キュビスム展 美の革命(国立西洋美術館)
さすがに国立の展覧会は大きいし作品数も多かった。あと章立てが細かくて14もある。
基本的に写真撮影可で、ダメなやつだけ禁止のマークがついているので、写真を撮っている人が多かった。個人的にはスマホをかざして拡大すれば、ちょっと離れたところでもキャプションが読めるので嬉しい。
1 キュビスム以前ーその源泉
キュビスムの源泉はポール・セザンヌらしいので、展示もセザンヌから始まる。印象派のイメージのほうが強かったのでピンとこなかったけれど、「ラム酒の瓶のある静物」がちょっと上から見ている視点と、横から見ている視点が絵のなかに混在しているらしく、なるほどと思った。
それからセザンヌは印象派ではあるけれど、形態をどんどん曖昧にしていったモネと違い、そこは古典を守っていたようだ。造形の輪郭ははっきりしていて、塗りがざっくりした感じは、全体的に奥行きが消えぺったりとして、確かにキュビスムっぽいと言える。
2 「プリミティヴィスム」
プリミティヴィスムの用語説明は ↓ こちらが詳しい。
ここからはピカソがたくさん出てくる。キュビスム展だもんね。
美術は、思想や時代背景の影響をそのまま表現するから、それらからは逃れられない。特に西洋思想は二項対立という形式が多く出てくる。二項対立は二つの項目に優劣がついているのが普通なので、プリミティヴィスムの背景に西洋(文明)vs非西洋(未開)という構図があるのは仕方ない。
アフリカやオセアニアの造形から影響を受けた「女性の胸像」(ピカソ)には、黒くて太い線、面長、大きすぎる目や鼻が描かれている。わたしたちは既にピカソを知っているからこれも有りだと思うけれど、今までの西洋絵画を見慣れた人には奇異に映っただろうなあ。
3 キュビスムの誕生 セザンヌに導かれて
キュビスムという名称の起源となる「あらゆる対象を幾何学的図式やキューブ(立方体)に還元して描く」絵画が5点展示されている。
ジョルジュ・ブラックの「レスタックの道」が正にその通りの絵だった。
4 ブラックとピカソ ザイルで結ばれた二人
対象を細分化することによって構築する「分析的キュビスム」から、それらが再び統合される「総合的キュビスム」までを展示。
前半は色数が少なくて地味な感じだけど、段々鮮やかになっていく。あとコラージュの技法が出てきて、絵画というよりオシャレなポスターみたいだった。だけどこれも順序が逆で、既に「オシャレなコラージュのポスター」を知っているから出てくる感想なのだ。
5 フェルナン・レジェとフアン・グリス
ピカソとブラックのキュビスムにもその片鱗はあったけれど、抽象絵画っぽいものが出てくる。
フェルナン・レジェは展覧会最後に流されている『バレエ・メカニック』も作っている。
ところでこのあたりの作品はギターとかヴァイオリンとかが多くモチーフになっているようだけど、こういうのにも流行があるのかしらね。
8 デュシャン兄弟とピュトー・グループ
「6 サロンにおけるキュビスム」「7 同時主義とオルフィスム」割愛。
「泉」があまりにも有名すぎて、マルセル・デュシャンの絵画を初めて見た。
10 芸術家アトリエ「ラ・リュッシュ」
キュビスムの流れでマルク・シャガールが登場するとすごくわかりやすい。アメデオ・モディリアーニもプリミティヴィスムの要素があると感じる。
2で見たピカソの「女性の胸像」を思い出してしまう。よく見たら全然似ていないのに同じ要素があると思っちゃう。
12 立体未来主義
「11 東欧からきたパリの芸術家たち」割愛。
東欧からロシアへ伝播したキュビスムの影響。イタリアの未来派と同時期に紹介されて立体未来主義になる。
未来派については ↓ ここで調べた。機械美やダイナミズムとキュビスム、確かに相性は良さそう。
13 キュビスムと第一次世界大戦
絵画じゃなくて資料のほうをみていたら急にバレエ・リュスがでてきてびっくりした。『バラード』でピカソが舞台美術と衣装を担当している。
11で東欧、12でロシアを紹介した流れがここに繋がるのねと思った展示。
14 キュビスム以後
ル・コルビュジエって絵も描いていたんだね。キュビスムの流れで出てくる人物だと思わなかったので、へぇ~って感じ。
おわりに
近代から現代の歴史は美術に限らず複雑になってきているから、キュビスムという補助線をひいた西洋美術の流れをみることができて良かったし、面白かった。
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