これは、私と元彼の話である。

私と彼は、共通の友達を通じて、大学で知り合った。

「はじめまして。私です。」

「はじめまして。彼です。彼と呼んでください。」

「では、私も私と呼んでください。」

そんなありきたりな大学生の自己紹介から始まったのだ。

私たちは、付き合うまでに時間はかからなかった。何回か遊び、電話で告白をした。彼は、今まで付き合ったことがなくて、私が始めての彼女になった。

付き合った実感がないまま、大学1年生の夏休み。花火大会に出かけた。観覧車があったので、乗って、頂上に着いたらキスをした。彼の唇は震えていた。冷静を保っていたようだけど、「あ、この人緊張してる。」と思った。

彼とは、授業がたくさん被っていて、ほぼ毎日顔を合わせていた。一緒に帰ったり、放課後デートをした。大学生らしく、夜通し遊んだり、お泊まりをした。彼と過ごす日々は、星みたいに輝いて見えて、自分自身も輝いてると実感できた。そんなこんなで、大学1年生を終える。

2年生になった。大学生を1番謳歌できる年だ。友達とも、彼ともたくさん遊んだ。なんなら、彼の割合が9割。私は、彼でできていたと言っても過言ではない。

まだ、私は、愛することしか考えずに彼と向き合っていた。愛されるということを感じないまま、、

2年生後期。だんだんと自分の中のモヤモヤが成長し始める。「ん?彼から会いたいや、遊ぼう。好きだよ。という言葉を聞いたことがあるか?私からしかないな」彼からの相談も一度も受けたことがない。アドバイスもされたことがない。彼自身が、自分を曝け出すことなんて一度もなかったなと、、

私は、彼に言う。

「彼をもっと教えて?頼って?」と。

彼は、私に言う。

「他人ほど信じられないものはない。自分自身しか信じない。あと、自分に責任が及ぶ言動はしたくないから、今後、私に相談やアドバイスをすることはない」

その時の私は、世の中にこんなに私と考え方が違う人がいるんだ。それも、この人の魅力で、好きだと思っていた。だけど、確実に間違っているのではないだろうか。彼は、今まで、人を信じたり、頼ることの大切さなどを感じたことがなかったのかなあ、、

3年生。私の友達への口癖は、「ねぇ、何にも言ってくれない。全部私から」であった。

「恋愛は依存してはいけない」

「ギブアンドテイクを望んではいけない」

彼が、自分に対してギブをしてくれなくても、私は彼が好きだった。恋愛は沼だという言葉の通り、彼がどうしたら楽しんでくれるか、喜んでくれるかを必死に探していた。こんな私を見て、友達は言う。「別れたほうがいいよ。私が辛くなるだけよ」

この言葉は、後に的中する。だが、私は、まだ幸せだ。幸せだと思い込ませていたのかもしれない。

4年生。就活や、卒論やることがたくさんある。

あんだけ会えていた日々が、夢だと思った。

口をひらけば、彼は言う。

「忙しい。」と。

私は、「そうだよね。会いたいって言ってごめんね。」と。

そして、彼に会えた日も、彼は言う。

「今日は夕方に帰る。ままのご飯を食べたいから。」

彼の中で、私の優先順位が下がっていることが明確になった。

好きな人には、お互いが会いたかったら忙しくても、言う前に会うだろう。

私と彼の思いはバラバラだった。きっと、ずっと。

もう別れは、近い。3年間、彼を追い続けてきた。何一つ知ることなく。彼を。この3年間なんだったんだ、、、と心を苦しめた。

私は、彼に言う。

「今日、時間ある?5分でいいから電話しよ?」

そして、電話が掛かってくる。

「電話をしたいと言ってくれたのに、ごめん。この数週間、連絡を取らなくても、数ヶ月会ってなくても、私の声を聞きたいとか会いたいとか思わなかった。だから、そういうことだと思う。」

と、彼は言った。

「うん、私もそう思うよ。」

「別れてください。」

私から、別れを宣言しようと思っていたのに、何故か裏切られた気分だった。私は、まだ幼稚だから、なぜ私が悪い側になっているんだろうかとさえ思った。

ただ、3年間の付き合いが、たった3分間の電話で終わったことが虚しい。私は、この付き合った年月を振り返っても、彼の何を知ったんだろうか。心の底から、彼を知ろうと、彼も私を知ろうとしたのだろうか。寂しくてたまらなかった。

きっと、年月と心の距離は比例しない。いくら長く一緒にいても、相手も知ろうとしなければ、心の距離は近づかない。逆に、短くても、相手を知りたいと思って心から繋がろうと思えば、心の距離なんてすぐに縮まる。

私はそれに気づかずに、この3年間を過ごしたのだろう。

彼は、今うまくやっているだろうか。寂しかったけど、でも、その中に楽しさや幸せは感じることはできたよ。ありがとう。


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