上野こども遊園20161121

私の「センス・オブ・ワンダー」に触れる

センス・オブ・ワンダーとは、一定の対象(自然やSF作品等)に触れることで受ける、ある種の不思議な感動、または不思議な心理的感覚を表現する概念であり、それを言い表すための言葉である、とwebloに記されている。

2016年8月末に閉じられ、秋、静かに解体された上野こども遊園地を知っていますか?上野動物園の目の前にあり、動物園の行き帰りに利用する形で、戦後70年近くも親しまれていた。この遊園地を祖父の時代から個人で経営していたNさんと親しくなり、解体をするとき、メリーゴーランドの子馬、ラッパ吹きの兵隊、大型テント、電飾文字、空飛ぶ象さんの乗り物を持ち上げるアームとの接続部で使われていたピンなどをいただいた。それらを活かすアートプロジェクトを組み立てる過程で、3つの「解体の記憶」がつながり、「センス・オブ・ワンダー」と呼べる3つの不思議な感覚が呼び覚まされた。

【昭和初期「同潤会アパート」解体時にみたピカピカの鉄筋の記憶】空飛ぶ象さんを見えないところで支え続けたピンは重さ4㎏~1㎏、長さは27㎝のものもある。ピカピカに光っていて、私はそのピンに魅了された。そして1996年に同潤会アパートを解体したとき、破砕されたコンクリートの中の鉄筋がピカピカだったことを細部の状況も一緒に思い出した。まだ生きている建物を自らの手で絞め殺していくような喪失感、コミュニティを再生できるかという未知、前に進もうとする意志が交差するセンス・オブ・ワンダー。

【上野こども遊園地の解体光景の記憶】空飛ぶ象さんが解体されたのは昨年の11月28日。風が吹くたびに黄金色の大イチョウが揺れてサラサラ、ザザザーと音を立てながら、ふるそそぐように落葉してくる光景。アームから外された6台の象さんの乗り物の上に、作業員の上に、遊園地に、私に。その光景は、映画のワンシーンのように妙にリアルで、空飛ぶ象さんたちが、自然の元に旅立っていく瞬間をみたようなセンス・オブ・ワンダー。(実際には、クレーンによって空中を飛び、遊園地の縁に待機するトラックに運び出された。)

【UENO3153と上野こども遊園地の生まれ育ちの記憶】上野公園の中でアートプロジェクトの場所を探していて、上野公園と平場でつながっている民間施設UENO3153の屋上に行き当たった。戦後上野界隈にあった屋台を、東京都が、上野公園の不忍口側に集めた西郷会館を、再開発し2012年に竣工した建物である。そして話を聞くうちに、上野こども遊園地とは出自として兄弟であることがわかってきた。戦後、東京都の意志でつくられ、東京都から土地を借りて自らが経営し(UENO3153は上野広小路商業協同組合、上野こども遊園地はNさん)、東京都の意志で解体され再開発。二つの時間=昭和20年代から2010年代という時間と場所がつながるセンス・オブ・ワンダー。

3つのセンス・オブ・ワンダーは私だけのものである。しかし体験が深くなるにつれ、他者の深い部分に伝わるものになっていく。





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