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世界には、美しいものが溢れている。

今年もウグイスは来ていたが、あっという間にいなくなってしまった。ウグイスは藪に住むらしいので、藪が消えた空き地は棲家に出来ないのだろう。

一昨年は、とても長い間、ウグイスが滞在していた。夏の暑い盛りにウグイスの ♪ホーホケキョ が聴こえるのは、なんとも微妙だったけれど、それはそれはいい声で鳴くウグイスだった。

一昨年は鳴き始めるのがとても遅くて、「今年は春が遅いなあ。というか、もうウグイスシーズン終わりじゃね?」という時分に鳴き始めた。そして、遅れたサービスなのか(そんなことはない)夏の間もずーっと鳴いていた。秋半ばまで、♪ホーホケキョ と言っていた。

ひとりで。

ひとりきりで。

♪ホーホケキョ は、オスがメスに求愛する鳴き声。

実際にこの目で見たわけではないので、本当に孤独だったのかは知らないけれど、多分あのウグイスには恋のお相手が現れなくて、ずーっとメスを呼び続けてアピールしてるんだなあと、ちょっとかわいそうに思っていた。

例年になく長い間裏の空き地にいたものだから、毎日気持ちよく鳴く声が聞こえていた。春が終わっていようとも、きれいな声が聞こえるのだから、こちらとしては大歓迎。

蝉の大合唱とウグイスのコラボという、なんとも楽しい夏だった。

⭐︎

……なんてことを思い出したのは、先日、PTAの仕事で子供の学校へ行ったとき。

進路講演会の運営のお手伝いに行ったのだけれど、講師の先生の真面目な話のBGMに ♪ホーホケキョ。それはそれは気分良さげに鳴いているのが、換気の為に開け放った体育館の扉から流れこんでくる。

長閑すぎて、全然会がしまらない。それはそれは、和やか〜な雰囲気で、講演会は幕を閉じた。

山の麓に建つ学校、なんて素敵なの!

気分は赤毛のアン。

帰り道は、日が暮れはじめた海沿いのバイパスをゆったりと走る。

こんな時間のドライブは久しぶりで、いい気分。

ちょっと残念なのは、行きにこの道を通ったときに港に入っていた、にっぽん丸がいなくなっていたこと。

運転中だから写真を撮るのは不可能だけれど、この黄昏れ時の姿が見たかったなあ。きっと、とても美しかったに違いない。

世界には、美しいものが溢れている。

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