散文:電気消し妖精

昨日諸事情で明け方に寝たので、19時に退勤したあとにちょっと寝てしまった。(弊社は今在宅勤務体制なので退勤即寝が可能)

1時間くらい寝て起きたら、部屋が真っ暗だったので、来たのか…と思った。
そう、電気消し妖精である。

電気消し妖精は、電気を消さずに寝落ちした人の部屋の電気をそっと消してくれる、心優しい妖精である。

寝落ち常習のわたしは、よくお世話になっている。
まぁ有り体に言えば正体はただの家族なのだが、電気をつけて寝ると消した時よりぐっと睡眠効率が落ちるらしいので、ふつうにありがたい存在だ。
人間がバイト的にやっている妖精なので、必ず来てくれるわけではないが、そこもまたファンタジックで良い。
電気が消されてなかった時も、そっか昨日は来なかったんだな…と思って妙に納得してしまう。

いつもやってもらっているお返しに、自分でも電気消し妖精をする時がある。
ただ電気を消しただけなのに、妖精と名がついているせいか謎の使命感に包まれ、いい気分になる。双方幸せでいいことづくめだ。

そんな電気消し妖精も、最近ではあるものにその地位を脅かされている。
スマートスピーカーだ。
「アレクサ電気消して」の一言で、消える電気。人々は電気をつけたまま寝落ちをすることがなくなってしまった。
しかも電気を消すだけなく、検索とか電話とか他にも色々なことができる奴らに対し、「電気を消す」というシンプルな仕事ぶりは、あまりに旧時代的だ。消すだけでつけられないし。

ちやほやされるGoogle Homeを見て、自分はもう必要でないと気づいてしまった電気消し妖精は、黙って慣れ親しんだお宅を去るほかないのである。
世知辛い世の中だ…少ない荷物を持った電気消し妖精のさびしげな姿が眼に浮かぶ(妄想です)。

ちなみにうちには、スマートスピーカーはない。
まだもう少し、電気消し妖精にいてもらいたいと思っているからである。

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