小布施、町中図書館、Open-garten

2014年7月28日

朝9時半に長野県小布施の駅についた。NASCA古谷誠が設計した町立図書館「まちとしょテラソ」と初代館長花井裕一郎氏と古谷氏が構想した「町中(まちじゅう)図書館」を見たいと思った。

まちとしょテラソは、まるで大きな樹木の木陰で子どもたちが本を読んでいるように見える。まわりの風景を取り込み、一辺が内側にくびれた三角形のプランにドーム状の天井をのせ白くて細いいくつかの樹幹でささえられているような空間デザインである。

図書館の方に教えていただき、町中図書館「かねいちくつろぎサロン」でご主人にお話をうかがう。もともと四十物(「あいもの」アジの開きなど)乾物、食塩、醤油などを商いされていたが、やめてから店のスペースを何かに役立てたいと考えていた。町中図書館の話題がでたとき立候補。長く小布施のまちづくりにかかわる建築家宮本さんに相談し古い棚を移設して店と住居を仕切る書棚にし、座敷にして薪ストーブをいれた。台所はIH完備。食器もふくめ使ってもらってOK。座敷利用の予定表を見せてもらった。地元の利用で3分の2以上は埋まっている。研究会+暑気払い、着物の着付け教室など。ここはまちに開かれた私設の地域コミュニティスペースなのだ。後で観光協会で聞くと「我々も利用させていただいている」とのことだった。つぎに「穀平味噌醸造場」におじゃまする。ここも町中図書館だ。主人から声をかけてくれる。「花井チャン」と面白いことをやろうと盛り上がった。図書は仲間がもってきて増えたり、観光客が買ってくれたり、とのお話をいただいた。

かねいちくつろぎサロンで「外はみんなのもの」が合言葉であることを教えてもらった。そういえば「Welcome to My Garden OBUSE Open-garten HOME」のプレートが町のあちこちにある。おもてなしの一つでこのプレートがある庭にははいっていいですよ、ということだった。このガイドブックを観光協会で100円で購入。「外はみんなのもの」……合い言葉が観光協会の女性からも出た。

まちの中心部は街区のまんなかの私有地をつないでうまく通りぬけながら表通りにでられるようになっている。先のプレートが小さく置かれ、入っていい範囲に誘導してくれる。パン工場や醤油工場にも、きれいな庭を持つレストランでも「ここから○○にぬけられます。」とある。裏側に人の目が行き届くことできれいに整理されるだけでなく安全になる。町をオープンにする知恵を小布施はどこで身につけてきただろうか。歴史をたどると小布施は千曲川と松川に挟まれ戦後コントロールのきるまで水害と戦い続けた。1724年の記録では10.9mの水位まで達したとある。隣との境界、村境までわからなくなり、復旧は共同作業を余儀なくされた。また治水にみんなで頭をしぼっただろう。水害にあった町を共同で復旧した歴史が文化として受けつがれ「外はみんなのもの」になっていったのでは、と思われる。

ア・ら・小布施、まちのガイドセンターの看板を見つけて喫茶になっている㈱まちづくり会社に入ってみる。ここも中を通り抜けて、裏道に抜けられるオープンガーデンだ。東京理科大建築の学生のときから小布施のまちづくりにかかわり、そのまま居ついてしまった勝亦さんにお話を伺うことができた。まだ若い。名刺には移住コーディネーターとある。「この前カナダ人のウィリアムさんからビザが延長できないか相談を受けました。」「その方はアーティストだったんです。かつて小布施町立美術館、現在小布施オープンオアシスを増殖的にボルタリング施設に変えていっています。」外からきた勝亦さんが移住コーディネーターをやる。小布施の町の魅力は外の人の受け入れの深さにあると思った。

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