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15分のアートプロジェクト

5月の連休、強い日差しの2日間、東京都の主催で、パラリンピックを身近に体感する祭典2017NO LIMITS SPECIALが上野公園大噴水広場で開催された(銀座同時開催)。その一角に、知的障害者とアーティストとの交流、相互作用を入口としながら、異なる背景や習慣をもった人々が関わり合い、様々な「個」の出会いを生み出すアートプロジェクト「TURN」のテントが設置された。

狭いテントの密度の濃いアートプロジェクトの場に、往来6万人(TURNのパンフを手渡した数2700枚から類推)の賑やかさと、長居はしないという時間感覚が流入し、お祭りの出店のようなテンションがたつ。

パラリンピック体験をしたい来場者が「2020オリパラに向けての文化プログラム」「アートプロジェクト体験」という歌い文句に誘われテントに入ると、アーティストのチョリさんから次の質問がある。「今日お持ちのバッグの中に、他人からみると特に必要がないけど、何となく入っていて、捨てにくいもの、バッグから出し難いものありませんか?それをムッダとよんでいます!?」そのムッダに3人のアーティスト、チョリさん、大西さん、テンギョウさんと一緒になって辿りつくプロセス、ムッダそのものにまつわるストーリーが、なつかしさ+おかしさ+一緒にいる家族から「何で?」という驚き+切なさetc.が混ざりあい、その新たな感覚を共有して盛り上がる。

例えば、おばーちゃんのバッグからでてきたのはドライバー。小学生の孫は、こんなおばーちゃんは日本に2人しかいない、といって半ばあきれ顔。しかし、一度困ったことがあって、それから持っていること、さらにもう一本出てきたときには、大爆笑。ダンナさんの定期券の片隅にあった10年前の妻の証明写真。それを見たときの奥さんのうれしいような、みんなに見られて困ったような表情。旅行した時のチケット。必要なものを大きなカバンで持ち歩いている男性と、ほとんど何も持ち歩かないスマートな女性の若いカップル。その彼女のバッグからでてきたのは禁煙パイポ。「彼が禁煙したい、といったので密に持っていたけど、まだ使ったことがないんです。」

その時、そこだけに立った感覚を、チョリさんがアルミフォイルをご本人に巻き付けながら表現していくと、何かの「解放」が起こる。その瞬間をテンギョウさんが真剣勝負で写真に切り取る。すぐに往来に向けてスライドショーの一コマに。この間、15分から30分だ。参加者はもう一度来て、スマホに「ここだけの家族写真」を収めていく。

出会い、アーティストと交流し、相手との相互作用が起こる瞬間を探しつづけるプロセス、アートプロジェクトに立ち会えた。





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