの煮汁がネトネトして気持ち悪い感じにならないようにする作業だと思っていいです。
サトイモを塩でモミモミして洗い流してたらこれを狙ってると思ってください。サトイモに関してはわりと大事なことです。

なんか長くなっちゃったから終わります。

醤油とか味噌とかそのへんをあわせて書く予定だったのですが、あまりに長くなりそうでダルかったので分けます。

次回は上の通り塩の含まれた調味料について解説をしていきたいと思います。
醤油、お味噌あたりを重点的に書こうかな。
何か気になる塩味の調味料とかあったらコメントとか書いてもらえたら参考にします。よろしくお願いします。

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