Golden Finger ~ep7~

初めての手マンで上も下も濡らすことができた僕は自らも知らないGolden Fingerの持ち主だった.彼女の手を陰部へといざなう.当たり前のように包皮をむこうとする.ふざけるな,殺すぞ.掛け布団の布がパンパンに腫れあがった黒光りする陰茎に触れ激痛が走る.「あのね,このまましてほしい」僕は子供が母親にお菓子をねだるように依頼した.「うん」

彼女は意外にも慣れた手つきで僕の陰部を上下にさする.しかし,これが一つも気持ちよくなかった.まるでひじの先端のキメの粗い皮膚をなぞられているように何も感じなかった.普段の自慰行為でさするピストン運動には聞き手の方向に多少角度がついている為完全な垂直ではない.彼女が今いるのは左であり,いつもとは逆に角度がついていた.僕はだんだんと精力を失いつつある陰茎を察知し,「おっぱい吸っていいい?」と頼みを通すと自ら陰部をさすりセルフ授乳手コキを始めた.おっぱいの寛大な態度とすべてを肯定するその優しい体温に僕は翻弄され30秒ほどで自ら果てた.「ここで出しちゃっていいんですか?」少し寂しそうに言う彼女が可愛かった.どうせ今日はゴムがなかった.ここで出すのがせいぜいいいところだ.

果てた後は案の定,ひどい倦怠感に襲われた.僕は背中を向け横になる.使用済みティッシュをゴミ箱に捨てると「おやすみ」と残して寝ようとした.すると彼女は背中から僕を抱きしめた.肋骨の下の腹部あたりから腕をにゅるっと通し,左腕は首から回して僕を抱きしめた.僕は言った

「ねぇ,そのままさ,首絞めてくれない?」彼女は少し笑った.そしてぎゅーっと言いながらとても弱く首を絞めた.彼女の優しさがあふれていた.
「のどぼとけありますね」「うん」
「ガリガリですね,ちゃんとたべてますか~」「うん」
「ハットリさんって気胸なったことあります?」「気胸?」
「肺に穴が空いちゃうやつです」「あぁ」
「ありますか?」「部活やってた頃あるよ」
「えぇーそれイケメン病って言うんですよ」
「色白の痩せてるイケメンとかがよくなるんですよ」
多分褒めてくれてるんだと思った.僕は恥ずかしくなって
「あぁ,色白のひょろっとした人いるよね.芸人さんにもいるなぁ.紹介してあげようか?」と話を変えた.すると彼女は
「なんでそんなこと言うんですか」と言った.100点満点の答えだった.


「今から俺がさぁ・・付き合って,って言ったらどうなる?」

あくまで実験的なスタンスをとることで致命傷を受けないノーリスクな告白だった.

「えー・・えー・・なんですかそれ・・でもまぁ・・いいと思います」

彼女は笑いながら言った.

その瞬間だった.

僕はどうでもいいと思った.付き合えることが分かった瞬間,そう,どうでもいいと思った.手に入るものだと分かったことですべては達成されてしまった.僕は思い出した.
坂口安吾の小説「白痴」にて,空襲で民家が焼け,火の海になる.民衆はみな同じ方向へと逃げようとする.男は白痴の女を連れ民衆とは逆の方向へと逃げる.そこには轟々と炎が燃え盛る.しかしこの猛火を飛び越えれば民衆と離別して女と二人だけの世界を生きれる.男はバケツで水をかぶり,同様に女にも水をぶちまける.そして決死の覚悟でその炎へと走る.命からがら猛炎を回避した時,一瞬にしてすべての価値観が反転する.
隣にいる女が白い豚に見えたのだ.なぜ私はこの女の為に命をかける思いをしたのか,なぜ民衆に逆らってまで運命を変えようと覚悟を決めたのか.すべてが終わった時,手に入ったそれは哀れな肉の塊に過ぎなかった.

台風クラブ教えてくれてありがとう

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