なぜ鹿芝居をやるのか?
もうすぐ鹿芝居です。2018年頃からやってます。本番1ヶ月前は過酷です。頭の中が。なんせ自分で書いた脚本で、自分で演出して、自分で舞台も考えるので。衣装やカツラを把握するのも大変で、誰がどの衣装でどのカツラでと、それを考える作業が膨大で頭が痛くなりそうです。
そんな鹿芝居ですが、僕はどうしてもやりたいんです。なんでこんなにやりたいのかなあ。お金にはならないし、稽古時間もたくさんいるし、問題は山積みなんだけど、とにかくやりたい。
歌舞伎との出会い
歌舞伎と出会ったのは、学生の頃。落研のご近所付き合いで国劇部という歌舞伎をやる部活があって、その友達に連れて行ってもらったのがはじまり。旧歌舞伎座の三階席でしたけど、それはそれは不思議な体験でした。というか、新鮮な体験。白塗りで化粧けばけばの役者さんが、不思議なセリフの言い回しでお芝居していて、花道で見栄をしたり、とにかく今までに見たことのない、経験したことのない空間がそこに広がっていました。
初めて見たのは双蝶々曲輪日記だったと思いますけど、子役が出て来て周りはみんな泣いていて、僕はストーリーがあまり理解できなかったので、よくわかりませんでしたが、なんか感動するやつなんだろうなあと思いながら、見ていました。
そんな、初体験があって。先輩に連れられて行った「勧進帳」を見て。さらに、学生最後に「仮名手本忠臣蔵」を見ておこうと通し公演に行ったりして、歌舞伎好きが醸成されていきました。
前座の頃の夢
落語家になった後に、鹿芝居があるのを知って衝撃でしたね。素人が歌舞伎をやるの?
率直にそう思いました。
その後、国立演芸場で馬生師匠率いる鹿芝居のお手伝いをした時には衝撃を受けました。化粧も衣装もカツラも全部ホンモノだし、舞台もホンモノ。おいおい、これは素人の域を出てるじゃんって。
ウチの師匠が、「大銀座らくご祭」のグランドフィナーレで「勧進帳」をやった時は、特別な予算があるからできるものだと思っていましたが、鹿芝居でもこんなちゃんとやっているのか?
と驚いたことを覚えています。
やりたい気持ちは増していくけど、お金もないし、ああいうふうにホンモノ使ってやるのは難しいだろうなあとは思っていました。だけど、馬久さんと前座の頃、「鹿芝居やりたいね」と話していたことはよく覚えています。
二つ目時代の演劇の経験
そうこうしている内に二つ目に昇進し、いよいよ落語家第二ステージが始まりました。日々のネタおろし、お仕事に追われている中で、鹿芝居のことは頭の片隅どころか、一度外に行ってしまっていたと思います。
そんな中、演劇への参加の話が舞い込みました。以前から知り合いの役者さん主催のお芝居に出てみないかとお声がかかりました。二つ目生活も4年ほど経っていましたし、少し違うこともやりたかった私は、思い切ってその演劇に出ることにしました。
落語と違って、たくさんの役者さんと一緒にお稽古して。舞台ひとつとっても、美術、大道具、照明、音響、演出、広報、舞台監督と、大勢が参加するこの演劇のお仕事は、僕の感覚をすっかり変えていきました。
と同時に、舞台作りは「一からやれる」んだというのを知りました。
鹿芝居、始動。
舞台は一から作れるということが身に染みていた私は、いよいよやってみようという気持ちになりました。
芝居好きの緑也兄さんと馬久さんを誘って、基本はこの三人がイニシアチブをとって、芝居興行を打って行こうと考えました。
これまたご縁で知り合ったおかめ家ゆうこさんという最強のパートナーを得たことで、小道具やカツラ、制作面をお願い出来ました。
舞台装置は、私の妻が舞台美術なので作ってもらいました。
そんな体制で臨んだ最初の芝居が菅原伝授手習鑑「車引」です。ガチガチの時代物の狂言を最初に持って来たのは、本家の鹿芝居がやられていないようなものをまずやりたかったのと、「これはやるのは無理かもね?」というようなお芝居を最初にやっておけば、後が楽だろうと思ったからです。
そのおかげで、続く「牡丹灯籠」、仮名手本忠臣蔵「三段目」「四段目」、「白浪五人男」と挑戦できたと思います。
これも全て、演劇の経験をしたからだと思います。
「無いものは作っちゃえばいい」
素人芝居の醍醐味だと思います。
なのでこれまでのお芝居も、ほとんどが手作り。カツラも衣装も手作りがほとんどです。
脚本はオリジナルのあるものは、それを参考に鹿芝居用に書き換え、オリジナルがないものは私が書いて演出しています。
全て手作りの鹿芝居です。
いよいよ「百年目」
そんな今回の作品は「百年目」です。落語好きなら一度は聞いたことのあるであろうこの「百年目」を私なりにアレンジし、鹿芝居として公演します。
ぜひぜひご期待ください。
「令和鹿芝居〜百年目浮世番頭の巻〜」
日程
①令和6年11月27日(水)
場所 池袋演芸場 夜公演
②令和6年11月30日(土)
場所 深川江戸資料館 昼夜公演
【番組と料金】
•時間
①池袋演芸場 18:30開演
②深川江戸資料館
昼の部15:00〜17:00
夜の部19:00〜21:00
•料金(各公演共通)
前売3000円 当日3500円
•番組(各公演共通)
第一幕:演芸
第二幕:鹿芝居『百年目浮世番頭』
【予約】
●カルテットオンライン(当日精算)
https://www.quartet-online.net/ticket/shikashibai7
●カンフェティ(事前決済/チケット発券)
11/27池袋演芸場
11/30深川江戸資料館
電話予約:090-8170-8152(おかめ家)
【配役】
番頭 次兵衛 宝井琴凌
大旦那 右兵衛 林家はな平
若旦那 清蔵 柳家緑也
医者 玄白 金原亭馬久
幇間 一八 柳亭市寿
花魁 揚巻 柳亭市童
芸者 市丸 古今亭志ん雀
奉公人 喜助 林家あんこ
丁稚 定吉 柳家花ごめ
みかん問屋 万屋惣右衛門 入船亭遊京
ツケ 市好
三味線 田村かよ