売掛金回収プロの極意2

売掛金回収プロの極意(危険な兆候を感じたら)

(1)信用調査(数字からの経営分析)


前章では危ない会社の見分け方、危ない人物の見分け方について商業登記簿・不動産登記簿・本人確認書類にもとづき説明してきました。

これらの一連の与信審査を信用調査と呼んでいます。この信用調査は与信審査をして終了というわけではなく、その後も日常的に取引先に対する信用管理を行い、取引先の信用状態の変化を敏感に察知することが債権管理において非常に重要です。


このように、定期的に信用調査を継続することを途上与信と呼んでいます。


途上与信において重要なものとして、取引先の経営分析とキャッシュフローの把握があります。


これは、取引先から決算書などの財務諸表を取り寄せて分析をすることになります。


主な内容としては、「安全性」・「収益性」・「成長性」について財務諸表にもとづき分析をします。
また、キャッシュフロー計算書の確認が可能な場合は、これについても分析をします。

◆決算書にもとづく経営分析

①安全性の分析
長期の安全性に関しては、自己資本比率を見ます。自己資本比率とは総資産(総資本)に対する自己資本(株主資本+評価・換算差額など)の比率のことです。
自己資本÷総資産(総資本)× 100で算出します。一般に自己資本比率が高いほど負債(借金)が少ないことになりますから経営基盤が強いものと判断されます。


短期の安全性に関しては、流動比率を見ます。流動比率とは流動負債に対する流動資産の比率のことです。
流動資産÷流動負債× 100で算出します。理想的なのは200% といわれています。


②収益性の分析
収益性に関しては、売上高営業利益率を見ます。本来の営業活動による利益率であり、本業の収益性が高いかどうかを判断します。
営業利益÷売上高× 100で算出します。この比率を同業他社と比較することで販管費の効率性を知ることもできます。


③成長性の分析
成長性は、債権回収率の高さや取引拡大の可能性を示すものです。増収率や営業利益増加率などで分析します。

(2)危険な兆候の発見


取引先の日常的な信用状況の適切な把握により、売掛金などの債権回収の遅延・不能に至る危険な兆候を発見することが可能となります。


主要なものは次のとおりです。


①人物面
・ 社長がいつも不在で連絡がとれない
・ 営業のトップや経理責任者の退職
・ 番頭的な役員や古参社員の退職
・ 従業員の定着率の悪化、勤務態度・モラール(意欲・満足度)の低下
・ 経営者・幹部に対する信頼の欠如(不平・不満を口に出す)


②行動面
・ 事務所やトイレが汚い(整理整頓ができていない)
・ 採算度外視の安売りをしている
・ メインバンクや取引銀行の変更


(3)危険な兆候を発見した後の対応


取引先に危険な兆候が見られる場合には、万一の場合に備えて取引先に対する債権の存在を立証できるように、次のとおり契約関係書類の再点検と整備を行います。


・ 債権残高の確認
・ 債権回収状況の再点検
・ 担保目的物の評価見直しと追加・代担保要求の検討
・ 取引先の事業報告書、財務諸表の点検
また、取引先が倒産などによりリスクが顕在化した場 合には、法的な手段を取ることを含め、弁護士などと協 議し、早急に対応することが重要となります。

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