ワタリウム美術館アートクーリエ塾5日目
写真は思想家・ルドルフシュタイナー(オーストリア、1861—1925)の黒板絵である。農民や労働者など普通の人、学者たちを対象にして5000枚かいたとされ、弟子たちの努力で残された晩年6年間の1000枚の内の一つである。ワタリウムの努力によって蔵出しされた、この美しい黒板絵に挑戦してみたい。※写真=ワタリウム美術館監修「ルドルフ・シュタイナーの黒板絵」より
1921年10月9日の黒板絵のタイトル「人智学の宇宙論」。「宇宙を認識したければ、汝自身をみればよい。人間を認識したければ、宇宙をみるがよい。」とのフレーズがついている。展示にはないが、1923年11月9日の黒板絵「自己認識と世界認識」のフレーズ「自らを知ろうとするなら、世界の隅々まで目を向けよ。世界を知ろうとするなら、自らの内面の深層に眼を向けよ。」※66ページも手がかりにしてこの黒板絵を見てみたい。
画面左上から青い流れがきて時計回りの青い渦となり、中心から3つの粒子、D、F、Wがはじき出されたかと思うと、今度は反時計回りの、より強力なオレンジ色の流れになって、大きな渦を形成していく、そのような黒板絵である。
渦巻きを、自らの内面の深層におりていく道筋と、とらえてみる。過去の青い流れから連続している渦巻きをどんどん深くおりていくと、その中心に、D=思考、F=感情、W=意思があり、それは現在の私自身である。シュタイナーは、人間を深く掘り下げていくとその深層で宇宙となめらかにつながっていて、そして、人間のD、F、Wが先導して未来のオレンジ色の宇宙の流れとも、つながっていく、と教えていると思った。
D、F、Wは、それぞれの人によって、またその人のポジションによって違っていていい。
大学生の息子にこの黒板絵を見せて聞いてみた。「青い線は天啓、もしかしたら、こういうものができるかも知れないという閃き。中心にあるのは機械とそれによってのびる思考、創りだすこと、それがオレンジの線につながる。」私は中心に、Dream(夢をもつこと)、Free(束縛しないこと)、Walk(歩き続けること)といれてみた。
ところで、アーティストは、自らの内面を深く掘り下げて、世界へ、宇宙へとつながろうとする。掘り下げた深層にあるのは、感性と勇気であると思う。1924年1月6日の黒板絵「空気は勇気」※64ページのフレーズをご紹介する。
「自然の中で空気、もしくは風が立つとき、人間は自分の魂の中に勇気を感じ取ります。人間が知覚する空気は勇気なのです。」
「一方水は人間の感性の外的な現れです。感性が働くとき、外で水が生じるときと同じことが、内的に生じているのです。」
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