星の子を二世信者が観た感想と経験談

まずは私のプロフィールを少し。
私はちひろと同じで両親が新興宗教(以下:宗教)に通っており、生まれてから当たり前のように教えが家庭に蔓延していたり、休日は集会に通ったりしていました。
20歳を過ぎたころからこの現状に疑問を抱くようになり、この何年かはそのモヤモヤと向き合うため、他の二世信者のブログなどを読んだりしながら、宗教は一切通っていません。

そんな中で映画の予告で星の子を知り、これは観ないといけないと思い観てきました。経験談と交えて書いていきます。


以下ネタバレを含んでおりますのでご注意ください。

・ちひろが面食いなこと

ちひろがイケメンな海外俳優を知り、周囲や自分も含めて醜く見えるようになったということを両親に相談したら、両親は宗教の通信販売の目が良くなメガネを購入した。
しかし、友人のなべちゃんにも同じ話をしたところ「それって面食いだよ」という一言で解決したというエピソード。

全く大ごとではないし、小学生でも考えてみればわかる、ただそれだけのことである。
しかし、「どうしてそうあるか」と原因を考えることよりも、宗教的に「こう言っているから」「こうあるべきだから」というところから何も成長せず思考が停止している。
そのため、小さな事象も大事に捉えることもある。このエピソードはそんなことをわかりやすく描いていたなと思う。


・両親がおかしいといわれた時

ちひろが南先生に車で送ってもらった時に両親が庭で儀式的なことをしている姿を先生が「不審者が2匹もいる」といったような内容を車内で言われた。
帰宅後、元気のないちひろの姿をみて両親は風のひき始めかもしれないと心配をし、金星の水をちひろにかけようとしたが、それを振り払い自分の部屋に逃げ込んだというエピソード。

宗教がおかしいなと思い始めた時に両親にはすぐに言えなかったので、モヤモヤをただ抱え込んでいるときに、両親が少し様子が違う自分に同じように声をかけてくれました。しかし、その時に私が感じた不用意には言えない苦しさと原因は目の前にあるというもどかしさ、心配の矛先が違うといういろんな気持ちが混ぜ合わさったのをあの一瞬のシーンで表現されて、自分の部屋に逃げ込むあたりで思わず泣いていました。


・おじさん一家の助け

上記の出来事があった後、お母さんの兄弟である雄三おじさんが高校進学を機に自分の家に引っ越して通わないかとちひろと会った時に持ち掛ける。
しかし、ちひろは「今のままで大丈夫です」と言い切りこの提案を断る。

まず我が家の入信のきっかけは母が学生のころ父と弟を亡くし、それがきっかけで母と祖母で入信をし、結婚と同時に父も入信した。
おそらく私が小学生のころまでは父方の祖父母は心配をするような口出しをしており、祖父母には隠れるような形で通っていた。

父方の祖父母から上記なようなことを言われるんだよねと悲しげに言う母を見て、小学生の頃はただただ母を悲しませるので父方の祖父母はあまり好きではなかったし、宗教に行くことの何が悪いのかと思っていた。

しかし、思い返せば結婚と同時に息子が入信したら心配をするし辞めさせたくなる気持ちも重々理解できる。それに父方の祖父母は悪い人ではない。
でも小学生の頃の自分にはそれがわからないし、宗教が当たり前にある日常が生まれてから根っこのように当たり前にある。それを疑問にも思えないし、ましてや否定することはすごく難しい。

ちひろもおかしいとは薄々気づき始めてはいるが、おかしいなと感じてから、それを言葉に落とすまで、それを認めて過去の自分と現状を受け止めるまで、それをさらに行動に移すまでは容易な道ではない。
ましてや、まだ中学生のころは親の影響力も大きいし、一緒にいる時間も長い。
それになんとか普通のような生活はできているし、大丈夫であると思いたい気持ちもあって、言えた言葉は「大丈夫です」なのかなと感じた。


・学校での公開非難

ちひろを送ったことで校内であらぬ噂がったこと、授業中いつもちひろが南先生の似顔でを落書きしていることなど溜まっていた怒りがヒートアップしたことから、南先生がHR中クラスメイトもいる中で宗教がおかしいことを強い口調で言われる。HR後泣くちひろに対して、友人のなべちゃんが慰めに来る。

宗教のことを友達に話せるようになったのは大学生くらいになって、少し自分の気持ちが整理できるようになったときに信頼できる友達にだけ話した。
みんな「そうだったんだ」で話を聞いてくれた。
それだけでも嬉しかったが、(こういう存在を求めるならカウンセラーにでも行くべきだなというのはわかっているが)私はずっと誰かに深く受け止めてほしかった。
そんな気持ちが心の隅に生きている中で、なべちゃんの「お父さんとお母さんは信じてるんだよね。ちひろは信じてるの?」と心配をしながらも、ちひろの意見を聞いてくれるこの言葉に号泣してしまった。


・集会旅行へ

学校での一件があった後、ちひろは宗教の旅行(?)に行く。

学校であんなことがあっても行かないと引きこもれないのかって思った人がいたかもしれないが、それでも幼いころから生き続けているものにすぐに拒否はできないし、なんとなく行ってしまう。

ホテルまでのバスシーンもリアルだった。
私も同年代の子と遠くの集会所に行くときはあんな風にバスに乗って楽しく言っていた。
なんとなくわからないけど行くことで両親が喜ぶし、周囲のみんなもおかしいと思ってないみたいなぼんやりした気持ちのまま通って、私は人生の大事な決断をたくさん手放してきてしまった。


・まとめ

ラストシーンでちひろは高校進学でどうするか決めたわけではなく、宗教との距離感をどうしていくか決めたわけではないところが、現実的だった。
何度も書いているがそんなすぐに決めれることではないし、整理がつくことではない。
でも今後、ちひろを救ってくれる人が周囲にいるのは希望であり、未来に少し光が差していると思った。

正直、二世信者でちひろのように周囲に理解があり助けてくれる人が周囲にいる環境にいれる人はまずいないと思う。
だからこそ、二世信者として悩んでいる人や周囲に二世信者がいる人は一度見てほしいと思った。

長文駄文で最後まで読んでくれた方には感謝の気持ちでいっぱいです。

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