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正しいことがしたい人たちに贈る応援歌

弱っているときこそドラマは最高の処方箋。前向きになりたいならオススメは『ファーストペンギン!』だ。実話を基にした革命の物語は、胸の迷いを吹き飛ばしてくれるはず!

私たちは自分の信じた通りに生きていい

©NTV ©坪内知佳

正しいことがしたい。それだけなのに、それだけのことが日本ではものすごく難しい。前例がないから。決まった慣習があるから。出る杭は打たれるから。そう言って、声を上げようする人の口を塞ぐ人がたくさんいる。

でも本当にそれでいいのだろうか。それで世の中は良くなるのだろうか。みんなが疑問を抱いている。動き出さなきゃいけないと気づきはじめている。

そんな時代の空気を象徴するかのように誕生したのが、『ファーストペンギン!』だ。

閉鎖的な漁業の世界に風穴を開けた、ある女性の物語。その行く手には様々な障害が立ちはだかる。だけど、彼女はあきらめない。“わきまえない”彼女の強さに、私たちは自分の信じた通りに生きていいと勇気が湧いてくる。

これは、正しいことをしたいすべての人に贈る応援歌だ。

理不尽と戦う和佳に喝采の握り拳を!

©NTV ©坪内知佳

主人公は、シングルマザーの岩崎和佳(奈緒)。縁もゆかりもない港町へ移り住んできた和佳は、お金を稼ぐために、漁船団の社長・片岡洋(堤真一)からの依頼を引き受ける。その内容は、過疎化の進む浜の立て直し。ここから、和佳の革命が始まった。

本作最大の魅力は、主人公の和佳。昔から理不尽が許せない和佳は、高校時代に校則をめぐって教師と対立したことも。でも、そのときは結局先生の 顔色を気にして誰も味方をしてくれなかった。

正しいことをしようとしたら、のけ者にされる。そんなことは、和佳がいちばんよくわかっていた。

でも、黙っていたら世の中は変わらない。第1話のラストで放たれる和佳の啖呵はもう爽快の一言! 理不尽を前に、下唇を噛んだ経験のある人なら、 きっと和佳の啖呵に喝采の握り拳をあげるはずだ。

和佳たちの挑戦は、未来への希望だ

©NTV ©坪内知佳

和佳が立ち向かうのは、漁師という男社会。権力に媚びへつらい、長いものに巻かれる構図は、きっと日本のあちこちで見られる光景だろう。

男同士の結託を突き崩すのは、意志ある女性たち。漁業の6次産業化に向け孤軍奮闘する和佳にエールを贈るのが、同じく男社会である官僚の世界で戦う農林水産省職員・溝口静(松本若菜)だ。作品に通底するフェミニズムとシスターフッドに励まされる人も多いはず。

その上で、男VS女の単純な対立構造に終わらず、連帯の輪が性別を超えて広がっていくのが清々しい。最初はわからず屋の漁師たちにイライラもするけれど、対話を重ねながら理解を深めるうちに、すっかり愛しく思えてくる。梱包ひとつろくにできなかった漁師たちが、和佳と一緒に完璧な発送システムをつくり上げていく姿は、さながら未来への希望だ。

あなたは“ファーストペンギン”になれるか?

©NTV ©坪内知佳

この国には、既得権益にしがみつきあぐらをかいている人たちがたくさんいる。そして、既成概念に囚われ、やらない理由ばかり探すのが上手くなっている人たちもたくさんいる。今、こんなにも息苦しいのは、そんな既得権益や既成概念にがんじがらめになっているからだ。

このまま逃げ切れる世代ならそれでいいかもしれない。でも、そうじゃないなら、いつまでも見ないふりをしていたら、あとで自分が苦しむだけ。だったら、その前に動き出さなくちゃ。そう『ファーストペンギン!』は背中を叩く。

きっと本作を見たら、自分も立ち上がらなければと全身が熱くなるだろう。その高揚感が、心地いい。未知なる大海に最初に飛び込む“ファーストペンギン”になれるかは、このドラマを見終わったあとの1人ひとりの意志と行動にかかっている。

Text/横川良明

横川良明(よこがわ・よしあき)
1983年生まれ。大阪府出身。ドラマ・演劇・映画を中心にインタビューやコラムなどを手がける。著書に、『役者たちの現在地』(KADOKAWA)、『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』(サンマーク出版)がある。Twitter:@fudge_2002

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