文昭青野

欠損から創造する青野文昭の世界

武蔵野市立吉祥寺美術館で開催されている青野文昭展(2017/10/15まで)は、限られた展示空間の中で、どこまでも深く、刺激にみちている。

欠損した部分を想像してみる。あるいは部分から全体を想像してみる。欠損した断面を、新しい何かとつながっていくリアルな傷口と捉え、そこに滑らかに繋いでいくことで、合体・複合化する。3.11の漂流物は単にモノではなく、使っていた人の生活全体、人生全体へと想像が広がっていく・・・。

青野文昭は、欠損したもの達への想像力から、祖母がくらしていた戦前の吉祥寺の生活を、そこで収集したタンス類、古い自転車を合体させながら再生しているように思える。若い二人が自転車に乗って、タンスを突き抜けてくる造形。楽しそうだ。さらによく見ると、自転車と乗っている人とタンスとが深く合体していて、自転車で運べてしまうような、箪笥ひと竿にシンボライズされた戦前の質素な生活を想起させる。

青野文昭が放つ、欠損からの複数の想像のベクトル、積み上げられた本と工事中を表示する赤い三角コーンとが一体化し、その横に気持ち良さそうに自転車に乗っている人たちの造形があり、しかも彼らはタンスという生活を背負っており・・・、とどこまでも繋がっていく。





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