幸せを競い合う戦場、SNS
SNSで自分がいかに幸せかを競い合う『ハピネスバトル』
それは本当の幸せか、偽物か。
現代の闇をテーマに、ある主婦の死の真相を描くサスペンススリラーの魅力を紹介。
SNSの光と影
SNS:Social「社会的な」Networking「繋がり」を提供するService
筆者が初めて利用したSNSはmixiだが、友人とネット上でやり取りすることの楽しさや近況をリアルタイムで知ることができることの喜びが新鮮で、誰が自分のページを見に来たのかが分かる機能『足あと』を頻繁にチェックするほどかなりドハマりした記憶がある。
mixiの流行から約15年、Facebook・LINE・Instagram・TikTok・X(旧Twitter)‥ SNSは多様に姿形を変え、今では私たちの生活の一部として欠かせないツールとなっている。フォロワーや「いいね」の数が気になったり反響が大きそうな投稿をしようとしたりと、人とのコミュニケーションや自身の記録のつもりがいつしか「承認欲求」に繋がり、時に息苦しくなるといった経験は、SNSユーザーなら誰もが味わったことがあるのではないだろうか。
幸せを競い合うSNSバトル
承認欲求が生む、幸せアピール・マウントの取り合い・SNS中毒‥
使い方によっては戦場と化すSNSこそまさに、本作の舞台である。
国内最高クラスの高級マンション”ハイ・プレステージ”。併設する英語幼稚園”ヘリニティ”に通うセレブな園児ママたちはSNS上で幸せぶりを競っていたが、ある日、そのママの一人ユジンが亡くなる事件が起きる。
一方、”おひとり様” の生活を送っていたミホは思いがけずその事件に巻き込まれることに。事件の謎を解くため、亡くなったママの子どもたちの世話を引き受け、ママ友コミュニテイーに足を踏み入れる。謎を追ううちに、ミホはSNSでは幸せに見えたママたちの秘密を知り、幸せそうな家庭の素顔と残酷な過去の真実に向き合うことになるーー。
全員が、容疑者
序盤、最近よく見るセレブによるSNSマウントバトル系のストーリーかと思いきや、2話ラストでママ友の一人が亡くなるという衝撃的な展開を受け、そうかこれはサスペンススリラーなのかと気付く。
SNS上では自分がいかに幸せかをアピールするママ友たちだが、それぞれ人には言えない大きな秘密を抱えていた。
作品を面白くしているのは、ユジンが全ての秘密を握っていて、そのデータを生前USBに残していた、という事実だ。ユジンが亡くなった後、ママ友たちは皆血眼になってUSBを探し、自分の秘密を隠そうとする。全員に秘密=動機があり、全員が怪しいのだ。
ミホは、事件の真相を突き止めようと奮闘し、その過程でママ友たちの秘密も次々に明らかになっていく。一見幸せそうに見える彼女たちは一体どんな秘密を抱えているのかーー。ぜひ注目して見てほしい。
女の強さと逞しさ
本作は、サスペンススリラーである一方、ママ友たちの変化と成長を描くヒューマンドラマでもある。
過去のトラウマから、周囲と距離を置き、静かな生活を送っていたミホ
会社の代表であり、ママ友コミュニティーのリーダー、ジョンア
嫉妬深く、夫に依存している専業主婦、ナヨン
嫉妬と劣等感に苦しむワーキングマザー、ジエ
ジヨンの死が、彼女たちが必死に隠そうとしていた秘密が、少しずつそれぞれの生き方・考え方を変えていく。
本当の幸せとは、家族とは、愛情とは何か。
SNSで必死に幸せバトルを繰り広げていた彼女たちの変化から、その答えが垣間見える。
Text/Namko
▼『ハピネスバトル』の視聴はこちらから
Namkoプロフィール
韓国ドラマ、韓国映画の感想を綴りつつ、渡韓し実際のロケ地を訪れて感じる情熱や躍動感を文字と写真で鮮明に届けている。 X(旧Twitter): @namko1035