売掛金回収プロの極意(回収行動の準備)
(1)延滞発生時の対応
約束の期日に入金がなく延滞が発生したら、次の手順で回収行動の準備に着手します。
①請求書の発送確認
請求書の発送が確実に行われているかの確認をします。単純な事務ミスで請求書の発送をしていないことがありますから確実にチェックします。
②回収先の分類(取引状況)
イ)延滞の常連である取引先
毎回、期日を延滞する常連の取引先でも、支払にルーズなだけで経営危機というわけではない場合がほとんどでしょう。
それでも、油断は禁物ですので、すぐに電話連絡をして入金約束を取ります。
ロ)初めて延滞発生した取引先
毎回きちんと期日に入金していたのに初めて延滞した取引先は、不測の事態が発生している可能性があり注意を要します。
ハ)新規一発延滞の取引先
新規取引で初めての入金を延滞する取引先は要注意のです。
③回収先の分類(ランク分類)
返済モラルと返済能力から4つに分類できます。
※返済モラルとは返済意思のことです。
ランクA 返済モラルも返済能力も高い優良取引先
ランクB 返済モラルは低いが返済能力が高い取引先
ランクC 返済モラルは高いが返済能力の低い取引先
ランクD 返済モラルも返済能力も低い取引先
④回収先への電話連絡
請求書の発送だけに頼らず、回収先へは電話連絡にて延滞発生の事実確認をします。
この時点では、督促というよりも状況確認の意味での連絡とします。
これにより、たとえば、電話が使用不可になっている事実や取引先の勘違いによる入金忘れなどが判明します。
⑤回収先相談票の作成
回収先ごとに、債権管理のための顧客台帳を作成します。回収先との交渉経過を記録し、債権保全を図ることを目的とします。また、営業担当者が自分の担当している取引先の情報をタイムリーに記録することで与信管理面での効果も期待できます。
⑥債権保全会議
債権が延滞している取引先の情報を共有化することと、有効な回収手法を協議すること、更に営業担当者や回収担当者のモチベーションアップの目的で開催します。
2週間に1 回程度の定期的な開催と取引先の状況に応じた臨時での開催が理想的です。参加メンバーは営業担当者、経理担当者、関係部門長、経営者などで、会社の事情に応じて人選します。
ここで、重要なのは債権管理の重要性を全員が認識することです。一般的に債権回収担当者は地味な仕事をしているイメージがありますが、会社にとって非常に重要な仕事をしていることを正当に評価する必要があります。
そのためにも、経営層が出席する会議とすることで位置づけの重要性が増します。
(2)回収7 つ道具
訪問回収に行くときに必ず準備すべき7つ道具は次のとおりです。
①手書き領収証
回収時に、すぐに集金できるように準備します。複写式の物で、相手方のサインを必ずもらいます。このサインが債務承認の証拠となります。
②卓上電卓
なるべく大きな物を準備します。計算ミスを防ぐことと、回収に来たことをアピールすることに絶大な効果が期待できます。
③契約書類などのエビデンスのコピー
契約書類は原本ではなく必ずコピーを準備します。これは、回収時に相手方が逆上して書類を破棄してしまう恐れがあるため、万一に備えてコピーを持参します。
また、契約書類以外のエビデンスも必ずコピーを持参します。
④連帯保証書(作成用)
支払延期の申し出を受けたときや入金約束不履行時に交換条件として、個人保証を要求します。
このときに、その場ですぐに連帯保証書を作成するために準備しておきます。
任意回収の戦術にとって、個人保証は最重要事項ですから、チャンスを逃さないようにします。
⑤朱肉
相手方からの押印や拇印を取得するために朱肉を準備しておきます。
特に、念書は拇印を取得すると相手方に与えるプレッシャーが増加し、効果があります。
⑥会社便箋
念書や覚え書きなどの相手方からの直筆の書面を作成するために、会社用の便箋を準備しておきます。
たとえば、個人保証を拒否した場合に、次回約束不履行時には個人保証を承諾する旨の念書を取得します。
このときに、拇印を取得することで相手方に与えるプレッシャーが増加し、効果があります。
⑦ボイスレコーダー
相手方に、許可をとって交渉内容を録音します。
いい加減な返答ができなくなり、相手方に与えるプレッシャーが増加し、効果があります。
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