紅茶の味を思い出した
「私はコーヒー党だ」と堂々と書いた少しあとから、紅茶を飲むようになった。
朝食時には必ずコーヒーだったのが、ほぼ毎朝紅茶になった。
きっかけは、実家からけっこうな量の紅茶のティーバッグを貰ったこと。久しぶりに飲んでみたら、とっても美味しかった。
たまに気がむくと、頂き物の紅茶を飲むことはあったのだけれど、あまり美味しいとは感じなかったので、結果的に頻繁に飲むようにはならなかった。
久しぶりに「美味しい」と感じ紅茶は、トワイニングのレディ・グレイ。
複雑なブレンドの中の甘い香り。味よりも、この芳醇な香りに心を掴まれた。
これは、とっておきの時に飲む紅茶だと思った。
さすが、トワイニング。私がこの世で一番美味しいと思っているプリンス・オブ・ウェールズに匹敵するほど、好きだ。
嬉しいことに、実家から貰ったティーバッグの中には、プリンス・オブ・ウェールズもあった。
……土用保険にしたいけれど、それまで残っている気がしない。
いや、自分で買えばいい話なんだけど。
◇
二十歳すぎのころ、あのマスターに出会うまで、コーヒーが飲めなかった。
みんながコーヒーを飲むようなときには、紅茶を飲んでいた。色々な種類の茶葉を集めるのが趣味だった。
その頃一番好きな紅茶のメーカーはトワイニングで、一番好きな銘柄はプリンス・オブ・ウェールズ。
茶葉では少しスモーキーなキーマンが好きなので、このブレンドはドンピシャ。
◇
レディ・グレイで紅茶の味を思い出した私は、毎日色々な種類の紅茶を飲んだ。
いただきものの紅茶がいくつか、引き出しに仕舞い込んであった。
紅茶を飲まなくなっていた大きな理由は、紅茶を淹れる手順を面倒くさいと感じていたのだと思う。
本式に淹れるのなら、コーヒーだって手数はさほど変わらない。
でも、我が家のコーヒーはコーヒーメーカーに淹れてもらう。コーヒーと水をセットして、その間に数分他の作業をしていれば、出来たてのコーヒーが飲める。コーヒーメーカーの便利さの前に、お湯を沸かしてティーポットでお茶を淹れる手間を惜しむようになっていた。
我が家では、紅茶を飲むにはお湯を沸かすところから始める。私は電気ポットが嫌いで、ちょっとお茶を飲むためのお湯も、使うたびごとに沸かさなければならない。
そうして、毎日違う銘柄を飲んでいくうちに、以前のように紅茶の味がわかるようになってきた。……味覚が戻ってきたのだ。
コーヒーと紅茶を比べると、コーヒーの方が香りも強いし、味も濃い。コーヒーを飲み続けた結果、紅茶の味や香りを感じにくくなっていたのだろう。単純に、それが美味しいと感じられなかった理由だと思う。
毎朝のルーティーンをこなすうちに、紅茶を淹れることも、茶葉がひっかかるティーポットを洗うことも、面倒に感じなくなった。
朝は、なんとなくアッサムに手が伸びる。ルピシアのニルギリ・クオリティー(いただきもの)も美味しい。
ニルギリ・クオリティーが残り少なくなったので、注文しておこうかとネット検索したら、販売終了していた。残念だ。
次は、どの紅茶を飲もうかと、暇なときにはネット検索している。
パッケージの缶が素敵なのがたくさんあって、缶で選んでしまいそうになっている。
……私はいわゆる「ジャケ買い」で失敗するタイプなので、気をつけたい。
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