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採用担当が持っておきたい広報視点とノウハウ(3/5)-ひっかけときっかけ-

採用活動のゴールイメージは学生が「きっかけ」を得ること

採用活動のゴールイメージはどこでしょうか。「内定受諾」?「内定式参加」?「入社」?「その後の活躍」?どれでしょうか。人によっては答えが異なってくると思いますが、僕はこの中に答えはないと思っています。あえて言うなら、「その後の活躍」なんだと思いますが、これはあくまでも「ゴール」であって、状態を示す「ゴールイメージ」とはまた別の文脈だったりします。

良い採用をしようと思ったときに持つべき、採用活動のゴールイメージは、「学生が自分の好奇心と価値観に気が付いて、未来に解決したい社会課題とその方法(就職や資格取得)に気づいたとき、そのきっかけを提案できた状態」だと思います。

じゃあ具体的にこの「きかっけ」とは何かというと、この3点に集約されると思っています。

<就職活動に必要な3つの「きかっけ」>
学生自らの価値観や好奇心に気が付くきっかけ
働く意味(社会課題の解決)を理解するきっかけ
上記の二つをマッチさせるキャリアをデザインするきっかけ

採用活動とは、この「きっかけ」を提供することだと考えています。結果として入社につながらなかったとしても、このような「きかっけ」を提供し続けることで、企業の採用ブランド価値を上げることができますので、その後の採用にも良い効果があることをここ数年で実証してきました。

マーケティングの世界では、集客するときに、タッチポイントを作るとか、フックをかけるみたいな言い方をする人がいますが、この考え方はあまりマッチしません。単に自社に誘導するための「ひっかけ」は短期的な効果はあるかもしれませんが、正しい採用や、採用ブランド価値の向上にはつながりません。「ひっかけ」はやるべきではないし、それ以前に、今の若者は情報リテラシーが高いので、おっさんが考えるレベルの「ひっかけ」にはかかりません。すべてお見通しです。(うちの7歳の息子でも、「ひっかけ広告」はクリックしません。)

この「きっかけ」3点セットを得たうえで、自社を選んでもらえれば、マッチングの高い方の採用が可能になります。一方で、得たうえで他社を選ぶのであれば、それはそれでいいきっかけを提供できたとうれしい気持ちにもなれます。きっとその学生は来年は後輩を紹介してくれるはずです。

だから、採用広報をベースとした採用を実行するにあたっては、売り込みたいとか採用したいという気持ちは抑えて、就職に悩む学生をゼロにするためのCSR活動をしているんだというようなマインドセットが必要です。

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動的なOne to One広報で「きかっけ」提供

世の中のデジタル化の進展は、データ流通量を増大させていて、世界の情報トラフィックは直近3年間でも倍増しています(Cisco/2019)。データ流通量に人々のデータ消費量が追い付いていないような状況においては、静的(一方的に伝えるだけ)なマス向けの広報を一心不乱に打ち続けてもあまり効果はなく、伝えたい相手に合わせていくような動的な広報にチャレンジしていくほうが効果につながりやすいです。

あくまでも自社の内定者のアンケート結果からの分析ですが、エントリー前に志望度がない企業の採用ウェブサイトを閲覧する学生は少なく、選考開始後から内定と承諾までの間に、情報収集目的で閲覧んされるのが、採用ウェブサイトだったりします。

採用広報の最大のプラットフォームとして、採用ウェブサイトの構築に全力で取り組んでいる会社が多いと感じています。しかし、残念ながら、採用ウェブサイトは自社に合った方のエントリーを増やす目的にはあまり最適な方法ではなさそうです。確かに、よくあるサイトのタグ(社長メッセージ→会社情報→事業について→先輩紹介)を順番に丁寧に見てくれるのは、内定者か最終面接前の学生さんくらいかなと思いますよね。

このような不特定多数の方に、定置網のように静的な仕掛け(「ひっかけ」)をしても、ほとんど効果がない時代になってきています。

ではこれをどうやって、動的な採用広報活動にしてくかといえば、まずは地道な活動が必要になります。自社が行っている広報活動をアンケート(QRコードの活用が便利です。)やATS(採用管理システム)などの数値分析を通じて、会いたい人がどこにいて、何をやると効果がでるのかをしっかり把握することです。

自社に合う人物がどのようなイベントに参加しているのか、10人の方を採用するために、学生1000人と企業100社が参加するイベントに1回出るのか、学生20人と企業数社が参加するイベントに何回も出るのか。しっかり分析して、必要な陣営を整えることも、採用広報の前提条件として非常に重要なポイントです。ちなみに、ニトリでは専任のリクルーターチームには、数値分析担当者採用広報担当者を置いています。

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ニトリでは、昨年から力を入れ始めたのは、「ニトリン」という自社メディアを通じた情報発信です。採用を前面に出すことなく、商品やサービスのことを人を通じて発信していくことを大事にしています。ニトリという会社がどのような社会課題の解決をしていて、そのために社員がどのような想い(価値観や好奇心)を持って、どのようなスキルを磨きながら働いているのか。ニトリのリアルを見てもらう場を作りました。

ニトリは製造物流IT小売業という業種を標ぼうしていて、社員全員がマーケターになって、お客様のニーズをそのまま商品やサービスに変換して、お届けまでをすべて自社で実現することで、社会的課題を解決していく事業を営んでいます。(ニトリにはマーケティング部署がなかったりします。)
働く意味や、業種の考え方をニトリを通じて、学んでもらえればという思いを込めて配信しています。

情報化社会において、相手にこちらを発見してもらう(エントリーしてほしい人にエントリーしてもらう)ためには、静的な情報発信はあまり役に立ちません。動的な情報発信を続けていって、O2O(オンライントゥーオフライン)のような考え方で、オンラインとリアル活動をシームレスにつなげていく考え方が重要になってきます。

様々な経験と分析の結果、リアル活動として、非常に重要になる広報活動がインターンシップで、ニトリでは採用にかける力の65%ここに使って、全力で取り組んできています。


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