ソーシャリー・エンゲイジド・アートという潮流

2014年11月16日

人々をクリエイティビティに巻き込むことによって当事者にし、いつもとは違うポジションをつくりだすソーシャリー・エンゲイジド・アート、11プロジェクトが3331の地下の一室でNPO法人アート&ソサイエティ研究センターによって日本初として紹介されている。

不平不満合唱団はフィンランドの2人のカルレイネンのプロジェクト。お国柄がでる。シンガポールでは、どうしても一番になりたい国、何でも許可が必要な国、と皮肉る一方、プールで鼻をかむ、電車で寄りかかられる、という不満や、自立した女性が苦手な男性たちなどといって笑い飛ばす。歌詞をみんなで考え、曲をつけるうちに客観視できるようになり、感情的な部分が昇華され、アーティストの力でまるでフォークソングに仕上がってくる。

 次は高校生たちが、とにかくワクワクするプロジェクト。1994年のカルフォルニア州オークランド。ティーンエイジャーがネガティブな事件でマスコミにでる社会状況。スザンヌ・レーシーとその仲間たちは、公立高校生220人を屋上駐車場に集める企画をした。彼らはオープンカーの中で(だいたい2~4人)しゃべりまくり、大人たちは車の外で口をださない観衆。演劇のような空間をつくりだす。高校生たちは本音を熱弁しながらも俳優になる。発言する場所が用意され、主役になる。日常とポジションが完全に入れ替わることで、引き出されるものがある。

 小学校5,6年といえば、床屋に行った後のできばえや髪型を丁度気にし始める年だ。彼らがプロの美容師から1週間付きっ切りでマネキンで実践レクチャを受けたら・・意識がプロになる。カット無料のチラシを配り、予約を受け付け、2~3人でカットする。カットされる大人たちと対等にコミュニケーションする。カラーリングを勧め、応じてくれればちょっとしたアーティストになる。アーティスト集団ママリアン・ダイビング・リフレックスがいつものポジションを逆転させる。

 中絶船やチョークなど挑発を伴うものが含まれていたが、アーティストの目的は社会運動ではない。心が動き参加した人たちのなかに、生き生きとして消滅することのない刻印を記すことである、と改めて感じた。

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