見出し画像

スコール

 スコール。この語感に惹かれる。透き通った激しさがある。刹那的で思いがけない展開を孕んでいるような、胸を浮かせる高揚感がある。急激な突風や驟雨のことをいうが、語源は北欧、古スカンジナビア語「叫び」の意味をもつskvalaに関連するといわれている。「叫び」。大声をあげる、ある意見を強く主張するといった意味である。聴覚的な印象をもつが、一方で無言の叫びというものもある。これは、無言、つまり聴覚への訴えはないものの、外界に発散させるエネルギーを秘めている。

 解釈を拡げると「叫び」=「主張」とは=「存在」とも思える。赤ん坊は産声をあげて、世界に向かって主張する。青年期は恥じらいや葛藤が沈黙となって主張する。壮年期は積もり積もった日々の疲れと妥協が軋んで主張する。老年期は深い皺や病に臥した姿そのものが主張している。すると、音声の有無にかかわらず、存在そのものから叫びが聞こえてこないか。

 森羅万象ことごとく叫んでいる。海も山も草花も、獣も洞窟も石ころも、街も絵画も文学も、私たちは叫びに包まれ、同時に叫び、その共鳴を探している。いつの日か来るであろう懐かしい邂逅を待ち望んで。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?