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(第24回) でべそのすべて その⑤ 巨大臍ヘルニアの手術法

(第23回) でべそのすべて その④ 偶然からの発見 からの続きです。

今回は、手術の方法に関しての説明です。

僕の手術法は、
佐伯 勇:巨大臍ヘルニアの治療戦略 臍の外科 Ⅱ疾患各論 臍ヘルニア/臍ヘルニアの手術 p55-58, 2018.
として、「臍の外科」という本の一部に載っているものであり、この本から一部紹介という形になります。

臍の外科という本があることからもわかる通り、臍ヘルニアの手術法には非常に様々な方法があります。
…というと誤解がありますね。
実は、通常の臍ヘルニアに施行される手術法はほぼ1種類です。
臍下部弧状切開といって、出っ張っている臍の下縁に沿って切開し、ヘルニア門となっている開いている臍輪を閉鎖し、凹んだ臍を形成します。
これをしたことのない小児外科医はまずいないでしょう。
しかし!
巨大臍ヘルニアに施行される手術法がめちゃくちゃいっぱいあるのです。
巨大臍ヘルニアというのは、坂本らや僕の定義では臍縁横径が20mmを超えるもの。
こんなおへそです。


巨大臍ヘルニア

このようなおへそに対して、普通のサイズの臍ヘルニアに行う臍下部弧状切開を行うとどうなるか。
ヘルニア門の閉鎖は可能ですので、臍が出っ張ることはなくなります。
凹みも形成できるでしょう。
しかし、臍を小さくすることはできません
なので、「なんか不格好なおへそ」のままになってしまうわけです。

この問題に立ち向かうべく、多くの小児外科医や形成外科医が頑張ってきました。
代表的な方法としては鬼塚法や、slit-slide法、cap inversion methodなどがあります。
(これらの方法の詳細は、本格的な手術書にゆずります)

僕も様々な手術書を読んだり、学会での報告を聞いたり、見たりしながら最適な方法を求めて研究してきました。
例えば、形成外科でよく施行されている、臍を縦に切開して小さなおへそを作り上げるこの術式。


術前(9歳) 30mmを超えるおへそ

こちらが術前。メジャーを置いていなかったがくやまれますが、臍ヘルニアとしては非常に巨大で、指が2本余裕で入る穴があいていました。
臍縁横径は30mm以上。普通の最下部弧状切開ではきれいになりません。
そこで、臍を縦に切開してヘルニア門を閉鎖し、皮膚を縦に縫縮後に凹んだちいさな臍を形成しました。


術後1か月

臍縁横径は14mmととても小さくかわいいおへそが出来上がっています。
左右対称で深みも十分。
「きれい!」とおっしゃる方もいるでしょう。
しかし!どうしても臍の外(この場合は上側)に創が残ってしまう…!
なので、僕はこれで満足とはならなかったのです。

日本小児へそ研究会のようなへそメインの学会に行くと、多くの先生方が臍の形成の方法の発表をしています。
みなさん頑張って手術法を考察し、「うちはこの方法で手術をして、こんなにきれいなへそを作っている!」と発表するわけです。
まあ正直なところ、みんな「自分のやり方が一番」と思っていて譲らないんですね。
外科医あるあるです。

なので僕はその頃、論文内で「美しい臍の定義」というものを発表していました
①ある程度以上の深さがある
②臍輪が大きすぎない
③臍内部に色素沈着や肉芽がない
④左右対称である
⑤臍の外に創がないこと
の5要素ですね。
僕以外にこんな定義を作って論じる人は…ご想像の通り誰一人いませんでした。
でもね、みんなが「オレの方法が一番だ」と言っていたら議論にならないじゃないですか。

上にあげた大きな臍ヘルニアの術後の写真ですが、確かに深みもあり、小さくなって左右対称です。変な肉芽もありません。でも臍の外に創があります。
もしですよ。
術後にほぼ同じ形の臍になる手術があって、その手術法なら臍の外に創が残らなければ、患者さんはどちらを選びますか?
100%、創が外に残らない方を選びます。
術式が優れているというのはそういうことです。

そこで僕は、夜な夜な臍の立体構造をイメージしながら、どこら辺から切開していけば臍の中に創を残して自然な形になるかを考えました。
時折吐きそうになりました(病気)。
そして考案したのが、自分の独自の術式でした。

切開部を臍の内部にしてU字型に切り込み、slit slide法を付加する独自の変法。
臍内部U字切開法と名付けています。

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僕の有料記事の売り上げは、基本的に広島大学病院小児外科において小児がんの研究のための基金として使用させていただきます。
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