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名作製造機・バカリズムの才気が炸裂!

名作『ブラッシュアップライフ』のチームが再結成! 奇才・バカリズムの最新作は、まさかのサスペンス? 中毒性200%の魅力を存分に語り尽くしたい。

タイムリープの次は、クライムサスペンス?

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2023年ナンバーワンドラマと大絶賛を浴びた『ブラッシュアップライフ』。視聴者からの熱いラブコールに応えるように、その制作チームが早くも再結集。新たな傑作を世に送り出した。

それが、この『侵入者たちの晩餐』だ。家事代行会社で働く亜希子(菊地凛子)と恵(平岩紙)。低賃金、悪待遇の会社に不満を持つ2人は、社長の奈津美(白石麻衣)が脱税をしており、3億円ものタンス預金を自宅に隠していると聞きつけ、友人の香奈恵(吉田羊)を巻き込み、3人で社長の邸宅に侵入。タンス預金を盗み去ろうとする。しかし、そこから3人の計画は思いがけない方向へと転がっていき……。

次々と明らかになる展開に拍手が鳴り止まぬ本作。きっと観れば、バカリズムらしい練り尽くされたシナリオに翻弄されること間違いなしだ。

バカリズムの女子トーク&モノローグは名人芸の域!

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トップシーンは、今まさに計画を実行しようとする3人の姿からスタートする。ダークなカラーグレーディングに、緊迫したトーン。女同士の軽妙なやりとりが笑いをさらった『ブラッシュアップライフ』とは一転、シリアスなクライムサスペンスが始まるのかと思いきや、そこはバカリズム。

ひとりだけ泥棒丸出しの格好をしてきた亜希子が、服を着替えに帰るのが面倒くさくて、恵と香奈恵に洋服の取り替えっこを提案したり。にじみ出るとぼけた人間味に、気づけば笑いが止まらなくなる。
特に、奈津美の自宅に侵入してからは、まさにワンシチュエーションコメディの様相。亜希子×恵×香奈恵の繰り出す女子トークと、脱力感ある亜希子のモノローグはもはや名人芸の域。会話劇の名手・バカリズムの才能と、3人の実力派女優の妙味を存分に味わってほしい。

怒濤の伏線回収に釘付け。気づけば虜になる面白さ!

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しかも、そんな笑いの数々がただのネタではなく、後半に向けての伏線になっているから爽快感も段違い。あの一言が、あのアイテムが、思いがけない形で本筋に絡んでいき、ストーリーを大きく展開させていく小気味良さに、ただただ唸らされてしまう。

奈津美の自宅に隠された“秘密”が明らかになってからは、もうノンストップの面白さ。視点が変わるたびに、今まで見ていたストーリーの印象がガラリと変わる痛快さは、騙し絵のごとし。今やバカリズムは“脚本界のエッシャー”と言っていいだろう。

だからこそ、観終わった後に必ずまた最初から観返したくなる。そして、散りばめられた仕掛けの数々に「ここも!」「あそこも!」と興奮しっぱなし。この快感にハマったが最後。きっとあなたも本作の虜となっているはずだ。

お金は盗める。でも、友情は盗めない

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そして、『ブラッシュアップライフ』同様、本作の根底にあるのは“シスターフッド”であることがまた心地いい。

亜希子も恵も香奈恵も決してきらびやかな人生を送っているわけではない。3人ともにバツイチ。食卓には、割引シールの貼られたスーパーのお惣菜。片や奈津美は高級レストランでの食事をSNSにアップしている。侘しい気持ちになるのも無理はない。

でも、そんな彼女たちがちゃんと自分の幸せを掴み取るところまでを描いてくれるから、観終わった後は軽やかな気分になる。

お金は簡単に盗み取られるけれど、友情はどんな名泥棒でも盗めない。ちょっとおかしな泥棒計画を通じて3人が育む絆に、私たちもまた明日から始まる地味でささやかな日々を頑張って生きていこうという勇気をもらうのだ。

Text/横川良明

プロフィール 横川良明
1983年生まれ。大阪府出身。ドラマ・演劇・映画を中心にインタビューやコラムなどを手がける。著書に、『役者たちの現在地』(KADOKAWA)、『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』(サンマーク出版)がある。X:@fudge_2002


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