見出し画像

採用担当が持っておきたい広報視点とノウハウ(5/5)-レバレッジド採用広報-

企業ブランドとは異なった採用ブランド構築

企業の現在取り扱っている事業、商品、サービスや、カテゴライズされている「業界」によって、企業ブランド採用ブランドが不一致を起こしている場合があります。

例えば、当社はロマン(経営理念)である「暮らしを豊かさ」を世界で提案して、売上高3兆円(現在の5倍!)を2032年までの長期計画と定めていますので、現在のニトリの企業ブランドイメージである、「家具や雑貨をコーディネートして国内で販売するニトリ」にだけ興味がある方の集団になってしまうと、事業を非連続に成長拡大させていく未来組織図の構成メンバーが不足してしまいます。現在の企業ブランドからは想定できない「未来の企業ブランド」を提示しながら、そこに惹かれくれる方に向けた採用を進めていく必要があります。その時にひつようになるのが「採用ブランド」です。

連続的(年率5%程度)な成長や事業拡大を目標に持つ、日本の伝統的な大手企業であれば、「企業ブランド」=「採用ブランド」であり、ほぼ一致しているため、採用広報に力を入れていく必要はありません。ただ、下の図のように、事業を非連続に拡大させていこうとすると、「未来の企業ブランド」から「採用ブランド」を構築する必要があります。

画像4

特に当社のように事業領域を広げ、海外に市場を拡大して、今の売上の5倍以上の規模を目指して非連続に成長していく企業は、上の図の大きな緑玉を志向していて、「未来の企業ブランド」作りに投資していく必要があります。自社の中長期の事業計画をよく見ながら、採用広報をどのように構築をするかよく考える必要があります。

画像1

僕たちはこの非連続に成長するための「採用ブランド」構築のため、「意外性」を前面に押し出した、レバレッジド採用広報という手法を利用しました。レバレッジド採用広報は、勝手に世の中からカテゴライズされている「不人気な流通小売り業界」という状況を逆手にとって、これに広報活動によって「意外性」というレバレッジを効かせることで、好奇心があって成長意欲が高い学生へのタッチポイントを準備して、その情報格差に興味をもってもらうという流れで、結果として就職人気ランキング上位にのぼるという考え方です。

お付き合いする業者さんを絞り、邪気を呼ぶ外部環境をできるだけ見ないようにして、求職者と未来の自社だけを見つめる視点が大切です。自社が属する「業界」が人気であろうと、なかろうとあまり気にせず、伝えたいことをまっすぐに伝えていくことが重要です。レバレッジド採用広報を利かすために、優秀な学生に響くポイントを3点あげます。この3点は本当に重要です。これを考えた広報を展開するのですが、今回は具体的な事例は割愛させていただきます。

<優秀な学生の考え方のポイント>
「意外性」
と「共感性」が判断軸になっている
目先のキャリアプランよりも入社後のストーリーを一緒に考える
伝えられるよりも「問われる」と燃えるタイプが多い

画像2

画像3


このような手法を行っていく前提としては、企業の理念と未来の姿をできるだけ明確にして、そこを共感してくれるようなメンバーに出会うまでを採用広報の考え方で行い、実際の採用活動(面接や勉強会)を通じて、そのメンバーの想いを育てていく(ナーチャリング)していくことになります。

そのように考えると、採用広報も採用活動も採用ルールなどで期間を区切ってやるものではなく、いつでもどこでも常に行われているべきものだと考えています。学生のキャリア教育の一環としての就職活動を成立させていきたいと思っています。

このように未来から逆算をした採用活動をしていると、会社のカルチャーに合った方を採用できるようになります。㈱マイナビが実施した新入社員アンケートによれば、「叶えたい夢がありますか?」という問いに対して、Yesと答えた社員の割合がニトリの新入社員は全国よりも20ポイントも高く出て、非常に驚いた経験があります。


採用活動(就職活動)がキャリア教育そのものへ

まだ日本には、本当の意味でのキャリア教育がされているとは言えないと思っています。アメリカのように、高校生でJob shadowing を行い、働くことと社会的課題の解決を結び付け、大学生でInternshipに参加することで、自分が学んできたことを通じて、解決したい社会的課題を決めていく。そのため、彼らは入社後にはすでに自律した仕事の仕方を身につけています。

インターンシップの日数が問題になっていたり、スケジュールの遵守が大手企業と政府のメイントピックである日本では、なかなかキャリア教育を本質的に議論していくのは難しいと思います。

しかしながら、日本が世界で十分な存在感を発揮していくためにも、どんな手法であれ、企業が入社前のプレボーディングと入社後のオンボーディングを通じて、しっかりとキャリア教育をして、自分の好奇心や価値観から行動を起こして、社会課題の解決を目標にするような自律した社会人を育成していく必要があると思います。

そういう自律した社会人を育成していくための採用広報と採用活動が日本中で行われるようになればいいな、といつも想像します。このような考え方を広めていくのが、たぶん僕に与えられた日本の社会課題の解決なんだろうと信じて、これからも情報発信していきたいと思っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?