誰に何を伝えたいか、で形が違ってくる

今年各地で開催されているトリエンナーレ・芸術祭(あいち、さいたま、瀬戸内、大分、茨城県北、ほか)は、アーティストの作品の展示とともに、プロセスに一般の人を巻き込みながら制作し、参加してもらうことで達成されていくアートプロジェクトの両だてになっている。このアートプロジェクトの記録について、ノマド・プロダクション内部で行う勉強会を外に拡げた公開勉強会「アートプロジェクトの記録と編集の事例集」に参加した。

どれもプロジェクトの継続、発展をめざしているものの、誰に向かって、何を目的として記録するか?よって、大きく形が違う。3つに分類してみる。

一つは、社会的関心を拡げることを目的として、広い読み手を設定した記録で、現場にいることで初めて伝えられる気づきやでき事を、アーティストのことば、監修者の言葉、キュレーターの言葉、コーディネーターの言葉によって、豊富な写真とともに掲載する形(TURNフェスドキュメントブック2015)。

二つ目は、アートプロジェクトが、次にどのような展開が出来るのか、いわば仕掛ける側、将来の支える側を読み手として設定した記録で、コンセプトから順番に、現場の意図、制作過程、アーティストインレジデンスなど現場で実際に何が起こったかを記録し、スタッフの声、町の声を拾う形。(別府現代芸術フェスティバル2009「混浴温泉世界」)。10年後にアートプロジェクトに真剣に関わろうとする人達に向けて、塾生たちの気づきや主観が入る記名記録集の形もある。(取手アートプロジェクトTAP塾編集)

3つ目は、個別のプロジェクトやアーティストをより深く掘り下げ、それを読んだ人たちに深くコミットしていく記録で、ここに関心があって深く理解したいと思う人に向けて、アートプロジェクトの「起こり」から現在までのプロセスが書き込まれている形(クリエイティブサポートレッツ2015年度報告)。その番外編として、一週間後の自分に向けて記録するブログ的な形もある。

自らの中にアートが生まれる瞬間が素敵だと知っている人たちに向かって、私はその現場を伝えたい。

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