まちづくりとアートプロジェクトの境界

2015年4月22日

水曜日夜10時過ぎから始まる短い番組、NHKスーパープレゼンテーション。オランダ人アーティストHaas&Hahnが、丘の斜面に階段状につくられていった貧民窟ファベーラ(リオデジャネイロ)を、ペンキで塗りながら、住民と街を変えていった様子が語られていた。

撮影の仕事がおわってヴィラ・クルゼイロで飲んでいたとき、目の前の階段状の町全体にペンキで色を塗ったらオモシロいと思ったのがキッカケ。2人は誰が見ても分かるヴィジョン、バーベキュー、こども達を入口(階段状の町で凧を上げていたこどもをモチーフ)として、無理のない小さな実践からスタートし、住民とコラボすることでヴィジョンそのものを成長させていった。

都市インフラに補助金が入るまちづくりでは、ヴィジョンは行政が描いた枠内に収まるものとなり、地元リーダーがそれを担いでくれ、ヴィジョンの実現が目的となる。ヴィジョンに違和感を抱いてしまう人たちがいたら、置いてきぼりになりになる。一方アートプロジェクトでは、それぞれの人の中にそれぞれのヴィジョンが生れていく。参加者の中に、温かくて能動的なモチベーションが残る。その人のリーダーは参加者自身になる。つまり当事者になる。最初からビジョンを示すことはなく、アーティストはむしろ問いかけをつくる。出自がちがう。

 Haas&Hahnの仕事は「アートプロジェクトによるまちづくり」と呼ばれていた。ビジョンで引っ張ったのは「まちづくり」的であり、住民とともにヴィジョンを成長させるプロセスは「アートプロジェクト」的である。本来まちづくりは、個人の想いから発して、回りに拡がりヴィジョンとなり、それを実現する力が生れてくる。彼らの仕事の中に、人の中にモチベーションを生みだすアートプロジェクトを入口として、まちづくりのヴィジョンにつながっていくルートが見えた。

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