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消防署を舞台にした長寿シリーズの魅力

2012年から続き、スピンオフも制作されている人気シリーズ『シカゴ・ファイア』。なにがファンを惹きつけているのか、シーズン9の配信を記念して分析していく。

そもそも“シカゴ”シリーズってなに?

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アメリカのTV界は「不評とあらば即打ち切り」が当たり前で、1シーズンクリアしただけでもニュースになるほど弱肉強食の世界。そんななか、シーズンを重ね、根強い人気を誇るのが“シカゴ”シリーズだ。本編となる『シカゴ・ファイア』は2012年に始まり、好評を得て、2014年に『シカゴP.D.』、2015年に『シカゴ・メッド』、2016年に『シカゴ・ジャスティス』というスピンオフも製作。おまけに同じプロデューサーが手掛ける人気シリーズ『LAW&ORDER:性犯罪特捜班』とコラボしたエピソードもあるという大人気ぶりだ。物語はシカゴ消防局第51分署を舞台に、そこに務める消防士&救命救急士たちの人命救助任務と彼らの日常を描いたもの。日本のドラマでも人気ジャンルとされる災害&医療&救急医療ものオール・イン。

展開が速いのに、人物描写が繊細

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このジャンルのドラマだと、主に事件そのものがエピソードの大部分となることが多い。だが、『シカゴ・ファイア』はちょっと違う。もちろん災害や事故で急行した51分署のメンバーが、一分一秒を争う人命救助に挑むパートは、リアルタイム感を取り入れてどれもスリリング。しかも、災害や事故のシーンは、アクション映画級のど派手な作り込みがされている。だが、彼らのパーソナリティにも肉薄し、命を預かる仕事を担う人々の日常や、彼らの間にある関係性や確執なども厚く描かれているのがポイント。メンバーのジェンダー、性別、育った環境はそれぞれ違うため、抱えている問題もバラバラだ。そのどれもに寄り添って、丁寧に描写することで、人間ドラマ部分が冴え渡る。長きにわたり人気を維持するのはここに理由があるといえるだろう。

“ファイア”だけでは語りきれない、スピンオフの存在

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『シカゴ・ファイア』は消防署が舞台。それだけでもシーズンを重ねられる作品になるが、消防署が扱う事件事故には他の専門職も関わる。それゆえに“シカゴ”シリーズにスピンオフが制作された。『シカゴ P.D.』は警察、『シカゴ・ファイア』は医療・病院、『シカゴ・ジャスティス』は法曹界、と消防の現場では切っても切れない他の業種を扱っている。それらスピンオフは独立したシリーズとして楽しむこともできるが、『シカゴ・ファイア』本編とのクロスオーバーもあり、シリーズをまたいだ事件解決総力戦になるエピソードも。当然のことながら、どれもイリノイ州シカゴが舞台となっていて、舞台設定も変わらない。これによって、“シカゴ”シリーズとしての魅力がグンと増し、どのエピソードから観てもハマるドラマとして愛されている。

シーズン9はパンデミック中のシカゴが舞台

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このほどHuluで配信されたシーズン9は、全世界が未曾有の自体に陥った新型コロナウイルスのパンデミック期のシカゴを舞台にしている。誰もが経験したあのパンデミックのとき、もっとも過酷だったのはエッセンシャルワーカーと呼ばれる、医療や防災、社会インフラ維持のために働く人々。51分署の人々全員がそれに当たり、当時の彼らの仕事の裏側を知るのにはもってこいの資料的価値のあるシーズンとなっている(撮影の中断などがあり、他シーズンより短めの全16話構成)。感染予防対策をとらざるをえず、防災救急の最前線である彼らもフルスタッフ勤務が不可能となるも、通常時よりも多忙な状況が続く。もちろんそれだけではなく、ロックダウン下のシカゴでも事件事故は当然のごとく発生。ノーCGガチの爆発炎上シーンなど、驚きの連続だ。

Text/よしひろまさみち

よしひろまさみち プロフィール
映画ライター。音楽誌、情報誌、女性誌の編集部を経てフリーに。『sweet』『otona MUSE』のカルチャーページ編集・執筆のほか、雑誌、Webでのインタビュー&レビュー連載多数。X(旧Twitter):@hannysroom


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