好きな絵師にDMを送った話

昔、とても私好みの絵を描く絵師様がいた。当時の私は毎日のようにその人のツイートを確認しその人があげた画像を保存して、専用のアルバムを作成した。その人の絵柄を真似して絵を描いたり、使っているソフトをWIPから特定し、似ているペンで模写をした。その人は絵を描くと同時にプライベートな話題も呟いており、使っているメイク道具、ネイルを真似して買った。興味のなかったネイルをするようになり、おすすめのゲームや物を買い漁った。行っていた場所に自分も行き、昼食の写真から店を特定して食べた。当時高校生の私の脳内はその人で埋まっており、勉強もままならなかった。俗に言う恋に似た状態で、友人が恋愛にうつつを抜かしている間に私は恋愛、勉強そっちのけでTwitterと絵に時間を注いでいた。ある日突然あることが思いついた。それは、

応援メッセージを送りたい!!!!!

だった。好きで好きでたまらないその人を鍵垢でフォローしてROMに徹していた私にとってそれは禁断の感情。本当はリプで感想を送りたい、絡みたいという感情を抑え込んでいた私は考えた。別に応援メッセージぐらいしてもいいんじゃないか?そのままROMって私の青春は終わるのか?そんなことが頭の中でぐるぐる回った。そのままネット依存症の私はすぐに知恵袋を漁った。自分と同じ感情の人がいないのか疲れるまで探した。そこで見つかる回答。
急にDMは怖い。応援メッセージは嬉しい。
と言う回答が見つかる。いやどっちだよ!?もしかしたら急にDMなんて送ったら不快かもしれない、驚くかもしれない。でもこのまま終わるのは嫌だった。あなたの絵が好きです。応援していますと伝えたかった。これだけは成し遂げたい!と決めた私は早速DMを送る準備をする。文字を打とうとする。結果できたのは長文で気持ち悪いメッセージだった。こんなのが急に送られてきたら自分でも恐怖だろうな。というか文にショックを受ける。語尾にwをつける、長い、キモい。絵文字多用など目も当てられないようなおじさん構文。そのまま1時間ほどメッセージを書き直したがどれも納得のいくものはなかった。そもそも当時の私がしていた行為はストーカーまがいの事なのでキモいのは当たり前なのだが。そこで私は打開策を見つける。文が気持ち悪い免罪符として最強な

日本語が苦手です。

という言葉だった。この言葉をプロフィール欄に書くだけでまるで外国人のような印象を与えられる上に文が間違っていてもなんかいい感じになる!!!私はプロフィール欄に日本語が苦手ですと書き、鍵を外す。過去のツイートで日本人だとわかるツイートを消す。新しいツイートに日本のアニメは面白いといういかにも外国人っぽい文を投稿して準備万端!外国人らしさを出すために文にも工夫を行った。結果できた文はあなたが好きです。応援していますという言葉だった。
我ながら最高だと思う。あなたが好きですという一番言いたかった事を伝えれるし、何よりそこまでキモくない!!文も準備万端だ!!テンションの上がった私はそのまま風呂に入り、夕食を流し込む。9時に差し掛かるころに私はスマホと向き合っていた。ありえないほどにドキドキが止まらない。ああ告白する時ってこんな気持ちなんだ。と思った。手汗でべとべとのスマホを何度か落としながらこのまま誰かが勝手に送信してくれないかと弱気なことを呟いた、心の準備がいつまで経っても終わらない。結局送信ボタンを押したのは11時だった。とても短い時間だったように感じられたが送った瞬間後悔が止まらなかった。ああなんてことをしたんだ。その人のプロフィール欄を見るたびに私の文を思い出して赤くなる。そこで気づいた。あれ?そうさっきまでずっと2年ほどあった感情が消えていた。その人への気持ち。いわゆる恋慕がなくなったのである。前は聞くだけでドキドキが止まらなかった声も全く響かない。絵も描く気にならない。その人を見るたびに自分の文しか思い浮かばない。最悪だ。この日を境に私の恋心は跡形もなく消滅したのだった。そのままとてつもない自己嫌悪が続き私は涙を流しながら寝落ちした。
朝起きてすぐTwitterを開く。なんとDMの通知が来ている!寝起きで寝ぼけている私はなんとなく開く。なんと返事が来ている!文は簡潔にありがとうございます!(ハートマーク)と描いてあった。そして復活する恋心!自分の単純すぎる思考回路に呆れながらもスマホに向かって全方位土下座。昨日の緊張を思い出しながら、号泣した。何度も何度も画面を眺める。大袈裟だと思うが本当に嬉しかったのだ。感謝が応援が読まれた!伝わった!その事実だけでいくらでも泣けたのだ。そのまま興奮冷めやらぬまま学校へ登校。下校。その人のプロフィールを見る。DMを見返す。それを何度か繰り返す。新着ツイートがTLに流れてくる。
そこにはこう描いてあった。

今日、急にDMで応援メッセージを貰った。

と見た瞬間時間が止まった。え?なんとその絵師はDMでメッセージを貰ったことを呟いていたのだ!その文には、外国人の方がわざわざ日本語で応援してくれた!嬉しい!と書いてあったのだ。私はそもそも外国人ではないので複雑な心境だったが。え!?これって私のことだよね?え?感謝されてる!嬉しいっていってる!?思考停止。また画面の前で固まる。え?私の元からないに久しい語彙力は下がりに下がりついにヤバい、すごい、ヤバいしか喋ることができない。語彙力とは正反対に上がるテンションは止まることを知らない。スクショを撮り、眺める。DMのスクショと組み合わせて壁紙にする。嬉しい。気分を収めるためにゲームをしたりするが落ちつかない。その日は今でも忘れられない1日になった。
今ではアカウントを消してしまって、いまでも絵を描いているのかは知らない。が今でも私にとって重要ではっきり覚えている、私の青春時代。それだけの話。


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