【寒さに耐える生徒たち】スパルタ中学校に転校した愛子

 中村愛子は中学2年生だ。冬休み明けから転校することになっている。ただ、その転校先の中学校が特殊な教育を実施しているのだという。インターネットで調べたところ、子供たちを鍛えるために、登校後パンツ一枚の裸・裸足になり、校庭を走り、その後乾布摩擦をし、冷水シャワーを浴びるらしい。それが終わると、半そでシャツと半ズボンを着ることが許されるが、どんな寒い時でも、雪が降っていようとも、半そで半ズボン裸足である。
 引っ越しが終わって新しい家に着くと、その地域の寒さが実感できた。靴も靴下も履いて、その上ジャンパーも手袋もしているのに寒い。刺すような寒さだ。冬休み明けからこの寒さを無防備に受けると想像すると絶望した。
 それから数日して、登校日がやってきた。登校時も防寒具は禁止されている。学校指定の半そで半ズボンの体操着を着て、登校しなければならない。タイツや長袖のシャツを下に着ることも禁止されている。寒いというよりも痛いし、震えがとまらない。丸まって、手で腕をこすり必死に耐えながら登校した。
 校門に着くと、靴箱が置いてあった。校内では裸足になれ、ということらしい。他の生徒もいたが、別にいつもやっていますよ、という感じに靴を脱いで次々に靴箱に入れていった。最初から裸足で登校してくるような生徒それ以上におり、皆足が真っ赤になって霜焼けで腫れていたが特に辛そうな感じはなかった。愛子は裸足で登校してくる女子生徒に話しかけてみた。
 「私、今日からこの学校に転校する中村愛子って言います。あなた裸足で登校しているけど、寒くないの?」
 「寒いし、すごく辛いよ。足が痛くて、泣いたこともある。でも、毎日繰り返しているうちに段々と鍛えられて、泣かなくなる。私も最初のうちは靴を履いて登校していたけどね、靴を履いて登校するとまず馬鹿にされるの。弱い、軟弱だって。馬鹿にされるだけだったらまだいいけど、靴を履いてきがちだったり、いつも寒そうにしていると、虚弱生徒に指定されるの。指定されるとどうなるかはそのうちわかるわ。私は、一年のときに一回虚弱生徒に指定されてひどい目にあったから、もう靴は履かないようにしたの。一年間に30日以上靴を履いて登校したら虚弱生徒に指定されるから、あなたはまだ全然大丈夫。」
 愛子は虚弱生徒に指定されたくなかったが、指定されるとどうなるのか興味がわいた。
 寒くてうずくまっていると、鐘の音が鳴った。校庭を見ると、皆整列しているではないか。愛子は怒られたら嫌だと思って、雪の積もった道を走り抜けた。

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