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「もっと頑張らないといけないと思っているあなたへ」~妊婦さんのメンタルケアの必要性~(前編)

母子保険はぐは、女性のメンタルヘルスの課題にAIの観点から取り組んでいるFlora「もっと頑張らないといけないと思っているあなたへ」というオンラインのワークショップを開催しました。

京都府の母子訪問で指導員として活躍されており、現在は「GOOD NATURE STATION」でカウンセリングを行っている助産師の渡邉安衣子さんが講師となり、産後うつに代表される女性、特に妊婦さんのメンタルケアの必要性について講演を行いました。
当日の講演内容をダイジェストでお伝えします。

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助産師あいこさん(渡邉安衣子さん)
1999年から総合病院などで助産師として勤務。同時に京都市が初産の方を対象に実施している母子訪問事業の指導員として7年間カウンセリングを行う。現在は京都市にある「GOOD NATURE STATION」で助産師としてカウンセリング事業に従事


「GOOD NATURE STATION」では、様々な悩みを抱えた妊産婦さんがお話をしに来ています。中には精神科に通い、投薬やカウンセリングを受けながらもなお、お話に来る方もいます。病院だけのケアでは不十分で、様々な支援が必要であると実感しています。

妊婦さんから相談されることベスト3


① 授乳について
② 赤ちゃんが寝ない・よく泣く
③ うまくいかない焦り・不安感

があります。

この中でも①②に関しては、助産師や保健師など専門家の助けを借りて、アドバイスをうけることで子育てを楽にすることができます。出産後3ヵ月を「産後期間」と考えて、お住まいの地域の保健センターや役所の子育て関連担当の保健師、日本助産師会に所属している開業助産師など、妊娠出産子育てのプロフェッショナルに頼ることが大事です。

直接的なアドバイスが期待できる①②とは異なり、③のような「うまくいかない焦りや不安」は家族との関係や自分自身の自己肯定感など様々な原因が考えられ、気持ち的にしんどくなる部分だと思います。

具体的には、
 ・毎日すっきりしない
 ・うまく子育てしないと、と思って焦る
 ・家事も全然できなくて夫に申し訳ない
 ・夫や家族からの理解のない言葉といったハラスメント
 ・ほかの人がうまくできているように見える
 ・上の子をかまってあげられなくてかわいそう
 ・こんな時代(コロナ)に生んでしまって申し訳ない

といった悩みが挙げられます。

ここで大事になってくるのが、「赤ちゃんも他人である」という考え方です。胎児のころからお互いに人権がある存在であることを考えて、自分の気持ちを押し付けることなく接することが必要です。また、焦りや不安を持つことが悪いことではないことをしっかり認識することが大事になります。

焦りや不安を感じる原因①

科学的・医学的に考えて、子育てがつらいと感じるのは、ママのせいではなくホルモンのせいと考えたほうが良いです。生理前になるとイライラしたり、くよくよしたりと人が変わったようにしんどくなるのをPMS(月経前症候群)として知られていますが、妊娠時も女性ホルモンが胎盤から分泌され体の中の女性ホルモンの量は増加していきます。

出産と同時に胎盤がなくなると体内のホルモンが分解され、3日程度の短い期間に急激に減少します。

女性の変化

PMSの原因になっている女性ホルモンの波の高さを20階建てマンションに例えると、出産時のホルモンの変化はエベレストに匹敵するともいわれています。思春期や更年期といった数年かけてホルモンバランスが変化することによるイライラが、出産時には3日で起きてしまうこともあり、涙が出たり、喜ぶべき赤ちゃんを喜べなくなったり、不安になったりするのは当然であるといえます。
3日が過ぎた後もホルモンの変化による情緒不安定は続きますが、自分のせいではなく、ホルモンのせいだと科学的に考えることが安心につながります。

焦りや不安を感じる原因②

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他にも産後に焦りを感じたり不安になったりする原因として、ジェンダーとマインドセットが挙げられます。「女性は赤ちゃんの世話を何よりも優先しないといけない」という社会が形成したジェンダーに基づく規範に縛られていることで、母親が自分の痛みや我慢を後回しにし、自分を大切にしなくなると考えられています。

以前、中高生に実施したアンケートで「赤ちゃんが小さいうちは女性が家で赤ちゃんの世話をしていたほうがいい」という設問に対して多く生徒が「はい」と回答したように、この社会的に形成されたマインドセットは幼いころから刷り込まれているといえます。ジェンダーの平等を尊重する機運は高まっていますが、このような暗黙のルールにはまだまだ適応されていないと感じています。


ほかにも「お母さんなのだから~しなければいけない」といった圧力で、仕事を中断し経済的にもパートナーに頼らなくてはいけないようになったり、それによって自分自身にお金を使うことを後回しにしたりと、子育てがつらいものになっていきます。

お母さんに安心を

このような原因を考えて、まず母親に必要なのは安心できる環境や継続したケアに加え、認めてもらえること、大事にされていること、自信がない気持ちにふたをしないこと、辛い経験を誰かに吐き出すことで再認識することが挙げられます。

お母さんが安心できることで、子育ては我慢という思い込みから解放され、マインドセットを修正することができます。お母さんも守られるべき存在であることを認識し、自分を責めてしまうのは自分の性格が原因ではなく、自分を締め付ける価値観がインストールされているからと考えることが大切です。

この価値観は自分の母親との関係だけではなく、社会からの関係が影響しています。お母さんも赤ちゃんも人権をもっていて、感情や行動を自分が選ぶことができる自由と権利があります。なっちゃいけない気持ちというものはなく、お母さんはあるがままで大丈夫という考えを大事にしましょう。

後編に続きます

【イベント共催】
Flora株式会社
母子保険はぐ