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SOTUSを読み解きたい 2

さて、ちょっと休んで元気を出して

SOTUSs、シーズン2への流れとしては
「ご褒美」
大きいと思う。調教動物と調教師。ペットと飼い主の約束事。動物側はそれで飼い主側との絆を確認する。調教師は絶対にそれを忘れてはならない。それは食べ物が多いけど、別に動物側は食べたくなくても褒美としてのえさを欲しがる。というか、その一連の流れそのものが信頼の証だから、あって当たり前、ないのはあり得ない。と思っている。(俺は調教中のイルカが習ってる芸をした後、嬉々として口を開けて魚の切り身を投げ入れてもらって、そしてすぐ、水中でそれを吐き出すのを見たことがある@油壷マリンパーク)

たとえば、犬の頭をなでるという行為は、それはそれで大事だけど、日常の親愛の表現として既にあるから、「飼い主の指示に従ったご褒美」としてはそれじゃ足りない。ご褒美としてはっきりわかるものとして「食べ物」、が必要になる。
ってことを踏まえたうえでのKのおねだり。
ご褒美の設定は、Aにも「おまえはいつもご褒美を欲しがる」って言わせているくらい明確な意図を持った演出。

ところで、Kって拗ねないよね、2-7の川辺の「距離云々」のシーンも拗ねているわけじゃない。戸惑って自信なくしているだけ。
拗ねるという行為は「愛されている」っていう自信(もしくは思い込み)が前提にまずあって、で、そう思っていたのに理不尽に低く扱われた、と思う状況で生まれるものだよね。
KにはAに愛されている自信がなかなかもてないから拗ねる前提がない。

そのKが2-4で新入生を連れて行った海でのこと、
KはAが仕事で来られなくてつまんないなあ、って一人でワーガーの仕事ほっぽり出して波打ち際で座っている。そこにA登場のサプライズ。
Aは「遅くなってごめん」「リーダーとして頑張っていたお前の最後の姿を見られなくて残念だ」「お疲れ様、まだ勉強も大変だけど、お前は立派なヘッドワーガーだ」。と、至極まっとうで心のこもったねぎらいの言葉をかける。

なのに、
KはAの精いっぱいの言葉なんか聞いちゃいない。Kにとってはその全ての言葉はご褒美への流れ。Prelude to a Kiss。たとえれば、飲み会での乾杯のあいさつが長くて、グラス持って待たされている方は「早くスピーチ終われよ」ってそわそわイライラしちゃう感じ?あれと同じ。
Kはみんなにとっての立派なヘッドワーガーになりたかったわけじゃない。A一人が評価してくれて、ご褒美をくれることだけを期待してここまで頑張ってきた。
K「ご褒美は?」A「そんなものないよ」K「もちろんありますよね?」とキスを迫る。
が、そこにブライトの邪魔が入って中断。

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「もちろんありますよね」

僕とあなたの関係はそういうものですよね?僕はあなたに服従を約束したんだから、あなたはその対価をくれるはずですよね?そうやって僕たちの関係は続いていくんですよね?
いやいや、すげえセリフだなあ。
このセリフを吐くときのKは、Aをからかっているときの顔でもないし、あわよくばキスしちゃえるかも、と可愛い子ぶってしたたかに甘えている顔でもない。
しっかりとした自信に裏付けされた堂々とした表情。
誇りをもって正当な対価を要求している顔。
(前に腐Gがほぼ同じような言葉でKの表情を書いたのはシーズン1 ep.7の旗の試練のラストステージ。そのシーンとここが違うのは二人の関係性が違うからだよね。シーズン2ではKは自分がAの恋人であることを前提に行動している。なんでそんな自信が持てるのか「非モテ腐G」にはわからないけど、基本Kは常に自信のあるキャラである。そしてその自信はAにかかるとしょっちゅう転覆させられるw。)
Kなりの(自分勝手な)シナリオでは、このタイミングでこそKはAに評価されてしかるべきだし、AはKを評価し、存分に褒美を与えるべき案件のはず。だって、ヘッドワーガーの仕事を立派に果たし終えたんだから。Aに認められるためにずっと頑張ってきたんだから。
なのに、「ご褒美は?」に対して「そんなものないよ」。
Kにしてみればひどい話。

で、この後のブランコで、「先輩は仕事だから今夜中に帰るというし、結局ご褒美のキスはさせてもらえそうにないし、、、」と、珍しく拗ねるK。
ここは、シリーズ作品中唯一「そばにいるAから顔をそむけたままのK。」
なのに、Aはニヤニヤほくそ笑んでる。K推しの腐GはAを許さないっ (-_-メ)
この二つのシーンには、2-1
K「活動の始まりから終わりまでにリーダーとして一人前になれたら、僕にご褒美をくれますか」
A「いい仕事をしているかどうか再評価してから考える」
K「恋人としては?」
A「それも再評価しなおさないとな」
っていう伏線があるんだけど、
シーズン1でAが感じていた重圧を3年になったKだって当然感じていて、で、頑張ったのに、再評価されたご褒美が、これだけですか?、、っていう話。
だから、いつものKなら、このあとブランコを先に降りたAに「ピアティーッ」と甘えた声を出しながらしつこくまとわりつくはずなのに、ここでのKは立ち止まって間を置く。つまりKは結構寂しかったはず。相当のダメージ。(Aは気づいちゃいないけどね、)(で、2-13に続くw)

Kはご褒美をねだることによって、「ちゃんとあなたの支配下にいます」っていう意思表示をしているのに、Aにはそれは伝わらない。
はっきり言えば、KがAを支配したっていいのに、そして、それはKにとっては多分造作もないことなのに、KはあくまでAの下にいて、Aに従い、その証としてのご褒美をもらう立場でいようとする。(しつけのいい犬だから?(凶犬だけど)、それともヘッドワーガー時代のAをリスペクトしてるから?・・うーん、、、ヘッドワーガーとしてのAに萌えてるから、くらいが正解なのかも。だって、リスペクトしてたらもっといい子になってAのいうこと聞くよね?)

いずれにせよ、Aにはその「Aの下にいたがるK」の思考回路が理解できない。2-1の「再評価」のくだりだって、きっとAは覚えちゃいない。だから、AにとってはKは自分を振り回す厄介な存在。AはKにこれだけ振り回されちゃっているんだから、いっそKの支配下になっちゃえば楽なんだろうけど、そうはならない。それは、Aのプライドが許さないからじゃなくて、Kが許さない。KはあくまでもAの従順(w)な配下であろうとする。いっそ、Aを支配してあげた方がAも幸せだっていうことは明白なのに、Kは「あなたは主人なんだから、ちゃんと主人の役目を果たしなさい」とAに圧をかける。

攻め(BL用語ですねw)なのに、受け(腐界とゲイの共通語ですねw)に「僕を征服しなさい」と迫る。なにこの屈折。なにこの面倒くさい奴。
ゲイ用語で「オラネコ」とか「Mタチ」とかあるけど、そんな、かつて言葉にされた属性にカテゴライズされないのがK。名前を付けるとしたらきっと「Sタチワンコ(凶犬)」。しかもそれでいて品行方正好青年ってバカじゃないの?こんな属性ないよね?なんか、クリストファー・リーブのSupermanに萌えてた時のことを思い出しちゃう。
ってところで、あ、そうか、スーパーマンと同じ構図かも。と腐Gは気づく。
スーパーマンって人はロイス・レインに対してはまるっきりワンコだよね、性癖は(多分w)Sじゃないけど。でもロイス・レインは無自覚だからクラーク・ケントに冷たい。
そして、スーパーマンにはロイス・レインに迷惑をかけないでおこうと自制する嗜みがあるけど。
でも、それはクリプトン星から来た自分を隠さなきゃいけないというブレーキがお膳立てされているからだよね。 (萌えたい方は[Changed Pitch] - Superman Ending Smile - YouTubeへどうぞ。)
SOTUSのKにとっては男同士であるっていうのは(Aさえ許してくれれば)障壁にはならないっていう話なんだね。(だって、犬だから。男の飼主になつくオス犬。普通でしょ?。うれしかったら飼い主に抱きついて顔だろうと、どこだろうと舐めまくるよね)

(でぇもねぇ、前述の「ご褒美は? もちろんありますよね」のシークエンスでは、キスを迫るKにどぎまぎするAをアップで見せておいて、で、ブライトに中断された時、カメラが引くとAの手はKの腕にあるんだよねえ~(34分53秒)。拒否する気なら、手はそこじゃないでしょ?って思うよね。Kのやる気満々の顔が中断された表情のあとにけっこうおいしい絵柄があったのwむふ♡)

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で、
あと、s全体にわたって大きいなと思うのは、シーズン1のep.14。屋上での先輩感謝祭。おそろいのブレスレットをみんなの前でつけあったところで、ブライトに「恋人同士みたいじゃん?」と、からかわれて、
嗜みのあるKが「いや、、」と言っている、のにかぶせて、A「悪いか、付き合っているんだよ」
!!OMG
こんな素敵なカミングアウトされちゃったら単純レトリバーは自信持っちゃうし、「堂々としていていいんだ」、って思っちゃうよね~。ってことはこのシーンはシーズン2全体を通して繰り広げられるKの執拗な「好き好き攻撃」と、そして、2-12「大学時代と社会人がそんなに違うとは思いません」にまでつながるんだな。

ということで、このシリーズを通してKがAに対して見せる狂気ともいえる執着について

もちろん、このドラマはシーズン1のep.1からep.14まで種明かしをせずに、Kの強引さで引っ張っていく構成なので、その執着についての説明描写は、「いいわけ」、下手したら「後出しジャンケン」と言われても言われたほうは、してやったりってところなんだろうけど、
だとしても、Kの執着のすごさとその理由については触れておきたい。
っていうか、普通、あんなん引くでしょ?強引すぎるでしょ?自分に自信ありすぎるでしょ?特にシーズン2での彼のしつこさというか、押しの強さというか、普通にたじろぐレベル。シーズン1 ep.14の素敵なカミングアウトがあったとしても、男女でも引くわ、っていうKの圧。

で、えっとぉ、まず、
人が恋に落ちたり、ギャンブルに狂ったり、沼にはまったりw、するのって、「自分の中の欠落」に気づいたときなんだよね。気づかずにいられたときは平気だったのに、なにか、(Ex.素敵な人だったり、競馬だったり、タイBLドラマだったり)が現れた瞬間、その欠落に気づかされて動揺し、そしてその現れた対象を、欠落を埋めるものとして狂おしく求める。
(まあ、実生活では、大抵は一旦狂った後、破綻しそうになっても踏みとどまって、そしてそこから学び、次からはもともと自分の欠落がわかっているから動揺せずに日常を続けることができるようになるんだけど。閑話休題。)

で、じゃあ、K。彼の欠落とは何か?
容姿端麗、好青年、成績優秀、裕福、etc. 一体どこに欠落が?って話なんだけど、
まあ、あくまでBLなのでこの辺を追求するドラマではないからスルーしてもいいんだけど、でも、SOTUS。侮っちゃいけない。
後出しジャンケンは、「家庭環境」。立派な父と優しい母、の立派さ、優しさ、が彼の足かせになっていたんだろうと思えるところがシーズン1.2を通して3か所見られる。

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まず、シーズン1 ep.14 二人の出会いの前の回想シーン。学内回廊で一人立ち止まるK。周りを歩く人は皆それぞれの目指す場所へ忙しく歩を進めるために彼をよけて行く。このシーンは美しい。奥行きのあるシンメトリーの構図で上品なハイトーンの絵柄。集中線の中心に立ち尽くすK。短いけれど力が入っている美しい絵。
このスタティックな構図の中で母と携帯で話すKの様子は少しつっけんどんで、イラついているように見える。
その後高校の学友エムと会う。エム「経済学部じゃなかったのか?」K「家業を継ぐには工学部のほうが役に立つから」「好きでもないことを4年も勉強するの大変だぞ、親と話してみれば?」そういうエムに、首を振り、あきらめた表情を見せるK。

この直後にKはAに話しかけられて、それでAに執着するようになるわけだから、ってことは逆に言えばここでのKの悩みは相当深かったんだな、と、そして、Aに話しかけられて自分の意思を固めたことはKにとっては相当重大な出来事だったんだな、ということが偲ばれる。
KにとってAとの邂逅がなんでそれほどまでに大きいものだったのか。それは、つまり、1杯の水の価値が砂漠の旅人にとってはとてつもなく大きいということと同じなのかもしれない。Kには、あの時、自分を肯定し、背中を押してくれるものが不足していた。誰かの優しい言葉に飢えていた。そこに現れたA。なんの利害関係も損得勘定もなしに、無責任な部外者だからこその客観的な正論と、「君を歓迎する」という肯定。砂漠の中にいたKに与えられた一杯の水。
1のep.14や、シーズン2の後のインタビューシーンでKはそれを「運命だ」と、「しかるべき時にしかるべき人が現れた」と表現している。
(言わずもがなのこと言っちゃうけど、「運命」だと思ってるのはKだけだからね。「人生の重大な方向性を決定するもの」だなんて自覚は面接試験のために来た高校生に声をかけたAにはないんだからね。)

この一連のシーンで、親に言われてしぶしぶ志望学部を変えたのはわかる、が、ここではそれだけ。
具体的に親との関係性が見えるのはsになってから。

2-5実家に寄った時に母に甘えるK。父の見ている前で、母が喜ぶように甘えて見せるK。
全体の中でここだけ他のKのキャラと違う描写。(前述ep.14ともつりあわない。今のAは工学部進学に満足しているから、もともとこういうキャラを親に見せていたのだということなんだろう)
母「遅くまで帰ってこないから、てっきり恋人と離れたくないんだと思ったわ」
K「離れたくない人がいるとしたらそれは母さんですよ」
「離れたくない人は母さんだけ」という嘘、というか社交辞令。彼は母親に対して礼を尽くすために甘えているが、本当のことは何も話していない。心を開いてはいない。

こんなシーン、ストーリーに必要?わざわざKの嘘を誘導するようなことを母親に言わせる必要ある?
Aに語っていなかった実家の話が後の展開につながるから、っていうだけなら「離れたくない人は母さんだけ」なんて台詞はいらないし、母親にしなだれかかって猫なで声を出す20歳の男なんていうなさけないものを見せる必要はない。そして、この情けないシーン、気色悪いKのこの作品の中での存在が成立するのは、それがKの本音ではないから。(ってか、本心だったらやばいから見せない、もしくはそっちよりの違う話になるよね?)
2-11 K「グレーグライさんは熱心な人が好きで、それから甘え上手な人に弱い」っていう台詞につなげるためだとしても、ここまで甘えるKを見せる必要はない。
だから、ここはあえて狙った演出なんだろう。父の前で母に甘えるシーンには意味があるんだろう。
さっき、「父の見ている前で、母が喜ぶように甘えて見せるK。」って書いたけど、「父の見ている前で、父と母が喜ぶように甘えて見せるK」に訂正する。

「グレーグライさんは熱心な人が好きで、それから甘え上手な人に弱い」という台詞からは、Kは父親のことをきちんと客観視して冷静に分析できていて、Kの両親への態度は、心の底からの甘えではなく、計算された「ふさわしい態度」「あるべき姿」であったことがくみ取れる。
2-5 K父「うちで研修してもいいんだぞ」 K「僕は他で研修したいんです。」
そのあと、とってつけたように「新しいことの勉強になるし、うちの会社でも活かせます」と言い訳めいたわかりきった話が続く。そこで父はAの会社を勧めるが、この時点では、Kはそこからの研修受け入れ許可はもらっていない。Kは、Aの会社に行きたいからではなく、父の会社での研修を望んでいない。
2-11でKの会社に出向いたK父は優しくて、物わかりがよくて、とってもいい人だよね。
K父がまともないい人であるってことは1の ep.6のAの部屋でAを介抱するときの会話にも「高いフィギュアは父に買ってもらえなかった」っていう台詞があることからもしのばれる。いい人だからこそ、Kは反発できない。で、圧は重い。ってとこ。

で、友人情報なんだけど、「タイでは家の中にキッチンがないのが普通。使用人が作って持ってくるから」なんだって。そう考えると、2-5でK父が「母さんはお前が帰ってくると聞いて張り切って日の入り前から料理をはじめたんだぞ」という台詞の意味も重さが変わるよね。
1のep.14、面接試験の前、母と話すKの「母さん、自分で帰れるよ、工場の仕事で忙しいでしょ」の意味も、工場の仕事って、母さんが工場で働いているわけじゃなくて、経営者の妻なんだよね?じゃあ、お抱え運転手を息子の受験会場に迎えに行かせるくらい簡単だよね?でも、自分で迎えに行くって申し出て息子に断られたんだよね?
ってことになる。

ということで改めて、
1のep.6 Aの部屋でアイロンがけをするK。「いつも母の手伝いをしていて癖なんです。」
これ、言葉通りにとっちゃいけないだろう。Kの母はアイロンがけなんかする必要はないだろう。でも、Kは器用にアイロンをかける。卵焼きも焼けない男の子がアイロンがけをする。
これって、つまり「母の手伝い」じゃなくて、「母の躾」。「お母様のお仕込みがよろしいのね」という言葉で語られる類の話。(わからない人、「魔女宅」思い出して♪)
では、なぜ、K母は息子に卵焼きの作り方を教えずにアイロンがけを仕込んだのか。
それは、「紳士たるもの、腹が減っても困らないけど、服装はきちんとしていなければいけない。」っていうイギリス的な教育なんだと思う。

将来会社を背負って立つ息子に教える「上に立つ者の素養」。何かあった時、誰もアイロンがけをしてくれる人がいない場所であっても、きちんとした姿を人様には見せなければいけないという帝王学
だから、わざわざ「卵焼きが焼けない」というどうでもいいエピソードを、ep.10の深夜の告白の前の食事シーンでKに言わせ、ep.11、Aが片思い相手ナムターンにKのことを話すシーンでもAの口から語らせたんだろう。ついでに言うと2-8のSPECIAL SCENEでもAに言わせてる。
卵焼きは焦がしちゃう男の子だけどアイロンがけは仕込まれている。そのコントラストが、Kの「お母様のお仕込み」

立派な父と優しい母。申し分のない環境で丁寧に育てられた男の子。完璧な環境の中で完璧であることを求められ、それにずっと応えてきたK。
2-8。とっても厳しいパッカー部長のところにお使いに行ったときもパッカー女史に「君みたいに格好良くて、話し方も丁寧なうえに礼儀正しい子」。と褒められ、可愛がられる。Kにとってはパッカー女史タイプの人に好かれるのは息をするみたいに当たり前なこと。

ってことを踏まえたうえで、
2-9、部長に「君なら将来安泰だよ」と言われたKがAに「聞きました?僕は将来安泰ですって、僕と将来を共にしませんか?」とほざく視聴者サービスのイチャラブシーンがあるのだが、これは、ここで喜んではしゃいでいるKの心中に、父の会社を継がなくてもやっていける、という自信が芽生えたエピソードである。と読むべきだろう。親の会社でもないし、親が勧めた大学の工学部でもない。家電メーカーの購買部という畑違いの場所、親の影響力の及ばない場所でAと二人で頑張って認められた、という自信。Kは、Aと一緒だったらどこでも頑張っていける。つまり、KはAとの関係性において、初めて「素の自分自身」に自信が持てたということ、Aとの関係性こそが自分のアイデンティティや立ち位置の基準点になるのだと確認した。ということが読み取れるエピソードではある。KはAを追いかけてきたことで、自分の前に新しい世界が広がったと思っている。
ここで珍しくはしゃいでいるK。

褒められ慣れているKは「君は優秀だ。将来安泰だ」という程度の言葉では普通はしゃいだりしない。そんなの当たり前だから。
改めて、シーズン1 ep.3「先輩は僕のことが好きなんでしょ?」。はしゃいでボロ(素)を出したらお調子者が出てきてしまったシーン。KはAにかかわる物事の時にだけ、はしゃいで素を見せてしまう。「僕と将来を共にしませんか」もこの流れではしゃいでいる。
(なんなら、1-ep.4のバスケシーンで決勝点になるフリースローを決めたあと、子供っぽい歓喜の雄たけびを上げて飛び跳ねるKの中坊みたいな様子を思い出してもいい。こんなK他では見られないっすよ。)

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上品で品行方正、上に二人姉妹がいる末っ子長男。非の打ちどころのない男の子。次期社長でいることを幼いころから自然と期待=強要されてきて、それしか知らないまま生きてきた育ちのいい子。誰からも認められ、好かれるのが当たり前。
そんなKにとってAは、もちろん自分が悩んでいた時(面接時)にその悩みを軽く吹き飛ばしてくれた存在ではあるが、それ以上に、これまでプライドを踏みにじられることなんかなかったKを十把一絡げの新入生と同じに扱って罵倒する存在でもあった。
重ねて言えば、今までならKは十把一絡げの中にあっても他より評価されていただろうし、評価されるための行動様式もKは自然に身に着けていたわけだが、その行動様式こそを全面否定され、「ヒーローぶるな」と叱られる。幼いころから身に着けたKのスキル(社会性)はAにとってはSOTUS活動の妨害でしかなく、AはKを目の敵にしているような関係性にもなってしまう。(1のep.3「ヒーローぶるな」)
Kにとって、それは理解できないから、理不尽なことでしかなく、Kは執拗にAに対して自分の存在を主張し、認めてもらおうとする。
「僕はあなたの本当の姿を知っている。今のあなたが僕を認めないのは、それがあなたの本当の姿じゃないからですよね?立場上そんな冷たい態度をとっているだけですよね?僕はあなたに叱られるほどダメな奴じゃないはずです。ちゃんと見てください」という思考回路による確認作業。

犬の群れのヒエラルキーの話だけど、その階級制度の中では、ボス犬の立場は安定していなければならない。これはその群れのすべての犬にとってとても大切なこと。
で、それさえ安定していればボス以外の犬はできるだけボスの近くに安定した自分のポジションを決めようとする。
ep.14の「刷り込み」のあと、圧倒的な力を見せるボスAに腹を見せるのは犬だとしたら至極まっとうな行動。ただ、もちろん、Kは犬じゃないし、犬だとしても相当プライドの高い犬なので、そう簡単に腹を見せて寝転がったりしない。自分のボスになるのならそれなりのヤツじゃないと認めない。
そのあたりのやりとりがシーズン1では延々と繰り返される。

でも、犬と飼い主の話だったら、一歩間違えれば「ペットとして飽きられてしまった犬が、それでもたまに昔の様に遊んでくれる飼い主に全面的な愛情表現を見せる」という悲しい関係性もあるし、ドラマだってそっちに向かう展開になる危険性、つまり些細なことに一喜一憂して勝手に傷つく主人公(K)の話になる可能性もはらんでいる。実生活ではそっちの方が圧倒的に多いはず。なんだけど、ここではもちろんそんな話にならない。Kの力技で押し通す。(👍パチパチ)

そしてシーズン1を通して、Kは、ヘッドワーガーとして弱い自分を鼓舞して、無理に強い人格を演じているAを知る。それを知ったことで、そこに共感するものもあったはず。だってKにも、いつも「誰からも好かれるいい子」でありつづけるために頑張っている=演じている部分があるわけだから。
そして、ここからが大事なのかもだけど、
きっと、基本強いKには元々強いだけの相手には惹かれる要素がない。面白くない。でも、本当は弱いのに強くあろうとするAの姿には、逆に自分にない強さを見出したんだろう。そして、それを「好ましい」と、はっきり言えば「可愛い」と思っている。だからこそ、その「強くあろうとするAの姿」を愛でようとして、「お世話したい」と下僕属性だか下心だかわからない変なことを言いながら暴力的なラブラブ攻撃態勢を取っている。←なんだ、結局、単なる危険なオタクじゃんねぇ、、、好きだけどww
(前述の、海辺のブランコで、普段拗ねないKが拗ねている、の話のあとで、KはAを「リスペクトしているんじゃなくて萌えてるだけなんじゃないか」っていうのはこういうことだね。)

2-8 夕日を望む屋上のシーン。K「どの部署でもあなたはやっていける人だから。僕は信じています。あなたはいつでもベストを尽くすってこと」
ここでKは、「僕はベストを尽くせないけど、あなたは尽くす。だから尊敬する」と言っているわけではない。Kだって、今までずっとベストを尽くしてきた。だからこその言葉。Aへの共感。
だが、その共感は、実は若者の初恋にありがちな「恋の対象を自分と同一視する一方的な想い」でもある。だからKは「Aさえいれば自分の欠落が埋められる」と純粋に、そして勝手に信じてしまう。
その視野の狭さ。その儚い夢は、もちろん、とても美しい。そして危険。
Kがヘッドワーガーをやりたがったのも、Aと同じことをする自分をAに見てもらいたいからだというのが第一目的だとすれば納得できる話。Aしか見ていないKにはヘッドワーガーになって面倒なことを引き受ける理由は他にない。Aに近づくためにKはAの轍を辿る。

さっきも書いたけど、人が何かに狂う時って、「今まで自覚できなかった欠落」を何かのきっかけで気づいてしまった時なんだ、と思うんだけど、
Kの欠落は「家庭環境」、っていうより、「恵まれた家庭環境の中で育ってきた自分自身」言い換えれば「恵まれた環境しか知らない自分」なのかな。今まで培ってきた自分の正しさでは対処できないことに直面して、今まで身についていた自信が揺らいだことなんだと思う。(それって釈迦っぽいともいえる。脱線するから突っ込まないけど)

Aに会うまでの幼少期から高校卒業までKを罵倒する人なんか一人もいなかったんじゃないかな、とは思う。
なのに、基本「出来のいい子」で問題なんか起こしようもないKが、何も悪いことをしていないのに、怒鳴られ、否定される。
こんなのはKにとっては天変地異クラスの大変動。カルチャーショックで、今までの自分を上書きしなきゃ、と思うよね。
恐怖に屈するわけじゃないけど、「なんなの?」って思う。自分が折り合いをつけるべき社会とは違うんじゃないかなと思う。でも、A一人が狂った嫌な奴なわけじゃなくて、伝統あるSOTUS活動であり、A以外の先輩もみんないっしょにやっているわけだから、「なんなの??」ってKの頭が疑問符だらけになるのは当然。(ま、視聴者もだけどね)
1のep.2 エム「なんで一緒に出ていかないんだ?」K「先輩がどうするか知りたいんだ」
もちろん、ep.14の面接の日があるからこその言葉ではあるんだけど、Kにとっては本当にわからないから素直に知りたいと思う出来事だったんだろう。つまり、AのSOTUS指導がKのポリシーだったりスタンスだったりを変える出来事だった。Kの前に今まで知っていたのとは違う世界が広がった。という話。そして、1-ep.3で「ヒーローぶるな、お前がいつでも助けられるわけじゃない」「難題に直面した時、自分で解決できない奴は俺たちの後輩じゃない」というAの言葉。

唐突ですけど、「銀の匙(荒川弘)」の中に、大雪のせいで試験に遅れて成績を落とす主人公に「社会に出たらこんな理不尽なこといっぱいあるから、今から慣れとけ!」と教師が笑いながら言う、というとんでもないシーンがあるんですが、

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勤労・協同・理不尽

SOTUSワーガー側は、この「社会に出る前に慣れておくべき理不尽な状況」を作為的に作っている、という設定なんだよね。その設定自体が相当理不尽だなとは思うけど「今から慣れとけ」って言われたら一理あるから黙るしかない。
ただ、理不尽だってわかっていることを作為的に相手(しかも集団)に強要し続けるのもすごいストレスだろうな、と、K推し腐GもちょっとはAに同情する。なにしろAはまだ大学生なんだから。社会なんか知らないのに社会の厳しさを教えなきゃなんないんだから。

普通にいい子の高校生、Kは、今までは当然親の庇護のもとで育ってきたわけだが、彼が成長するにつれて親の羽に守られていることを窮屈に感じるようになっていた。その彼が巣立つ時に新しい扉を開けたのがA。社会の理不尽さと、「それでも自分を見失うな、頑張れ」と教えたのはA。
だから過去と未来の接点をAという座標に定めたKは今後の自分の歩む道の起点としてAの存在を規定する。

ただ、こっからが普通じゃないのは、もともと強くて協調性もあるKが上書きしたのはAへの気持ち、そして、そこからの執着心ってことなんだね。で、Aはそのとばっちりを受けるwww。

だって、基本SOTUS向きじゃないのよね、Kは。
彼にはSOTUSカリキュラムは必要なかった。なのに、強制的に上書きされちゃった結果が「A先輩が好き。他の人よりずっと頑張っている。僕も頑張ろ!」ってこと。頑張る方向がAだけに向いちゃうのは、Kには今更ほかに頑張るところがないから。
アヒルが卵を温めていたら、中に白鳥の卵が混じっていたっていう話だと思ってもいいかも。
(あ、「刷り込み」って水鳥類に顕著だよね、この比喩で座布団もらえる?ってか、Kは白鳥じゃなくて猛禽類だとは思うけど)

しかし、
Aには自分とKを同一視する要素はない。
Kの強さをAは持ち合わせていない。ヘッドワーガーとしての役割をどうこなすかについても、伝統を守ることしかできないAと、より効果的な方法を提案し実践できるK。こよりの儀式の時、隠れて泣いていたAと、旗の儀式の最中にもAのことを考える余裕があるK。

2-4 海での課外活動も然り。
ギア授与儀式の後、シーズン1 ep.8のAと同じようにKは一人波打ち際。Aの(だよね?)ギアを手でもてあそびながら海を見ている。
でも、Aがヘッドワーガーの時とKの時とでは、一人でいる意味が違う。Aは、一人で頑張ってきて、最後まで一人だったわけだが、Kは「せっかく頑張ったのに褒めてくれるはずのAがいない」ってことを未練がましく思っているだけ。Kには仲間や伝統より大事なものがあるから、仲間から離れて自分勝手に個人の感傷に浸っている。逆に言えば現場放棄しても誰にも文句を言われないことがわかっている強者の特権。燃え尽きていたAとは表面上は同じ行動パターンを追っているように見えても、気持ちは違う。

器が違うことはAにはわかっている。なのに、KはAしか見ていない。Aを自分と同一視し、自分の欠落を埋める必要不可欠なものとして貪欲にAを求める。
Aにはそれは重い。ただ仲のいい友達ではなく、Kの欠落を埋める存在、Kの一部になれとKは迫る。Aには、Kが好きとか嫌いとかいう以前にそれが理解できない。もし理解できたとしても、そして、たとえAがKのことを好きになったとしても、AにはKの欠落を埋めるなんて大それた自信など持ちようがない。

だけど、もう一つ、AとKの違いは、KにはAというロールモデルがあったからこそ強くなれたんだということ。Aにも先輩はいたが、その先輩たちとAはこんな面倒くさい関係を持っていない。Aは先輩の言うことを忠実に守るだけで、先輩の苦悩など知る必要もなかった。
KはAにしつこく食い下がったおかげで、ヘッドワーガーとして行うべきことも見えてきたし、それはK自身の成長にとっても役に立ったはず。Kはそれを自覚している。でも、Aはその件に関しては単なる傍観者。自分からKのためにKに働きかけてKの成長を促したわけではない。

という、この二人の温度差がいつまでたっても煮え切らない二人の関係を一つのストーリーとして成立させ、ただの恋愛劇ではないドラマを作っているんだろう。(あ、なんか腑に落ちた)
(ってことは、トムとジェリーとか、タイムボカンとかの予定調和のエンドレス追いかけっこドタバタ劇であるという見方もできる。)

うん。一応まとまった。
(腐G頑張った!パチパチパチ)

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