東京都現代美術館のサウンド・アート・コレクション ➕
東京都現代美術館にサウンド・アート・コレクションがあるのをご存知だろうか。「耳と足を合わせたマーク」が屋外に12箇所、屋内に2箇所。道草でもするように、そして深呼吸でもするように耳を澄ますスポットがある。
美術館に行っても、帰りは何時?次にお茶をして・・などと考えながら、慌ただしく観てしまうことが多い昨今、立ち止まって耳を澄まし、感性を開いて美術館と出会うことを勧めてくれるこの作品は、とても新鮮だ。アーティストは鈴木昭男、作品は2つの呼び名があり、美術館の中に街なかのサインのように自然に存在する耳澄ましスポット「点音(おとだて)」、それと、独立した作品性を高めた「nozomi」である。
鈴木は耳の澄まし方を6つに分けている。そこに立ち止まると「何だろう?」と思って視覚と聴覚で感じる「はてな」、美術館全体を感じる「ながめ」、外からの素通しの音に耳を澄ます「きづき」、音を浴びるのに良い場所「あびる」、木場公園界隈からの音の反射を楽しむ「かつら」、子午線上にあって、430km離れた点音を想像する「はるか」。耳を澄まし、見えてくるもの、聞こえてくるもの、風や公園からの反響音を感じ、鈴木昭男の感性の軌跡を辿りたい。
入口のそばの芝生の中にオノ・ヨーコの「クラウド・ピース」という作品が埋め込まれている。覗いてみると、空と私の顔が映る。笑顔である。この日に、オノ・ヨーコからのメッセージが詰まっている「どんぐり*」に出会い、そこに収録された「空の作品Ⅰ」を通してオノ・ヨーコの空に出会った。(*オノ・ヨーコの「グレープフルーツ」というコンセプチュアルインストラクションの本から40年以上たって、その続きのような形で書かれたメッセージ。)
空の作品Ⅰ
第二次世界大戦の終わりにかけて、私はまるで
おばけの子どものようだった。食料不足で、空腹だった。
ただ横になって、空を見ているほうが楽になっていった。
空が好きになったのはその頃だ、と思う。
それからずっと、私は空が大好きだ。
自分を取り囲む世界がバラバラになっている時でも
空はいつもそこにいてくれた。私の人生で
常にそこにある唯一の存在。光や稲妻のような速さで
移りゆく人生の中で。あの時私は自分に言った、
空がそこにある限り、決して人生をあきらめたりはしないと。
初めて空の存在に気づいた時のことを教えてください。
初めて空が美しいときづいたときのことを。
現代美術館の屋外スロープに、ちょっと変わった屋外コレクション「修復」がある。アーティスト高田安規子・政子が、2005年にロンドン滞在時からスタートした、とある。建物や塀や床などに放置されている小さな破損箇所に注目し、自らの手で修復を加える作品だ。石畳風の道の7センチ角程度の修復なのだが、中々発見できずにいると、館の職員さんが外にでてこられ、「このあたりです。」と教えてくれた。
現代美術館は約3年間休館してリニューアルし、2019年3月に開館したが、スタッフさんの応対がとても居心地いい。スタッフの意識も一緒にリニューアルされたと思った。
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