午後ローを予習する 『ダブル・インパクト』

 さて本日の午後ローは。ジャンジャンジャジャン、ジャンクロード! ヴァンヴァンヴァヴァン、ヴァンヴァヴァンダム! ヴァンダムが香港で筋肉フィーバー! ワオ! というわけでジャン=クロード・ヴァン・ダムの『ダブル・インパクト』である。なんと今作のヴァンダムは双子である。そう言われても特に驚きはない。
 ヴァンダムの出演作は内容が内容なだけに間違えやすいので確認しておく。本作とよく似たタイトルの『ダブルチーム』は元NBA選手のデニス・ロドマンと共演した作品。ヴァンダムから生まれたヴァンダムがヴァンダムと戦うのが『レプリカント』で、冒頭で双子のヴァンダムの片割れがいきなり死亡するのが『マキシマム・リスク』だ。そしてどの作品もスーパーヴァンダミングアクション! ヴァンダボー! 
 良くも悪くも、華があるとは、こういうことなんだと思う。
 共演はジェフリー・ルイス。娘さんはあのジュリエット・ルイスである。そしてなんと言っても香港が舞台になるだけあって『燃えよドラゴン』や『Gメン’75』の香港空手シリーズでおなじみのヤン・スエが登場する。もうそれだけでテンションが上がる。ヴァンダムとは『ブラッドスポーツ』以来の共演である。ワオ!。
 本作は九一年の作品。香港はと言えば、一九九七年の返還を間近に控え、重要な時期であっただろう。したがってヴァンダムにとっても、そして香港にとっても、これはメモリアルな映画になったことと思う。
 個人的にそう思う。
 少しずれるが、九〇年代のヴァンダムは特に香港映画界の名監督らと仕事を多くしていた印象がある。
 ジョン・ウーと『ハードターゲット』で、リンゴ・ラムと『マキシマムリスク』『レプリカント』、ツイ・ハークと『ダブルチーム』『ノックオフ』といった調子。
 想像だが、上述の監督らは香港返還を目前に控え、自身の身の振り方を模索していたと思われる。香港に留まるか、それとも海外進出か。
 返還以降、香港の中国化が進めば自由な映画製作は難しくなるかも知れない。実際、香港の高度の自治が返還後も五十年適用されると明記されていた中英共同声明は、二〇一四年に中国側から一方的に反故にされている。
 かといってハリウッドが自由かといえばそうでもなく、撮影にあたってはかなり制約が多い(少なくとも以前の香港と比べれば)ことでも知られている。
 それぞれの監督らが、変移する世界情勢の中で、そんな選択を迫られていたのではと推察する。
 本作も、そういった歴史的転換点の最中に撮られた映画と考えると、感慨深いものがないだろうか。
 ないか。


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