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モンスターと戦争とバトルと愛

数々の映画へのオマージュと直球のモンスターバトルを描いた映画『キングコング 髑髏島の巨神

怪獣ファンの夢の具現化!モンスターバースで再度復活したキングコング

ベトナム戦争終結時のアメリカ。特務研究機関モナークは衛星写真から南太平洋の孤島「髑髏島」に"何か"があると睨み調査を開始する。調査に同行するのは元SASの傭兵コンラッド(トム・ヒドルストン)、戦場カメラマンのメイソン(ブリー・ラーソン)、そしてベトナムから帰国する寸前に招集されたヘリ部隊のパッカード大佐(サミュエル・L・ジャクソン)。彼らは髑髏島で驚くべきモンスターたちと遭遇する…。レジェンダリー・ピクチャーズが2014年の『GODZILLA ゴジラ』から始めた怪獣映画ユニバース、通称「モンスターバース」の2作目に当たるのが『キングコング 髑髏島の巨神』です。

作り手の溢れんばかりのオマージュに満ちた「モンスター級」モンスター映画

昔から愛されるキングコングを現代に復活させ、後にゴジラと対決させるための序章となるこの映画。この大役を請け負ったのがインディーズ出身の若手監督ジョーダン・ヴォート=ロバーツです。新進気鋭ならではのフレッシュさと直球のオマージュでこの難題を見事なエンタメ作品に仕上げました。例えば無数のヘリが勇ましく髑髏島に向かう様子は完全に『地獄の黙示録』へのオマージュとなっています。また、巨大クモに襲われる兵士の様子は映画『食人族』から、怪獣スカル・クローラーのデザインは『千と千尋の神隠し』のカオナシからなどなど挙げればキリがないほどです。しかし単に引用しているのではなく、それらの引用元が持つ戦争の残酷さや自然の神秘性など、作品の精神自体も合わせて引用しているのがこの映画の素晴らしい点の一つなのです。

憎むべき敵から生涯の友に…物語の背景にある二人の男の愛の不時着

この映画の冒頭は太平洋戦争の最中に髑髏島に不時着したアメリカ兵と日本兵が争っているとキングコングが現れるというシーンから始まります。この二人の兵士、ハンク・マーロウとグンペイ・イカリは当初敵同士としていがみ合っていましたが、やがて兄弟の契りを交わすほどの仲になります。いつかこの島から脱出するために戦闘機の残骸で船を作っていましたが生き残ったのはマーロウだけだったのです…。この愛と友情の物語がメインストーリーの背景にあることでお互いを理解し尊重することの大切さ、逆境でも諦めない精神力など物語に大きな厚みを持たせているのです。そしてエンディングまで見ると、この映画は誰の何の物語だったのかがわかるという作りになっています。

デカい怪獣とデカい怪獣が全力で戦う!これぞモンスターバースの華!

この映画の様々な特徴を挙げてきましたが、最も重要なのはモンスター同士のバトルをしっかり描いたことです。キングコング以外にも様々なモンスターが登場し、壮絶なバトルを大ボリュームで繰り広げます。そしてもう一つがバトルのケレン味。「トリケラトプスの頭蓋骨から機関銃を掃射したい」「ガスマスクを付けたトム・ヒドルストンが日本刀で敵を薙ぎ倒す姿が見たい」「コングが『片腕カンフー対空とぶギロチン』みたいに鎖で戦うのを見たい」といった作り手の願望を本当にカッコいいものとして映像化しています。このモンスターバトルの特盛と濃いケレン味がモンスターバースを盛り上げる弾みになったのだと思います。実際にこの"髑髏島スピリッツ"が後続作品にもしっかりと受け継がれているのです。

Text/ビニールタッキー

ビニールタッキー プロフィール

映画宣伝ウォッチャー。ブログ「第9惑星ビニル」管理人。海外の映画が日本で公開される際のおもしろい宣伝を勝手に賞賛するイベント「この映画宣伝がすごい!」を開催。Twitter:@vinyl_tackey