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NGK単独ライブ「大事」についての色んな想いとか

1月21日に本番が終わり、ありがたいことに配信延長。
その配信が1月29日に終わり、
クラファンの締め切りが1月31日に終わり、
グッズの受注通販の受付が2月1日13時に終わり、
僕のNGK単独「大事」に関する仕事はこれで一旦終わりです。

ヒューマン中村20周年単独ライブ「大事」を楽しんでくれた皆様、ありがとうございました。

マネージャーとの面談で「NGKで単独ライブをやりたいです」と伝えたのは、去年の7月始めの事でした。

そこから、NGKに開催許可をもらい、日程を決め、料金を決め、タイトルを決め、チケット発売日を決め、フライヤーを作り、スタッフ陣を固め、グッズの打ち合わせ、クラファンの打ち合わせ、セットの打ち合わせ、グッズを作り、クラファンを立ち上げ、集客のために告知をし、手売りをし、その間もずっとネタを考え、内容の打ち合わせをし、VTRを撮影し、台本を作り、演出を決め、セットを決め、台本を提出して、ネタの練習して、リハーサルして、家に帰って、寝て起きたら、本番当日でした。

そして、あっという間にオープニングの出囃子が鳴ったと思ったら、瞬く間に本番が終わって、アフター配信をして、打ち上げをして、大量の差し入れを持って家に帰っていました。
気付いたら半年が過ぎていました。

無我夢中に準備していたと思ったのに、いつの間にか祭りの後で、情熱や焦燥や不安を混ぜた熱狂は、充実感と寂しさに姿を変えていました。

本番中はただただ必死で過ぎていきましたが、エンドロールが終わってからのエンディングトーク、公演終了後の舞台袖からアフター配信、その後の打ち上げから家に帰り布団に入るまでの数時間は、どこを切り取っても幸せで、今までこの単独に向けて、大げさに言えば20年頑張ってきたご褒美のような時間でした。

布団に入っても、単独の興奮が冷めやらず、全く眠れませんでした。
今までの単独ライブでそんな事はなかったのに。
それだけNGK単独とは僕の中で大きなものでした。

満席にはならなかったですが、たくさんの芸人さんの告知協力のおかげもあって、予想より遥かに多くのお客さんに来て頂き、オープニングで登場した時のあの万雷の拍手と客席の光景。

あんなに素晴らしい景色を見れるとは一年前には考えられなかったです。
色んな奇跡や巡り合わせで、あの瞬間に立ち会えたんだと思います。

いつそんな事を思いだしたのかわからないくらい昔に、「いつかNGK単独をしたい」と思ってずっとネタを作ってきました。
100人規模の会場でずっと単独を続けて、いつかお客さんが増えて、少しずつ会場を大きくしてたどり着こうと、単独ライブも重ねてきました。
しかし、100人規模でもなかなか客席が埋まらなくて、その分NGKまでの距離も埋まらないまま何年も同じ会場で単独ライブをやり続けました。
R-1で結果を出す為にも、もがきました。
R-1で結果を出したら単独ライブにお客さんが来てくれると信じてR-1に挑戦し続けました。
でも、決勝に行ってもお客さんはそんなに増えずに、ずっともどかしく思っていました。

その間にも、エレベーターでビュンビュン上に上がっていく後輩達。
自分はずっと同じ場所で足踏みをしている気分でした。
頑張って現状維持、という言葉を聞いた事があって、まさにその通りやな、と思いました。
頑張ってネタ作りしても、R-1に出ても、何も変わらない現状。

だけど才能は不公平で、頑張った分進める人間も居て、僕が足踏みをしてる横で、新しくまた一組、また一組とNGKの単独ライブを掴んでいく。
羨ましい悔しい情けない。

才能とは何なのか。
そんな事ばかり考えるようになりました。

それを考えている時は、NGKでやりたいという事をどこかで諦めていたのかもしれません。

そんな事をウジウジ考えている内にR-1に出れなくなって、唯一の希望が断たれました。
自分のネタを広く発表する場を失ったからです。
R-1に出ても現状が変わらないとは言え、それでも藁に縋る様な思いで「次は何かが変わるかもしれない。次にR-1でやるネタをたくさんの人に見てもらったら、単独ライブにお客さんが来てくれるかもしれない」という気持ちで毎年R-1を目指していました。

その藁すら無くなった訳です。
もう絶対にNGKで単独ライブとかできんやろなと思いました。

その直後に行われたR-1クラシックに優勝できましたが、それでも優勝直後に森ノ宮マンゲキで打った僕一人のネタトークライブは70人。
それまでにやっていたライブとお客さんの数は何も変わらなかった。

それでもそのライブで「来年にはNGKで単独をやります」と宣言しました。
クラシック優勝で、少し追い風が吹いてる気もして、本当に来年こそNGK単独をするぞという気持ちで、宣言しました。

しかし、その年の9月に打ったライブでも集客力は変わらず、「来年にはNGK単独」の目標を撤回しました。
そして、NGK単独の事は諦めました。

単独ライブにお客さんを呼べる芸人になりたいけど、なれなかった。

じゃあ自分はどういう芸人になりたいのか、新しい目標や生き方を探さないといけないと思うようになり、ネタ作りをやめて、芸人として違う生き方を探そうと考えました。

R-1も無くなって、いよいよ自分のネタの存在意義がよくわからなくなったからです。
いつもネタを見に来てくれるお客さんは居てくれるけど、それでも集客がある一定のラインに達していないと、ライブも打てない。
そのギリギリのラインでした。
このままじゃおそらくライブも打てなくなるから、そうなる前に違う生きがいを探すべきだと。

ネタ作りをやめて、SNSでネタを投稿したり、MCの仕事ができる様に、コーナーライブを立ち上げました。
ただそのおかげで、今までやってこなかった仕事ももらえたし、新しい種を植えることができたので、それは良かったです。

そんな色々と新しい事に挑戦している中、後輩が背中を押してくれた事もあり、最後のつもりで単独ライブを打ちました。

その単独ライブも、漫才劇場で半分いかないくらい。
別に今までの自分の範囲内の集客でした。
それが今からだいたい一年前。

ただ、最後のつもりで打ったその単独ライブが、今までで一番手応えのあるものになりました。
するとコロナ禍から始まった見逃し配信が、それを証明するかのように、劇場集客の何倍も売れました。
観に来てくれたお客さんや芸人が熱い口コミをしてくれたおかげで、気になった人が、一人また一人と配信チケットを買ってくれたのです。

あの時の「やっと届いた」というゾクゾクした感覚は、忘れられません。
そして、自分の中で蓋をしていた「NGK単独」の夢が、再び立ち上がってきました。
もしかしたら、もしかしたら、これをきっかけにお客さんが増えるかもしれない。
ずっとずっと憧れて来た、「単独ライブにお客さんが集まる」という事実が、配信という形ではあれ少し叶った気がしたのです。

ちなみにその時売れた劇場チケットは140枚。

その後売れた配信チケットは

450枚でした。

口コミが話題を呼んで、たくさんの人が見てくれました。
劇場も配信も観てくださった方もいると思いますが、単純計算で600枚のチケットが売れた事になります。
もちろん、配信の人気公演になると1万枚とか売れるので、それに比べると雀の涙のようなものかもしれませんが、それでも僕にとってはとんでもない数でした。

今までとは、何かが違う。
初めて、足踏みしていた場所から動いた気がしました。

もしかするのかもしれない。
でも、今回限りのマグレかもしれない。

そのどちらなのかを確かめる為に、そして自分の中の熱が冷めない内に、半年後また単独ライブを打つ事にしました。
気付けば20周年というとんでもない芸歴になりつつ。

もしも次の単独ライブもうまく行ったら。
もしもお客さんがたくさん来てくれたら。
その時は、、、。
本当に祈るような気持ちでネタを作り、毎日告知しました。
絶対に期待を裏切れない、絶対に前回の方が良かったと思わせてはいけない、というプレッシャーが凄まじくて、準備で寝れなくて、生まれて初めて蕁麻疹が出ました。

そして単独ライブ当日、舞台袖のモニターで客席を確認すると、僕の単独では見たことのない数のお客さんで客席が埋まっていました。

その光景を見て、鼻の奥がツーンとしたままオープニングで舞台に出ていって、必死でネタをやってる内に、あっという間にほぼ満席の単独ライブは終わりました。

その打ち上げで、

「もう次はNGKでしょ」

という言葉が出てきました。
それは「いつか達成したい夢」という感じではなく「すぐ次の現実」という熱を帯びた言葉でした。

そして、去年の7月始め。
マネージャーとの面談で「NGKで単独ライブをやりたいです」と伝えました。

舞台に出ていった瞬間出迎えてくれた沢山のお客さんの光景に、これまでの事が走馬灯のように思い出され、あの長い長い長い時間が一瞬にして報われたような気がしました。
そして、羨ましかったり悔しかったり情けなかったりしたあの時のドロドロした気持ちを、万雷の拍手の音が浄化してくれました。
恥ずかしながら、芸人を20年やってきて初めて感じた喝采でした。

やっとここまで辿り着けた。
まさか辿り着けるとは思わんかった。
一年前には完全に諦めて、最後にしようと思っていたのに。
まさかその一年後に夢が叶うとは。こんな景色を見れるとは。
これってほんまに現実?
おもろ。
思ってるより人生おもろ。

色んな思いが駆け巡って言葉に詰まり、手を振る事しかできませんでした。
直前までオープニング何喋るか決まってなくて、フワフワしていたというのもありますけども。

たまたま、「必要以上に客席に手を振り続ける」という営業用のつかみを持っていて良かった。

NGK単独なんて、別に珍しい事ではありません。
たくさんの芸人がNGK単独をやっていますし、なんならもっととんでもなく大きなところでやってる芸人もいっぱいいる。
そんな、数多のライブの中の一つに過ぎません。

しかし、僕の中では紛れもなく「大事」なライブでした。
20年かかってたどり着いたNGK単独が終わってしまうのが嫌で、エンディングで最後の挨拶をするのが嫌なくらいに。 

皆さんのお陰で、大事で最高な単独ライブになりました。

改めて、今回劇場や配信で観てくれた皆様、本当にありがとうございました。

そして、ずっと同じ場所で足踏みしてる頃から、変わらずに応援し続けてくれている皆さん。
皆さんがずっと来てくれてなかったら今回のNGK単独は絶対に存在していません。
あの、もがきながら単独を続けていた日々が確実に今の地盤になっています。
ありがとうございます。

今、NGK単独という自分の中で一つのクライマックスが終わり、次はどうすれば良いか、少し虚しい気持ちはあります。

でも、まだまだこれからやりたい事もたくさんありますし、何よりも改めて「単独ライブにお客さんが集まる芸人」を目指していこうと思います。

そしてまたNGKで単独ライブができたら良いなぁ。
その時は今回よりもさらに良い内容で、さらにたくさんのお客さんに来てもらえるように。

そうなれる様にこれからも頑張ります。

ヒューマン中村20周年単独ライブ「大事」

ありがとうございました。

また次の単独ライブでお待ちしてます!

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