散文:思い描きすぎると存在しない論

花瓶をここ何ヶ月か探している。
在宅勤務でずっと家にいるので、身の回りのものを整えたり、飾ったりしたいという欲求のひとつだと思う。
「良いのが見つからない」と「良いのはすでに売り切れている」の繰り返しで、ずっと願いがかなっていない。
一生見つからない気さえしてくる。
ここまできたら誂えてもらうか自分で作ったほうが早いかもしれない。

昔から、花瓶でもコートでもこういうのがほしい!!とガチガチに考えながら買い物へ挑むと、大抵見つからなかった。
なので買い物はぼんやりと大枠だけ決めて、あとはその場の偶然の出会いに任せて買うスタイルになった。
頭の中で詳細に思い描くものほど、なぜかこの世に存在しない不思議。
もっとわたしがお金持ちで、金に糸目をつけない生活をしていたら、この価値観は変わるのかもしれない。

仕方がないので、その辺にあった甘酒のプラスチック容器にこれまたその辺にあったばらの造花をいれて、仕事机においてみた。
花瓶も花も思い描いていたものとかけ離れているが、花を飾るという欲求は少し満たされて、今日のところは気が済んだ。


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