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地底の祈りはどの方角へ

地球の奥底奥底奥底の、話。 僕たちの祖先は地上の災厄を逃れ、何代にも渡り苦労の時代を重ねて、ようやくここに居場所を築いた。 今や地上に最も繁栄する生物よりも多くの仲間たちが暮らしていると思う。(多分) しかし最近何かがおかしい。 僕たちの生活を照らす恵みの太陽苔が、その輝きに鈍さを見せている。 そして時折、はらはらと足元まで落ちてくることがあるのだ(僅かな量ではあるけども)。 この世に形を持つもの、みな、役目を終えるときが来ることはわかっている。 そもそもが、僕たちの信仰は永

    • あの水面が見えるのならば

       風が丘の表面をやさしく撫でている午後、柔らかな草の上に私達は座っていた。西の方を見遣ると、光を反射させてキラキラと輝く水面が見えた。海だ。海の青と空の青は混ざることなくそれぞれに美しい。なんて穏やかな日だろうか。 「こういう日を分け合っても惜しくない人と一緒に過ごせる日々を待っていたんだ」 「私も」 より肺の深くまで呼吸が入ってくるような感じがして、気持ちが落ち着くのがわかった。両脚を伸ばして身体を楽にさせる。 「よくある質問をしてもいい?」 伸ばした足の上に、そばの草から