アダルト同人ゲームにおける濡れ場とRPGの相性について考える

えっちなことと「ゲーム」として面白いかは別である」
 私は日ごろインディーズのR18、えっちな同人ゲームをよくやる。中でもアクションとRPGをよく遊ぶ。しかも大真面目に。これは同人ゲームの現在の市場事情はR18のRPGがいわゆる花形という扱いで最も多いので必然的にRPGをあそぶようになっている部分もある。こうなっている理由はアクション等より制作難易度が低いとか色々な事情が考えられるが、市場が確立することで「同人ゲームはRPGを出してナンボ」という風潮が生まれた部分もあるんじゃないだろうかと思う。 
 一口にRPGといっても色んな種類があるが、現在インディーズにおいて最も多いのは「女性主人公操作での敗北陵辱メイン」と「寝取られメイン」の二つである。コンシューマーで見かけるような男性主人公モノは絶滅危惧種といって良いほど存在しないと言っていい。
 さて流行っているのならさぞRPGとして確立された面白さがあるのだろうと思うかもしれないが、私の意見としては「全くそんなことはない」と声を大にして言いたい。というのも、敗北陵辱も寝取られも「プレイヤーが主体で操作するRPG」との相性が全然良くないからである。何なら本来の意味であるRPG、ロールプレイという観点からは最も遠くなる可能性がある。なぜそう思うのか、をちょっとまとめてみる。

敗北陵辱の場合
「わざと負けるRPGはゲームとして楽しいのか?」
 
戦闘に負けたら濡れ場が見れるというのが基本構成。なのだが、ストーリーを進めることを前提で考えたら当然勝利しなければ進まない。にもかかわらず濡れ場を見るためには「わざと負ける」必要すら出てきて、「真面目に戦闘をやる」というRPGの基本設計から根本的に外れた設計にある。ボスごとに固有の濡れ場を用意している場合がほとんどだが、こうなるとすべてのボスで総当たりで負けて濡れ場を見ることになっていき、ここまでいくとただの作業であってゲームテンポの阻害にしか感じられないのである。最近ではボスを倒しても負けた場合の回想シーンが解放されたり、エンディング後に全開放が解放できるといったシステムが導入されていたりするが、これらすら導入されていないゲームは未だに多い。
 私は特に初プレイ時は処女クリア、いわゆるエッチシーンをすっ飛ばして順当にRPGとしてやることが多いのだが、このプレイをすると冗談でもなんでもなくアダルトゲームにも関わらず濡れ場を一度も経験しないままゲームクリア……なんてことも珍しくない。いや、珍しくないどころではなく、この条件でクリアすることが真のエンディング条件だったりして、いやそれじゃあ濡れ場がおまけであってゲームシステムとして独立してるじゃん、ゲームとしては全く面白い仕様じゃないじゃん、と肩透かしをくらう。
 この辺をうまくやっているゲームは敗北すると性行為の回数等に応じてステータスが上がったりして、再戦の難易度が下がりながら濡れ場が見れるので、負けることへの抵抗感が薄くなり、かつ作業感もなくなったりする。ただたいていの場合はただ陵辱される濡れ場を見るだけであり、再戦時も結局真面目にボスを倒さなくてはならないことがほとんど。当たり前だが、アダルトゲームを買う以上は濡れ場が目的になってる部分があるわけで、そうなるとシナリオを進める、ボスを真面目に倒すことでご褒美がないというデザインは「ゲームとしてはどうなの?」と疑問を抱かずにはいられないのである。
 たまに売春でお金を稼げたりするのだが、これがそんなに金策にならないゲームがほとんど。なんならマジで普通に冒険に出た方が手っ取り早く稼げるものもある始末で、だったらレベル上がる分普通に戦った方がましだったりする。最後の手段は体を売るか……みたいな難易度のデザインは本当に稀になってしまっているのが現状。
 あとはたまに10万払う?払えないなら体でいいよ、みたいなイベントもある。これは普通にやっているとほぼ間違いなく金が足りなく体で払わされるイベント。あくまでギミックをすっ飛ばしてエッチして終わりにできるよ!というものなら大歓迎なのだが、どうやってもその大金用意するのの時間がかかって、シナリオ上ほぼ必須という感じのデザインは個人的にはいただけない。というかRPGでありながら選択の自由度がないのでもやもやする。とはいえ、シナリオ上にエロトラップを仕掛けられるのでこちらはデザインとしてはそこまで悪くはない。が、貞操を守ることがエンディング条件に絡んでいたりするとクソくらえである。
 そもそも敗北陵辱メインということは本人的には基本的にエロを歓迎していないので、エッチなイベントに飛び込んでいくのはロールプレイの観点でも「こいつこんなことしないだろ」でプレイヤーの意思が強すぎて、そこでもエロがエロだけ独立しているという印象が強くなったりする。
 ちなみに最近では戦闘もなくマップ探索して歩いてイベント見つけるだけのゲームもちらほら。確かに作るのは簡単かもしれないが、ここまでくるとそれこそノベルゲーとかCG集でいいと言わざるを得ない。

NTR(寝取られ)モノの場合
 大前提として、パーティメンバーや守るべき相手が寝取られることがほぼ決定されている。そういう読み物だったらともかく、「すべて奪われる」ために「レベルを上げる」といった真面目にRPGをやるのはまず導線の段階でかみ合ってないように感じる。ゲームとしてモチベーションを根本的に否定するようなデザインにしかやってても感じられないのである。
 無論レベルを上げて苦楽を共にしたからこそ寝取られたときの絶望感が増す、という意図は理解はできる。ただその場合「寝取られることが確定している」とか「寝取られゲームです」というジャンルのネタバレ自体が寝取られの絶望感を薄めている。どうせ寝取られるからなという気持ちで遊ぶのでは重みがあまりない。ちゃんと純愛ルートも入れた上で、間男が裏で奪おうと企んで来るくらいがゲームとして丁度いいように思える。寝取られオンリーゲーとして売り出されてしまうことで寝取られの情緒もなくなり、ゲームシステムとの相性が虚無感しかなくなってしまうのである。最も、それがいいという人もいるだろうからなんともだが……それRPGじゃなくてノベルでいいだろと私は思ってしまう。
 というかそもそもNTRモノの場合、主人公かヒロインのどちらかが極端に性格に問題がある。RPGなのにホイホイパーティメンバーから抜けるヒロインはもうわざとらしいし、そもそもRPG……何かと戦ってる時点でそんなことしとる場合か貴様らというシチュエーションも多い。そもそもただの陵辱&快楽堕ちじゃねーかと突っ込みたくなることが多々あるが、これはNTRジャンルそのものへの意見になるのでここでは割愛するものとする。

エロければなんでもいいのでは?
 
別にエロければ何でもいいという人もいるだろう。ここまで色々言っておきながら、私もその意見には「全面的に」同意である。この全面的というのは「エロければ何でもいい」ということはRPGやといったゲームの体を成す意味もないよね、という意味も含んでいる。エロければなんでもいいならわざわざRPGじゃなくてノベルゲームとかなんならCG集でもいいよね?なんでわざわざRPGにしたの?と言いたいゲームは本当に多いのである。
 エロければいいということは、それは裏返せばエロがゲームから独立した要素であるということ。RPGというシステム、ストーリー進行に対して何のシナジーとか盛り上げ要素にもなっていないのである。

じゃあどんな要素がアダルトRPGで盛り上がるの?
 
エッチしたら経験値やステータス、スキルが会得できるという成長要素。そもそも主人公がサキュバスとか襲う側で、積極的にプレイヤーの意思で襲い掛かっていくゲーム。ヒロインとくっついてご褒美としてイチャイチャする。こういった「プレイヤーの意思でもって操縦していくシステム」であればエロがそのままRPGというデザインに直結しているんじゃないかと思う。別に敗北陵辱シーンはあっていい(というか大歓迎)のだが、負けること主軸でゲームを組んでしまくと、もうそれノベルゲームでバッドエンドの分岐を見る見ないで十分じゃないの?と思ってしまう次第である。

 最近あまりにもゲームとして楽しくないインディーズゲームが増えたので、もやもやを言葉におこしてみた次第である。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?