無題

世界は悲しいことや憂鬱で溢れている。
つらいなぁ。
きっと素敵なことやいいこともたくさんあって、
それがあるから生きていけるんだけど、
1の素敵なことに対して10の嫌なことや
超でかい1の憂鬱がずっとあったら
素敵な1だって燃え尽きちゃうよ。

その素敵なことは原子力みたいな
大きな力じゃなくて小さな素敵なことを
石炭のように非効率で心許なく
燃やしながら人は走るしかないんだから。
その石コロみたいな煤けたやつを
人は愛情とか想い出と呼ぶのだろう。

悲しい事件や辛い状況、
誰にもあるかもしれないし、
遠く残響かもしれないけど、
傷ついたり苦しんだりしてる誰かを
面白半分や別の座標の正義で
ぶん殴るようなことが
世の中から無くなったらいいのに。

心の傷も体の傷も治るのは表面だけだ。
一度壊れたり傷ついたりしたら
元の状態には戻らない。
2度と。

俺の肘は30年間伸びてないし、
どの冬も快適な膝で迎えたことはない。
乾燥した指先で静電気がバチっていってるんだか
頸椎が潰れて指先が痺れてるのかもわからない。

心だってそうだ。
傷ついてしまったら元には戻らない。
それを弄んだ奴らへの怒りは
瘡蓋にはなっても傷を癒してはくれない。
忘れてしまわないように
その瘡蓋を自分で剥がしてしまわずに
いられるようになるのも時間がかかる。

雨が音と光を掠め取った事務所で
Twitterで見る悲しいニュースや
それにまつわる人たちの嗚咽や
怒りを見たり、
言葉を包む感情の膜を感じながら。
俺は俺で暗澹たるこの先の人生に
辟易しながら。

うんざりする言葉に
一縷の望みをかけて
能面のような
白さのディスプレイ。

うんざりする。

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