三郎麻生

奈良美智を解体するMOMAT

「奈良美智が選ぶMOMATコレクション」52点が東京国立近代美術館の常設展で展示されている(2016年11月13日まで)。奈良がインタビューの中で「自分がどういうものに惹かれるのかよくわかった。」と表現しているように、確立された作家性の奥にある原風景を見せられているよう。アーティストに一歩近づいたように思った。

「特に第2次世界大戦前後、そんな状況下でもボヘミアン的に生きた人々、過酷な時代を通り抜けた人々の作品が多くて・・・」とあり、奈良が武蔵野美術大学で教わった麻生三郎の「子供」、「赤い空」など生きる力がみなぎった作品、60年安保闘争のデモ中に警察隊と衝突して亡くなった女学生をモチーフとし悲しみや憤りを感じる「仰向けの人」などに出会うことができる。10代前半で聴力を失い、36歳で結核により亡くなった松本竣介の作品も13点ほど展示されている。有名な「Y市の橋」に並んで、「A夫人」、自身が絵を描いている場面のスケッチ「ms」、「少女」など、インパクトのある作品が並ぶ。

奈良が「なぜ、この作品を選んだのだろう?」と思いながらみていくと、いつもの妙に独立した存在感をもつ女の子のイメージにプラスして、確かな奈良美智が立ち上がってくる。再びインタビューを引用すると「表面的なことより、精神的なリアルさ、その人でなければ描けないウソではないものばかりであることに気づいた。」とあるように、「精神的なリアルさ、ウソのないもの」が奈良の基盤にあるのだ。

アーティストがアート作品を選ぶ、というのはそのアーティストを解体する唯一の方法かもしれない。


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