西村佳哲

「聞く力」ワークショップ

西村佳哲の「話し手は、相手の聞く力によって気持ちよく話すことができる」「アーティストは高い解像度でインプットするからいい作品(アウトプット)が生まれる。クリエイティブな集団は、聞くこと(インプット)ができる人たちがいる」を実感するワークショップ(WS)の様子を伝えたい。

50人の様々な職種の人たち。知らない人と二人一組になり、話し手と聞き手になる。私は話し手で、最近うれしかったことを気持ちをこめてBに向かい合って話す役だ。でも聞き手は目を合わせようとはせず、別のことを考えている様子だ。

これは、西村さんが、話し手にブラインドにして、頭の中で、例えばキヘンの文字を10コ書いてみるとか、全く別のことを考える、という指示をだしていたからだった。とにかく話がし難い。1分半しかないのに同じことを繰り返し言ってしまう。途中で話す力が萎えてしまう。

今度は私が聞き手になり、相手が話しているのに、腰を折ったり、話を横取りしたりする役だ(もちろん相手にはブラインド)。このときの話し手は「不思議な感覚」だったという。「私の言ったことはどうなったの?消化されないままスッキリしないモヤモヤした気持ちだった。」という。そうなると「モヤモヤを消化しようとして、タイミングをみて会話に差し込もうとするのでは。」そのタイミングをみているうちに、相手の話が半分しか聞けなくなる。双方がモヤモヤという悪循環に陥る。

相手を変える。話し手は「腹が立ったこと」を話し始め、私は「でもそれはあなたの言い方が悪いのでは?」などと否定する役だ。「ますます腹が立った」という。

また相手を変える。私は指示に従って「ちょっと困ったこと」を話し始める。すると相手はすぐに「わかる!わかる!」といって、「それは専門家に相談したほうがいい。」などと決めつけ、安易な解決策を提案してくる。(もちろん、話し手にブラインドでの西村さんの指示。)「私がいいたいのはそうじゃないんだ」とモヤモヤした不快感と、必要もないのに「相手を説得しにかかる」気持ちが残った。この不快になる聞き方を「先回り」という。解決策を出したがるのは、相手がシンドイと自分もシンドイので、そこから逃れたくなる、というのが西村さんのお話だ。

また、困った話を解決した自分の体験を話したくてしょういがない、というここがよく起こる。これでは、相手の話を半分しか聞けなくなる。話し手は、聞き手がちゃんとしていないと、何を話しているかわからなくなってしまう。「話し手ではなく、聞き手が力を握っている。」とこのWSで何度もいわれた。

別の人と3人グループになる。話し手、聞き手、オブザーバーという役回りで、可能な限り話し手が気持ちよく話ができる環境を、聞き手がつくろう!というWSだ。話し手は「最近はじめようと考えていること」を詳細に語り始める。

私は4つのことに気がついた。聞き手は、話し手が「成功して喜んでいる姿を想像して聞く」、解決しようとして聞くのではなく「共有しようとして聞く」、頭で(言葉で)理解しようとするのではなく、「胸で聞く」。話を肯定も否定もせず「もっと深く聞きたいと思って聞く」。

西村佳哲さんは、「その人の話に関心をもつのではなく、会話の相手=一生懸命生きているその人自身に関心をもって聞くこと」「話の内容を正確に理解しようとして聞くというよりは、相手の話を味わってみること、相手の気持ちの方に一緒にいること。」「歌をきいているシーンを思い浮かべる。そのとき歌詞の意味を考えるような聞き方ではなく、一緒に歌うように聞く。これがいいきき方」と言われた。そして「ついていく聞き方」のWSで全体を締めくくった。

「ついていく聞き方」は、決して相手を追い越さない、先回りしない、相手が沈黙したら、新しい質問をするのではなくそれを受け入れて待つ、先回りして考え始めたりはしない、などだ。そうすると話が成長していき、話し手は自分が話したいことに到達してスッキリし、聞き手は、その人から一番聞きたいことに到達する。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?