ウチのかみさんは舞台美術家

今日は妻のはなしです。4年前(大体そのくらい)に結婚したウチの妻は舞台美術家という肩書きで活動しています。

「舞台美術」というのは、ものすごくわかりやすく言うと、建築士の舞台版です。

結婚するまで、そんな仕事があることすら知りませんでした。演劇や歌舞伎は好きでよく観に行ってましたが、役者さん以外の仕事で思い浮かぶのは、照明さんとか音響さん、大道具さんくらいでした。だから舞台美術と聞いて、「なんだそれ?」と思ったのが正直な感想です。

舞台には全て寸法がある

演劇にしても、ドラマにしても、そのセットには全て図面が存在します。家の形、屋根の形、ベンチの形、その辺の木まで、舞台にあるものは基本的に図面に記されています。

昔、算数の時間でやった展開図ってありますよね。前から見た図と上から見た図、横から見た図、みたいな。あれですね。

舞台にある大道具には全て事細かに寸法が決まっていて、それが全部図面に書いてあるわけです。その図面に従って、大道具さんが作っていくわけですね。だから図面がないと大道具さんも動けないわけです。

模型を作る

図面を書くのも仕事ですが、さらにそれを実際の舞台ならどうなるかっていうのを見せるために、その模型を作ります。もうこの辺は完全に工作の世界です。ありとあらゆる材料を使って模型を作っていく。

テレビチャンピオンのジオラマ選手権を思い出します。あれ作れる職人に憧れました。

何分の1スケールみたいなのがあって、その模型を作って演出家と色々話を詰めていくみたいです。

打ち合わせまでに模型を作っていかないといけない場合があって、その前の日は寝ないで作ってたりします。

一番大変なのは仕込み

図面や模型で打ち合わせを重ねて、いよいよ大変なのが仕込みです。演劇はこの仕込みが大変。僕も芝居に参加した時に、この仕込みを体験したことがありますが、セットを作るって本当に大変なんです。特にリアルなセットはほとんど家を作るのと同じですから、トントントントン大道具さんが組んでいくんです。

それを手伝いつつ、指示を出していくのも舞台美術の仕事です。

仕込みも小さな劇場で規模が小さかったりすると一日で終わるんですが、大きな舞台は数日かけて仕込みます。それに毎日立ち会わなきゃ行けないので、仕込みの間は朝から晩まで仕事をしてます。

本番が始まるとホッとする

仕込みが終わると、場当たりや照明や音響のチェックをし、ゲネプロ(関係者向け本番)を経て、いよいよ初日の幕が開きます。

ここまで来ればいよいよ仕事から解放されますが、場合によっては初日が開いても直しが入ることもあるらしく、現場に行くこともあるみたいです。

数日間の本番が終わるとバラシという、いわゆるセットを全て壊して(本当に切りきざむわけじゃなくて、バラす)、撤収します。それにも立ち会う場合があります。

給金は噺家と一緒

ここまでがざっくりとした仕事の内容です。本当はもっと色々あるみたいですけどね。

そんな妻の仕事ですが、お金はどういう風にもらうかというと、これが噺家に似ていて、一回いくらというつまりフリーランスの人の稼ぎ方ですね。

裏方の仕事でも、例えば照明さんで会社に所属している人もいますが、この舞台美術家はほとんどがフリーでやっているようで、会社にしてやっている方はほんの一握りです。

なので、この一回依頼があっていくらもらえる、というような考え方は僕らの世界と一緒なので、そこの価値観の擦り合わせはスムーズでした。

しかも演劇業界もそんなにバブリーではなく、結構みんなギリギリの予算でやってたりします。

ただ、バカでかいお芝居もあって、そういう時は予算も潤沢にあります。うん百万、うん千万の予算で舞台を作っている様子を見ていると大変だなあって思います。

時間との勝負

側から見ていて大変だなあ思うのは、とにかく時間がかかるということですね。打ち合わせ、仕込み、本番と一つの舞台を作り上げるのに最低1ヶ月、長いものだと半年前くらいから打ち合わせを初めて行きます。だから、プラン料をガツンと貰ったとしても、それにかかった日数で計算するとそんなに高くはないです。

また、打ち合わせに何回も通うわけですがその交通費も出ないことがほとんど。そこはもらうお金で賄うわけなんで、差っ引いたらかなり少なくなっちゃうこともあるみたいです。

その点、噺家は打ち合わせもほぼなく、現場に行って一席やって、「はい、いくら。」って貰えるんですから、本当にありがたい商売だなあって思いますね。簡単に出来る分、中止になったりする判断も早いんですけどね。

角浜有香

そんなウチのかみさんのホームページが出来たようなので紹介します。もしご興味のある方がいたら覗いてみて下さいください。模型の画像が沢山あって楽しいですよ。


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